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Mission2 げきまじゅおくちゅりを克服せよ!

42.腐女子アンテナ

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 あたしが前世を思い出した次の日。

 当たり前のことだが、朝になった。

 やっぱり、あたしはフレーシア・アドルミデーラとして、『キミツバ』の世界で目を覚ます。

 山鳥が美しい声でさえずり、高冷地の朝は、ほどよく空気が冷えていて、とても爽やかな朝だった。

 そして、朝食は昨晩と同じくカルティを従えたライース兄様の「あ――ん」攻撃だった。
 食べ物のドロドロ具合は、昨日の夜とほぼ同じだったが、一皿ドロドロ料理が増えていた。

 もう、開き直ってしまったあたしは素直に……というか、観念して……ライース兄様の「あ――ん」で朝食を片付けていく。
 ライース兄様には逆らえない。なら、さっさと回復して、ひとりで食べられるように体力を取り戻せばいいことだ。

 パクパクと素直にドロドロ朝ごはんを食べているあたしの姿を見て、ライース兄様とカルティは、顔を見合わせて嬉しそうに笑い合う。

 ライース兄様の笑顔はいうまでもなく素敵で心臓直撃の威力を持っている。
 それに感化されたのか、カルティの笑みも柔らかいものになっていた。
 いつも暗い顔で、地面ばかり見ていたカルティの変化に、あたしは内心とても驚いていた。

 う――ん。なんか、このふたり、絆が深まっているみたい?

 腐女子アンテナがムズムズする。

 ふたりのステータスが覗けないのが、つくづく残念だ。

 『キミツバ』では、ヒロインと攻略キャラの親密度の他に、攻略キャラどうしの仲間密度なるものも設定されていた。

 仲間密度が高ければ仲良し、親友、背中を預けられる間柄へとなっていく。そして、低いと、両者の仲は険悪になる。反発関係になったり、非協力的になったり、互いを足を引っ張り合ったり、裏切ったり……という状態になるのだ。

 ゲームを攻略する上ではイチャイチャしたければ『親密度』をあげて、生き残りたければ『仲間密度』をあげるのが定番だ。

 現時点でのふたりの『仲間密度』はどれくらいなんだろうか?

 ゲーム本編ではこのふたりは対立関係になるので、『仲間密度』がすごく気になって仕方がない。
 『仲間密度』が低いとすぐに殺し合いを始める間柄だ。
 確認できないのがもどかしい。

 あたしの遠慮のない視線を感じたのか、カルティがかすかに首を傾ける。

(な、な、なに! めちゃくちゃ……か、かわいいじゃないのっ!)

 もう少しで飲んでいた正体不明なドロドロ液体を吐き出すところだった。やばい。まずい。
 いや、食事はまずいが、食事を戻したりしたら、ふたりのことだからデイラル先生を呼びつけて、大騒ぎになるにちがいない。なんか、そんな気がする。とってもする。
 あぶない。
 あぶない……。
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