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そのじゅうなな
そのじゅうなな-10
しおりを挟む「私はもう、ずっと譲さんの事だけ想ってこの先生きていくつもりだったから」
「ご主人の思い出ごと俺に下さい、って言ったんだよ。かっこいい?」
ちょっとおちゃらけてあたしに笑顔見せる各務先生。泣き出しそうな瞳子さん。
「年甲斐も無いし、息子と同じ年の人なんてなおさら世間体も悪いし。準一郎くんだって、熱が醒めれば年相応の人のとこに行くだろうし」
「…行かないよ。どこにも」
「ずっと考えて、毎朝、顔見る度に考えて…諦めて欲しいけど言えなくて」
そして運命の日、イタリアンブランドに勝ち本当に喜んで瞳子さんを抱き締めた各務先生に。
「この人と一緒にいたいな、って思っちゃった」
それが幸せなのか、辛いのか。微笑む顔は美しくもあり哀しくもあり。
突き放せばそれはお互い辛い。でも時間が解決するかも知れない。各務先生にとってはホントに辛いけど、瞳子さんにとっては苦笑い程度の思い出になったかも知れない。
「誰が悪いとか悪くないとか、そんな物差しで言うなら俺が一番悪いよ。俺だって社会的な名声あるけど、そんなものいらないって思ってしまったから。大人げ無く好きだって騒いで駄々こねて。俺が諦めりゃ済む話だけど、でも俺にはそれは出来なかったから」
この選択が正しいのか誤りか、そんな事は今現在知る由も無い。他人から非難されようが笑われようが、構わないと思ったからこうなったワケで。
「会社戻らないと、尊にバレるから」
と、二人が帰ってあたしはティーカップ洗いながら。
あたしは、確かに他人だ、と思った。
二人の事を客観的に見て、それでも一緒にいたい、と思ったならそれで良いんじゃないかと思ってしまうから。
客観的に瞳子さんを一人の女性と見ることが出来るし、各務先生を一人の男性と見る事が出来る。一組の男女、と見れば幸せであって欲しい。
世間から後ろ指指される様な事があっても無視しとけば良い。
でも嫁として尊の気持ちを考えれば、辛い。
このまま、受け入れる事も許す事も出来ずに。
尊はどうしたいんだろう。
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