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元シスコン兄と悪役令嬢の攻防(溺愛)
元シスコン攻略対象は、悪役令嬢にちょっかいをかけたい
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「君、相変わらずうるさいね。今この子と楽しく話してたのに。
というか、いつも妹と話しているときも横入りしてくるよね。嫌がらせもしてるみたいだし…。
ま、もういいか。君とは婚約破棄するし。君の有責でね。金輪際僕にかかわらないでね」
…自分の声がやけに冷たい。
視界に映る彼女の顔は、瞳はうるんでいて泣きそうだった。泣きそうなときでも、こちらを睨みつけてくるのがさすがだなと、どこか他人事のように眺めた。
「わ、私は嫌がらせなどしておりませんわ!!」
泣きそうな彼女を見て、暗い愉悦が沸き上がる。
僕は酷薄に笑った。
「事実は関係ないかな…。
もう、そうであると国が確定してしまったしね。付きまとわなければ、ここまでにはならなかったのにね。ご愁傷様」
ここから先、彼女に明るい未来はないだろう。よくて修道院行きといったところか。
まあ、これから先、僕と、あの子と妹の視界に入らなければなんでもいい。
そう、思ったのに、絶望した瞳で、ついに流れ出した涙もふかず、立ちすくんでいる彼女の顔が、なぜか脳裏に刻み込まれた…
「うっわ、夢見最悪…」
さわやかな日差しの朝なのに、僕の目覚めは最悪だった。
それもそのはずだ。最近興味の尽きない僕の婚約者が、僕のせいで追い込まれ、絶望している夢を見たのだから。
しかも、その夢は一歩間違えれば現実になっていたと、なんとなくわかった。
「つーか、僕の隣にいた女の子、誰だよ。可愛らしくはあったけど、絶対彼女のほうがきれいだって。
僕の目、腐ってたのかな…?」
あの時、妹が彼女と三人でお茶にしようと言っていなければ、僕は彼女の面白さに気が付くことなく、今も彼女を疎んじていただろう。
そして、妹と二人の箱庭に閉じこもり、その箱庭を肯定してくれる都合のいい人間と結ばれたに違いない。
「そー考えると、視野が広がったのは妹のおかげかな…なんか隠してるっぽかったけど、追及しないでおこうか。とりあえずは」
頭を振ってベットから起き上がる。
呼び鈴を鳴らせば、専属メイドが朝の身支度の用意とモーニングティーを運んできた。
「朝食はこちらで取られますか?それとも食堂で?」
「んー、今日は彼女が朝からくるんだよね?」
「はい、そうでございます」
「じゃ、少し遅くなってもいいから、彼女と妹と三人でブランチにするよ」
「かしこまりました」
今までと違う態度に驚いただろうが、それを一切顔に出さず、メイドは静かに退室した。
僕は手早く身支度を整えると、妹の部屋に向かった。
「おはよー、妹。今日は三人でブランチにしよう!」
ノックしてすぐに扉を開けると、妹はまだ寝起きで、ベットにいた。こちらをキッとにらんでくる。
「お兄様!まだノックの返事をしておりませんわ。淑女の身支度を除くものではありませんことよ」
「いいじゃないか、いつものことだし。最近、厳しくないか?お兄ちゃん悲しいな」
「そんなこと、思ってもおりませんでしょうに…」
妹は一つ嘆息した。
最近、ある日から妹はお兄ちゃん離れをしようとしている。それがとても悲しい。ただ、まあ、夢の内容ではないが、二人だけの世界でいてもあまり健全ではないと最近はおもうので、仕方ないのかなとも思う。
まあ、そもそも、妹は貴族に向いていない。いつか飛び出す時が来る。そんな予感がしていた。
「それより、お姉さまと朝食にですの!まあ!嬉しいですわ。身支度、急ぎますわね」
そういって、妹は僕を部屋から追い出し、大急ぎで準備を始めた。
それがどことなく面白くなくて、憮然としながらも彼女を出迎える準備を始めた。
