152 / 253
事故物件
指名依頼
しおりを挟む
スマホの呼び出し音が鳴ったのは、放課後の超常現象研究会での事。
相手は、芙蓉さんだった。
『優樹君。明後日の日曜日は、空いているかしら?』
「ちょっと待って下さい」
手帳をチェックしたが、特に予定は入っていない。
入ってはいないのだが……この日は、撮り貯めてある深夜アニメのチェックをするという極めて重要な作業をやりたいのだけど……
仕事では仕方がないよね。
「特に予定は入っていません」
『良かった。優樹君に、指名依頼が入っているのよ』
「指名!?」
大丈夫だろうか?
実は先日も、中年女性から指名依頼を受けたのだが、その家に行ってみても霊なんかいなかった。
その人は霊がいると錯覚してしまったのかな? と思ったが、そうではない。
その人は、以前に僕が公開した顔写真を見て会いたくなっただけだったというのだ。
まあ、その時はケーキとお茶を出してもらって、無断で写真を撮られただけで特に変なことはされなかったけど……いや、写真を撮られるだけでも十分変な事だけど……
チラっと先輩たちの方を見る。
「これなんか良くない?」
「いやこっちの方が……」
「霊子ちゃんは、どれがいい?」
三人の先輩と樒と、地縛霊の霊子ちゃんは嬉嬉としてこれから僕に着せる服を選んでいる。
こういう事をされるより、ずっとマシだよね。
でも、次の依頼人もそうとは限らないよなあ……
「芙蓉さん。今度の人、大丈夫でしょうね?」
『大丈夫って? なにが?』
「その……またショタコンの人じゃないでしょうね?」
『大丈夫よ。君を指名する人には、指名する動機を聞いているから。『可愛いから』と言った人は、丁寧にお断りしているわよ』
「お手数かけて申し訳ありません」
元をただせば、僕が不用心に顔写真をネットに上げたのが原因だからな。
『今回の指名は、リピーダーだから安心して』
「ということは、以前に仕事を受けた人ですか?」
『ええ。以前に、意識のないおじいさんの生き霊を呼び出して、パスワードを聞き出す仕事をやったでしょ。あの時の人が君のことを気に入ってくれて、姪御さんの新居を霊視してほしいと言うのよね。簡単な仕事でしょ』
確かに簡単な仕事だが……
「何か問題のある部屋なのですか?」
『なんでも、過去に自殺者の出た部屋だそうよ』
事故物件か。
『依頼人さんは霊を見ていないそうだから、すでに成仏している可能性もあるわ。詳しいことは現地で聞いてね』
成仏していない可能性もあるのだよね。悪霊化している可能性も……
ショルダーホルスターに刺してあるエアガンを抜いて、退摩弾の残弾を確認した。
残り十発。
今から発注しても、日曜日までには間に合わないだろうな。
樒にも来てもらおうか? でも、予定は空いているかな?
「樒」
樒がこっちを向いた。
「明後日、予定空いている?」
「え? 特に予定はないけど、なに? デートの誘い?」
いきなり何を言い出すんじゃ!
「え? 社君、神森さんと日曜日にデートするの?」
いかん! 先輩たちにまで誤解が広がっている。
「おお! 社君。顔真っ赤よ」
ええ! 赤くなっている?
「良いわね。私は、一度もデートなんて誘われた事ないのに。神森さんを呪いたくなったわ」
「部長。それは、マジでやめた方がいいです」
「む? なぜだ?」
「神森さんは、常に呪いを跳ね返す神器を携帯しております。下手に呪いなどかけると、跳ね返ってくる恐れが……」
「そうだったのか。危ないところだった」
いや、危ないもなにも、あんた呪いなんてできないって、この前言っていたやん。
「誰と誰がデートするですって?」
うわわ! 氷室先生が部室に入ってきた。
「先生! ……違うんです。僕はただ……」
「社君は、神森さんが好きだったの?」
「そうじゃなくて!」
僕が好きなのは、あなたですよ。氷室先生……これは絶対に口に出してはいけないよね。だって、先生には迷惑だし……
「僕はただ、樒に仕事を手伝ってほしいなと思って……」
ポンっと樒が僕の頭に掌を乗せた。
「分かっているわよ。仕事の話しだって。ちょっとからかっただけよ」
「からかっていたのか?」
「さっき、あんた芙蓉さんと仕事の話をしていたでしょ。私に、なにか手伝ってほしいのでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「まったく、あんたは私がついていて上げないとだめねえ」
ムカ! 違うわい! 僕がついていないと、おまえは不正行為やるだろ。
だから、僕はおまえと組まされているんじゃないか!
