151 / 594
◇151 蒼伊の誘い
しおりを挟む
カチカチカチカチ——
無機質な連打音が部屋の中に響いた。
防音設備もさほどないので廊下にまで音は漏れ聞こえる。
明るい部屋の中で、椅子に座って1人黙々とコントローラーのボタンを連打していた。
「くっ……結構疲れるね、これ」
「そうだな。明輝後ろだ」
「えっ!? うわぁ」
「バックアップに入る。お前は適当に隠れていろ」
蒼伊に言われて私は建物の裏に隠れた。
スキルを使って5秒間だけ無敵になる。その隙に回復だ。
「えーっと、回復まで確か10秒かかるんだよね」
私はアイテム欄から回復アイテムを使った。
いわゆるバトルロワイアル略してバトロワ系の銃撃戦ゲーム『Sneak Combat』で遊んでいる明輝だが、蒼伊に誘われて現在戦闘中。
正直に言おう。何にもわからない。
明輝は只今初心者の動きのため、めちゃくちゃ狙われている。
「ふぅ、確か全部で50チームぐらいいるんだよね。残りはえーっと、4チームになってる!」
この手のゲームはやったこともない。そこで先になって動かないことに全力を注いでいた。
蒼伊とチームを組んでいるけれどさっきから1人で戦っている。
的確なタイミングで爆弾を投げたり、隠密スキルで忍び寄り、ナイフで一刺ししている。
狙われてもすぐに左右に避けて最小限の動きでかわしながら、反対側にいる仲間を倒していた。冷静沈着に動いている獲物を狩っているみたいで怖いけどかっこよかった。
「まさか一人で20チームぐらい倒しちゃうんだもんね。ここって確か最高ランクのマスターランク帯だよね」
「そうだな。だがいつもよりもぬるいな」
蒼伊はそんなことを言った。
明輝は凄く大変そうにしている。だけど聞こえてくる蒼伊に声は落ち着きがあった。
今日は蒼伊に突然誘われたとは言ったが、一体何で誘われたんだろう。
もしかして気晴らしか何かかな?
「ねえ蒼伊、今日はどうして誘ってくれたの? 私あんまり上手くないのに」
「少し気になることがあってな」
「それって何?」
「昨日の古代遺跡。私は色々考えてみたんだが……おい、来たぞ」
「またぁ!」
明輝は休まる暇もなくコントローラーをガチャガチャした。
蒼伊の方からはヘッドホン越しにも全然音が聞こえない。
時々聞こえるのは、カチカチと言うマウスの音とキーボードを緩く叩く音だけが聞こえていた。
「はぁはぁ……結構大変だね。でも残りは1チームだね」
「そうだな。それでさっきの話の続きだが、私は昨日1人残って古代遺跡の暗号解読を進めていた。すると気になるものがあってな。見解を聞きたい」
「見解って私にはさっぱりだよ」
「お前の突飛かつ非凡なアイデアが聞きたいんだ。それ気になることだが、壁の天井隅にあったシミは覚えているか?」
「えっ、シミ? うーん、覚えてないかな」
「そうか。シミがあったんだ。意味深に三角と四角のな」
それは明らかに意味がある。明輝はピンときた。
だけどそれ以降何か引っかかることもなく、明輝は黙ってしまう。
話の種は今度は明輝から出てくる。
「ねえ、一回考えるの止めない?」
「考える行為を止めるのか? そうだなじゃあ何か気晴らしに……」
「そうだ! 今度みんなで何処か行きたいね」
「何処かって曖昧だな。何かないのか?」
蒼伊から逆に振られてしまった。そこで思いついたのが、この間の満月山のことだ。
「もう10月だよね。星とか見に行かない?」
「星だと? それなら冬の方がいいだろ」
「でも夜天って書いてあったよね?」
「それはそうだが……ん? 待て」
明輝はスライドパットを動かすのを止めた。
すると蒼伊は何か考え始める。どうやらピンと来たみたいだが、蒼伊のことなので夜天には気づいていたはずだ。
明輝は何に気が付いたのかはわからなかったが、それから程なく敵に見つかり戦闘になってしまった。最後は蒼伊の活躍でもちろん勝った。
