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Introduction

その2 雨が降り出した農園で隣家の夫の今井さんと逢う

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そしてここまで濡れたら
どうでも良いかと言う気分になり、
私は再び作業をし出した。

全身、雨に濡れながら作業するのも、
たまには気持ちの良いものだとさえ
思っていました。

子供の頃の気分が蘇ってきて、
何だか楽しくもなっていると、
「高橋さん?」と
後ろから声を掛けてきたの
は隣の家のご主人の今井さんでした。

私はドキッとして、
「ああ、今井さん、どうもぉ~!」
と言いました。

今井さんは「えへへ」と言うような、
変な笑いをしていたのが気になりました。

雨の中、浮かれて傘もささずに
畑の作業をする女って、
良く考えると気持ち悪いかもって事に
気付いた私でした。

「何か、楽しそうですね?」

「たまには雨に濡れるのも良いかと思って」

「そうかもしれませんね」と言いながら
今井さんは私と会話をしながらも視線がチラチラと
逸らしていたのです。

濡れて透けている私のブラジャーに
視線を注いでいるようだったので、
私は慌てて襟元を合わせ両腕で胸の辺りを隠しました。

「そんなに濡れていたら風邪ひきますよ。ご主人も
心配するんじゃないですか?」と今井さんは
そんな事を言いながら、彼の目は明らかに妖しい光を
放っているように見えました。

(何だか妙な空気になったな?)と思いながら、
「私、体は丈夫な方なので平気なんです!」と
明るい声で言いました。

「ほら、せめてこのタオルで、
拭いた方が良いですよ。
あっちの木陰かなんかでね!」と
タオルを差し出した今井さんに私は、
「何でタオルを持っているんですか?」
と訊いたのです。

「今日は蒸し暑かったから畑仕事したら
汗を掻くんじゃないかと思ってさ。
まだ使ってないから綺麗ですよ」

「あ、そういう事ですか。
余計なことを聞いてすみません」

「僕の臭い汗を拭いたタオルを使うのが
嫌だなって思ったんでしょ?」

「ちっ、違います、
どうしてタオルを持っているのかなって
思っただけですから」

「そうなんだね」と今井さんは怪訝そうに
言いながらも笑っていました。
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