「とにかく、私の予定は問題ないから。で、どこで何時に待ち合わせする?」
とりあえず、待ち合わせ場所と時間を決めた。
しかし、当日、樒は時間になっても待ち合わせ場所に現れなかった。
相手は、芙蓉さんだった。
『優樹君。明後日の日曜日は、空いているかしら?』
「ちょっと待って下さい」
手帳をチェックしたが、特に予定は入っていない。
入ってはいないのだが……この日は、撮り貯めてある深夜アニメのチェックをするという極めて重要な作業をやりたいのだけど……
仕事では仕方がないよね。
「特に予定は入っていません」
『良かった。優樹君に、指名依頼が入っているのよ』
「指名!?」
大丈夫だろうか?
実は先日も、中年女性から指名依頼を受けたのだが、その家に行ってみても霊なんかいなかった。
その人は霊がいると錯覚してしまったのかな? と思ったが、そうではない。
その人は、以前に僕が公開した顔写真を見て会いたくなっただけだったというのだ。
まあ、その時はケーキとお茶を出してもらって、無断で写真を撮られただけで特に変なことはされなかったけど……いや、写真を撮られるだけでも十分変な事だけど……
チラっと先輩たちの方を見る。
「これなんか良くない?」
「いやこっちの方が……」
「霊子ちゃんは、どれがいい?」
三人の先輩と樒と、地縛霊の霊子ちゃんは嬉嬉としてこれから僕に着せる服を選んでいる。
こういう事をされるより、ずっとマシだよね。
でも、次の依頼人もそうとは限らないよなあ……
「芙蓉さん。今度の人、大丈夫でしょうね?」
『大丈夫って? なにが?』
「その……またショタコンの人じゃないでしょうね?」
『大丈夫よ。君を指名する人には、指名する動機を聞いているから。『可愛いから』と言った人は、丁寧にお断りしているわよ』
「お手数かけて申し訳ありません」
元をただせば、僕が不用心に顔写真をネットに上げたのが原因だからな。
『今回の指名は、リピーダーだから安心して』
「ということは、以前に仕事を受けた人ですか?」
『ええ。以前に、意識のないおじいさんの生き霊を呼び出して、パスワードを聞き出す仕事をやったでしょ。あの時の人が君のことを気に入ってくれて、姪御さんの新居を霊視してほしいと言うのよね。簡単な仕事でしょ』
確かに簡単な仕事だが……
「何か問題のある部屋なのですか?」
『なんでも、過去に自殺者の出た部屋だそうよ』
事故物件か。
『依頼人さんは霊を見ていないそうだから、すでに成仏している可能性もあるわ。詳しいことは現地で聞いてね』
成仏していない可能性もあるのだよね。悪霊化している可能性も……
ショルダーホルスターに刺してあるエアガンを抜いて、退摩弾の残弾を確認した。
残り十発。
今から発注しても、日曜日までには間に合わないだろうな。
樒にも来てもらおうか? でも、予定は空いているかな?
「樒」
樒がこっちを向いた。
「明後日、予定空いている?」
「え? 特に予定はないけど、なに? デートの誘い?」
いきなり何を言い出すんじゃ!
「え? 社君、神森さんと日曜日にデートするの?」
いかん! 先輩たちにまで誤解が広がっている。
「おお! 社君。顔真っ赤よ」
ええ! 赤くなっている?