「お出迎えありがとうございます。おはようございます」
彼女が華麗にカーテンシーで挨拶した。
今までだと、完璧すぎて嫌味に見えていたそれが、最近はなんとなくいじらしく見える。
「うん、ようこそ。朝食はまだだよね。一緒に食べよう」
ニコリと笑って彼女に手を差し伸べると、おずおずと手を重ねてきた。
彼女をちゃんとエスコートしてしばらくたつのに、いまだなれないらしい。
ちらちらこちらを見てくる彼女が面白くて仕方がない。
思わず、笑いそうになるが、顔にはださず、すまして僕は彼女をテラスまでエスコートした。
「お姉さま!ようこそおいでくださいました!」
妹が顔をぱあっと輝かせて、彼女に席をすすめた。
彼女が戸惑いつつも彼女の横に座る。それを見て、僕はその横に座った。
「っ、な、ち、近いですわ!席はほかにもありますのに」
また真っ赤になって、目を吊り上げて叫ぶ彼女をみて、更に楽しくなった僕はさらに椅子を近づけ、ひょいと彼女の顔を覗き込んだ。
妹はあきれの混じった視線で遠巻きにみながら、お茶をのんびり飲んでいる。
「ふふ、婚約者のことをもっと知りたいなって思ってね。だめかな?」
じっと彼女を見つめると、さらに真っ赤になってそっぽを向いてお茶を飲み始めた。
面白いなー
僕がくすくす笑っていると、彼女は涙目になってうつむいてしまった。
「もう、お兄様は…」
妹は肩を落としてため息をついている。
同じ涙目な彼女の顔なのに、今は悪い気分じゃなかった。むしろ楽しい。
「…腹黒なのは変わらず…永遠の病気かしら…」
妹が何かつぶやいた気がしたが、聞き取れなかった。
三人で仲良く話し、彼女をいじりながら一日を過ごして、帰る時間になった。
どこか彼女が暗い顔をしているを見て、僕はふと衝動に駆られた。
「ちゅっ」
彼女の頬に口づけると、彼女の顔がボンっと赤くなった。
「へ?あ、あ、あの…」
おたおたしながら、目を回す彼女を見て、留飲を下げた僕は、そのまま彼女の迎の馬車までエスコートした。
何がなんだかわからないままの彼女を、馬車に送ったあと、僕は自分の影に声をかけた。
「で…どうだった?」
声はかえって来なかったが、分厚い報告書がいつの間にか手元に渡されていた。
「相変わらず、不愛想な奴…どれ…、やっぱりな。」
僕は報告書を片手に、妹のもとを訪ねた。
「彼女を送らなくてよかったのかい?ずいぶん懐いてるから、てっきり見送るかと」
「…馬に蹴られるのはごめんですわ。…それより、お兄様、何かお話がおありではないんですの?」
報告書の束に目をやりながら訪ねる彼女に苦笑を返して、僕は端的に告げた。
「彼女も家に住むことになるんだが、いいかい?名目は花嫁修業だが、実質女主人として、のサポートもしてもらおうと思ってね」
妹は穏やかにうなずいた。
「わかりましたわ。そういうことですのね。お父様とお母さまがそれぞれ王宮と領地に定住している以上、ここの当主代理ははお兄様ですわ。お二人の説得ができるのならどうぞ」
「大丈夫だよ。この婚約はもともと、理があるから結ばれたもの。だから多少のわがままぐらい通るさ」
そういって、妹の頭をなでてから部屋を後にした。
報告書には、家では愛人やその子に冷遇され、父親は彼女の愛情を利用し、操っている全容が書かれていた。使用人も愛人の手のものらしい。母親は愛人より地位が低いため、空気だそうだ。
「彼女は僕の婚約者だしね。僕以外に泣かさせるわけにはいかないよね。それに、愛情の利用とかなんか…むかつく」
なんとなく、我が家の年に数回しか帰ってこない両親を思い出して嫌な気分になったので、彼女の真っ赤な顔を思い出して気分を上げる。
「あれ…いつの間に?」
いつの間にか、嫌な時に思い出す顔が妹より先に彼女になっていることに気が付いた。
「ふふ、彼女が家にきたら、楽しくなりそうだね…」
心が沸き立つままに、僕は夕闇の空を見上げた。