無機質な連打音が部屋の中に響いた。
防音設備もさほどないので廊下にまで音は漏れ聞こえる。
明るい部屋の中で、椅子に座って1人黙々とコントローラーのボタンを連打していた。
「くっ……結構疲れるね、これ」
「そうだな。明輝後ろだ」
「えっ!? うわぁ」
「バックアップに入る。お前は適当に隠れていろ」
蒼伊に言われて私は建物の裏に隠れた。
スキルを使って5秒間だけ無敵になる。その隙に回復だ。
「えーっと、回復まで確か10秒かかるんだよね」
私はアイテム欄から回復アイテムを使った。
いわゆるバトルロワイアル略してバトロワ系の銃撃戦ゲーム『Sneak Combat』で遊んでいる明輝だが、蒼伊に誘われて現在戦闘中。
正直に言おう。何にもわからない。
明輝は只今初心者の動きのため、めちゃくちゃ狙われている。
「ふぅ、確か全部で50チームぐらいいるんだよね。残りはえーっと、4チームになってる!」
この手のゲームはやったこともない。そこで先になって動かないことに全力を注いでいた。
蒼伊とチームを組んでいるけれどさっきから1人で戦っている。
的確なタイミングで爆弾を投げたり、隠密スキルで忍び寄り、ナイフで一刺ししている。
狙われてもすぐに左右に避けて最小限の動きでかわしながら、反対側にいる仲間を倒していた。冷静沈着に動いている獲物を狩っているみたいで怖いけどかっこよかった。
「まさか一人で20チームぐらい倒しちゃうんだもんね。ここって確か最高ランクのマスターランク帯だよね」
「そうだな。だがいつもよりもぬるいな」
蒼伊はそんなことを言った。
明輝は凄く大変そうにしている。だけど聞こえてくる蒼伊に声は落ち着きがあった。
今日は蒼伊に突然誘われたとは言ったが、一体何で誘われたんだろう。
もしかして気晴らしか何かかな?
「ねえ蒼伊、今日はどうして誘ってくれたの? 私あんまり上手くないのに」
「少し気になることがあってな」
「それって何?」
「昨日の古代遺跡。私は色々考えてみたんだが……おい、来たぞ」
「またぁ!」
明輝は休まる暇もなくコントローラーをガチャガチャした。
蒼伊の方からはヘッドホン越しにも全然音が聞こえない。
時々聞こえるのは、カチカチと言うマウスの音とキーボードを緩く叩く音だけが聞こえていた。
「はぁはぁ……結構大変だね。でも残りは1チームだね」
「そうだな。それでさっきの話の続きだが、私は昨日1人残って古代遺跡の暗号解読を進めていた。すると気になるものがあってな。見解を聞きたい」
「見解って私にはさっぱりだよ」
「お前の突飛かつ非凡なアイデアが聞きたいんだ。それ気になることだが、壁の天井隅にあったシミは覚えているか?」
「えっ、シミ? うーん、覚えてないかな」
「そうか。シミがあったんだ。意味深に三角と四角のな」
それは明らかに意味がある。明輝はピンときた。
だけどそれ以降何か引っかかることもなく、明輝は黙ってしまう。
話の種は今度は明輝から出てくる。
「ねえ、一回考えるの止めない?」
「考える行為を止めるのか? そうだなじゃあ何か気晴らしに……」
「そうだ! 今度みんなで何処か行きたいね」
「何処かって曖昧だな。何かないのか?」
蒼伊から逆に振られてしまった。そこで思いついたのが、この間の満月山のことだ。
「もう10月だよね。星とか見に行かない?」
「星だと? それなら冬の方がいいだろ」
「でも夜天って書いてあったよね?」
「それはそうだが……ん? 待て」
明輝はスライドパットを動かすのを止めた。
すると蒼伊は何か考え始める。どうやらピンと来たみたいだが、蒼伊のことなので夜天には気づいていたはずだ。
明輝は何に気が付いたのかはわからなかったが、それから程なく敵に見つかり戦闘になってしまった。最後は蒼伊の活躍でもちろん勝った。
11
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる