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そのじゅうはち
そのじゅうはち
しおりを挟む「ただいまあ」
おや?心なしか今日は機嫌が良い気がする。
「みのりさあん!おかえりのキスーっ」
毎日飽きずに良くやるな。
あたしにキスしたら次はみいくんに。
「みいくん、パパが帰って来たよお」
いや、さすがにほっぺたにちゅー、ですよ。男の子ですから。
女の子やったら唇にしてそうやな。
ファーストキスはパパだよ、ってそれ嫌だな。うわ、おとんにやられてたらどうしよ。
「今日、ユウに会ったんだよ。いつ会ってもバカなのは変わんないんだよね」
「へえ、ユウくん?」
なんだか久しぶりに会話弾む夕餉。
「アイツ、ちょっと真面目になってるよ。見た目も変わったし」
ほお、あのユウくんがね。真面目とは。
「付き合ってる彼女のために仕事変えたいって言うから、とりあえずバイトで雇う事にした」
「えっ!?彼女出来たん!?」
なんとなく、ユウくんてずっとチャラいまま歳取りそうな気がしてたのに。
「その彼女ってのがさ…」
なんとっ!警察の人となっ!?信じられん。世の中って不思議。
「彼女のために変わろう、ってのは俺も気持ちわかるし。まあ、将来考えたら普通に水商売やってられないしね。自分の店持ったりとかするなら別だけど」
尊もあたしのためにあっさり辞めたしね。
「…それで彼女はユウより十歳年上なんだって。でもすんげえ綺麗だから、って自慢しやがるの、アイツ」
あのユウくんがよくそんな人と。
社会的立場もある綺麗で大人の女性と。なんで付き合えてるんだ。ますます世の中って不思議。
「最初は相手してもらえなかったって、そりゃそうだよね。アイツ、バカだし」
「あはは…」
「でも自分の事一人の人間として見てくれたからって」
一人の人間として、男として。女として。
「俺は大好きでたまんない、っての良くわかるし。ユウがそんなに想える人に会えて良かったな、と思うよ。年の差なんて関係ないじゃん、上手くやれよって」
尊のトーンが低くなる。重ねて思う事、わかるけど。
「…他人事ならね。協力もしてやるよ」
「尊…」
「母親じゃいられなかったくせに女ならいられるのか、とかね」
尊の気持ちはもう拗れてる。各務先生がどうとかやなくて。瞳子さんと自分の関係について否定し始めてる。
それは尊にとっても瞳子さんにとっても不幸な事なのに。
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