興味だと思っていたのが、好意で、恋愛感情だと気が付くまでもう少し。
妹が日々の二人のやりとりに死んだ目で答えるようになるまであとわずかだった。
というか、いつも妹と話しているときも横入りしてくるよね。嫌がらせもしてるみたいだし…。
ま、もういいか。君とは婚約破棄するし。君の有責でね。金輪際僕にかかわらないでね」
…自分の声がやけに冷たい。
視界に映る彼女の顔は、瞳はうるんでいて泣きそうだった。泣きそうなときでも、こちらを睨みつけてくるのがさすがだなと、どこか他人事のように眺めた。
「わ、私は嫌がらせなどしておりませんわ!!」
泣きそうな彼女を見て、暗い愉悦が沸き上がる。
僕は酷薄に笑った。
「事実は関係ないかな…。
もう、そうであると国が確定してしまったしね。付きまとわなければ、ここまでにはならなかったのにね。ご愁傷様」
ここから先、彼女に明るい未来はないだろう。よくて修道院行きといったところか。
まあ、これから先、僕と、あの子と妹の視界に入らなければなんでもいい。
そう、思ったのに、絶望した瞳で、ついに流れ出した涙もふかず、立ちすくんでいる彼女の顔が、なぜか脳裏に刻み込まれた…
「うっわ、夢見最悪…」
さわやかな日差しの朝なのに、僕の目覚めは最悪だった。
それもそのはずだ。最近興味の尽きない僕の婚約者が、僕のせいで追い込まれ、絶望している夢を見たのだから。
しかも、その夢は一歩間違えれば現実になっていたと、なんとなくわかった。
「つーか、僕の隣にいた女の子、誰だよ。可愛らしくはあったけど、絶対彼女のほうがきれいだって。
僕の目、腐ってたのかな…?」
あの時、妹が彼女と三人でお茶にしようと言っていなければ、僕は彼女の面白さに気が付くことなく、今も彼女を疎んじていただろう。
そして、妹と二人の箱庭に閉じこもり、その箱庭を肯定してくれる都合のいい人間と結ばれたに違いない。
「そー考えると、視野が広がったのは妹のおかげかな…なんか隠してるっぽかったけど、追及しないでおこうか。とりあえずは」
頭を振ってベットから起き上がる。
呼び鈴を鳴らせば、専属メイドが朝の身支度の用意とモーニングティーを運んできた。
「朝食はこちらで取られますか?それとも食堂で?」
「んー、今日は彼女が朝からくるんだよね?」
「はい、そうでございます」
「じゃ、少し遅くなってもいいから、彼女と妹と三人でブランチにするよ」
「かしこまりました」
今までと違う態度に驚いただろうが、それを一切顔に出さず、メイドは静かに退室した。
僕は手早く身支度を整えると、妹の部屋に向かった。
「おはよー、妹。今日は三人でブランチにしよう!」
ノックしてすぐに扉を開けると、妹はまだ寝起きで、ベットにいた。こちらをキッとにらんでくる。
「お兄様!まだノックの返事をしておりませんわ。淑女の身支度を除くものではありませんことよ」
「いいじゃないか、いつものことだし。最近、厳しくないか?お兄ちゃん悲しいな」
「そんなこと、思ってもおりませんでしょうに…」
妹は一つ嘆息した。
最近、ある日から妹はお兄ちゃん離れをしようとしている。それがとても悲しい。ただ、まあ、夢の内容ではないが、二人だけの世界でいてもあまり健全ではないと最近はおもうので、仕方ないのかなとも思う。
まあ、そもそも、妹は貴族に向いていない。いつか飛び出す時が来る。そんな予感がしていた。
「それより、お姉さまと朝食にですの!まあ!嬉しいですわ。身支度、急ぎますわね」
そういって、妹は僕を部屋から追い出し、大急ぎで準備を始めた。
それがどことなく面白くなくて、憮然としながらも彼女を出迎える準備を始めた。
「お出迎えありがとうございます。おはようございます」
彼女が華麗にカーテンシーで挨拶した。
今までだと、完璧すぎて嫌味に見えていたそれが、最近はなんとなくいじらしく見える。
「うん、ようこそ。朝食はまだだよね。一緒に食べよう」
ニコリと笑って彼女に手を差し伸べると、おずおずと手を重ねてきた。
彼女をちゃんとエスコートしてしばらくたつのに、いまだなれないらしい。
ちらちらこちらを見てくる彼女が面白くて仕方がない。
思わず、笑いそうになるが、顔にはださず、すまして僕は彼女をテラスまでエスコートした。
「お姉さま!ようこそおいでくださいました!」
妹が顔をぱあっと輝かせて、彼女に席をすすめた。
彼女が戸惑いつつも彼女の横に座る。それを見て、僕はその横に座った。
「っ、な、ち、近いですわ!席はほかにもありますのに」
また真っ赤になって、目を吊り上げて叫ぶ彼女をみて、更に楽しくなった僕はさらに椅子を近づけ、ひょいと彼女の顔を覗き込んだ。
妹はあきれの混じった視線で遠巻きにみながら、お茶をのんびり飲んでいる。
「ふふ、婚約者のことをもっと知りたいなって思ってね。だめかな?」
じっと彼女を見つめると、さらに真っ赤になってそっぽを向いてお茶を飲み始めた。
面白いなー
僕がくすくす笑っていると、彼女は涙目になってうつむいてしまった。
「もう、お兄様は…」
妹は肩を落としてため息をついている。
同じ涙目な彼女の顔なのに、今は悪い気分じゃなかった。むしろ楽しい。
「…腹黒なのは変わらず…永遠の病気かしら…」
妹が何かつぶやいた気がしたが、聞き取れなかった。
三人で仲良く話し、彼女をいじりながら一日を過ごして、帰る時間になった。
どこか彼女が暗い顔をしているを見て、僕はふと衝動に駆られた。
「ちゅっ」
彼女の頬に口づけると、彼女の顔がボンっと赤くなった。
「へ?あ、あ、あの…」
おたおたしながら、目を回す彼女を見て、留飲を下げた僕は、そのまま彼女の迎の馬車までエスコートした。
何がなんだかわからないままの彼女を、馬車に送ったあと、僕は自分の影に声をかけた。
「で…どうだった?」
声はかえって来なかったが、分厚い報告書がいつの間にか手元に渡されていた。
「相変わらず、不愛想な奴…どれ…、やっぱりな。」
僕は報告書を片手に、妹のもとを訪ねた。
「彼女を送らなくてよかったのかい?ずいぶん懐いてるから、てっきり見送るかと」
「…馬に蹴られるのはごめんですわ。…それより、お兄様、何かお話がおありではないんですの?」
報告書の束に目をやりながら訪ねる彼女に苦笑を返して、僕は端的に告げた。
「彼女も家に住むことになるんだが、いいかい?名目は花嫁修業だが、実質女主人として、のサポートもしてもらおうと思ってね」
妹は穏やかにうなずいた。
「わかりましたわ。そういうことですのね。お父様とお母さまがそれぞれ王宮と領地に定住している以上、ここの当主代理ははお兄様ですわ。お二人の説得ができるのならどうぞ」
「大丈夫だよ。この婚約はもともと、理があるから結ばれたもの。だから多少のわがままぐらい通るさ」
そういって、妹の頭をなでてから部屋を後にした。
報告書には、家では愛人やその子に冷遇され、父親は彼女の愛情を利用し、操っている全容が書かれていた。使用人も愛人の手のものらしい。母親は愛人より地位が低いため、空気だそうだ。
「彼女は僕の婚約者だしね。僕以外に泣かさせるわけにはいかないよね。それに、愛情の利用とかなんか…むかつく」
なんとなく、我が家の年に数回しか帰ってこない両親を思い出して嫌な気分になったので、彼女の真っ赤な顔を思い出して気分を上げる。
「あれ…いつの間に?」
いつの間にか、嫌な時に思い出す顔が妹より先に彼女になっていることに気が付いた。
「ふふ、彼女が家にきたら、楽しくなりそうだね…」
心が沸き立つままに、僕は夕闇の空を見上げた。
興味だと思っていたのが、好意で、恋愛感情だと気が付くまでもう少し。
妹が日々の二人のやりとりに死んだ目で答えるようになるまであとわずかだった。
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