「良いわね。私は、一度もデートなんて誘われた事ないのに。神森さんを呪いたくなったわ」
「部長。それは、マジでやめた方がいいです」
「む? なぜだ?」
「神森さんは、常に呪いを跳ね返す神器を携帯しております。下手に呪いなどかけると、跳ね返ってくる恐れが……」
「そうだったのか。危ないところだった」
いや、危ないもなにも、あんた呪いなんてできないって、この前言っていたやん。
「誰と誰がデートするですって?」
うわわ! 氷室先生が部室に入ってきた。
「先生! ……違うんです。僕はただ……」
「社君は、神森さんが好きだったの?」
「そうじゃなくて!」
僕が好きなのは、あなたですよ。氷室先生……これは絶対に口に出してはいけないよね。だって、先生には迷惑だし……
「僕はただ、樒に仕事を手伝ってほしいなと思って……」
ポンっと樒が僕の頭に掌を乗せた。
「分かっているわよ。仕事の話しだって。ちょっとからかっただけよ」
「からかっていたのか?」
「さっき、あんた芙蓉さんと仕事の話をしていたでしょ。私に、なにか手伝ってほしいのでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「まったく、あんたは私がついていて上げないとだめねえ」
ムカ! 違うわい! 僕がついていないと、おまえは不正行為やるだろ。
だから、僕はおまえと組まされているんじゃないか!
「とにかく、私の予定は問題ないから。で、どこで何時に待ち合わせする?」
とりあえず、待ち合わせ場所と時間を決めた。
しかし、当日、樒は時間になっても待ち合わせ場所に現れなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
アタシをボランチしてくれ!~仙台和泉高校女子サッカー部奮戦記~
阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
「アタシをボランチしてくれ!」
突如として現れた謎のヤンキー系美少女、龍波竜乃から意味不明なお願いをされた、お団子頭がトレードマークのごくごく普通の少女、丸井桃。彼女の高校ライフは波乱の幕開け!
揃ってサッカー部に入部した桃と竜乃。しかし、彼女たちが通う仙台和泉高校は、学食のメニューが異様に充実していることを除けば、これまたごくごく普通の私立高校。チームの強さも至って平凡。しかし、ある人物の粗相が原因で、チームは近年稀にみる好成績を残さなければならなくなってしまった!
桃たちは難敵相手に『絶対に負けられない戦い』に挑む!
一風変わった女の子たちによる「燃え」と「百合」の融合。ハイテンションかつエキセントリックなJKサッカーライトノベル、ここにキックオフ!
毎日記念日小説
百々 五十六
キャラ文芸
うちのクラスには『雑談部屋』がある。
窓側後方6つの机くらいのスペースにある。
クラスメイトならだれでも入っていい部屋、ただ一つだけルールがある。
それは、中にいる人で必ず雑談をしなければならない。
話題は天の声から伝えられる。
外から見られることはない。
そしてなぜか、毎回自分が入るタイミングで他の誰かも入ってきて話が始まる。だから誰と話すかを選ぶことはできない。
それがはまってクラスでは暇なときに雑談部屋に入ることが流行っている。
そこでは、日々様々な雑談が繰り広げられている。
その内容を面白おかしく伝える小説である。
基本立ち話ならぬすわり話で動きはないが、面白い会話の応酬となっている。
何気ない日常の今日が、実は何かにとっては特別な日。
記念日を小説という形でお祝いする。記念日だから再注目しよう!をコンセプトに小説を書いています。
毎日が記念日!!
毎日何かしらの記念日がある。それを題材に毎日短編を書いていきます。
題材に沿っているとは限りません。
ただ、祝いの気持ちはあります。
記念日って面白いんですよ。
貴方も、もっと記念日に詳しくなりません?
一人でも多くの人に記念日に興味を持ってもらうための小説です。
※この作品はフィクションです。作品内に登場する人物や団体は実際の人物や団体とは一切関係はございません。作品内で語られている事実は、現実と異なる可能性がございます…
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる