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43話 建国祭⑨

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ユーゴ視点

「建国祭に誘ってくれてありがとな」

 俺は中央広場にあるベンチに腰を下ろすと、カトリーヌに感謝の言葉を伝えた。

 1日目は火薬を回収するためにバタバタしていたが、その後は2人でデートを楽しむ事ができた。これほど充実した日々は初めてだった。

「私の方こそユーゴと一緒にお祭りに参加できて楽しかったわ」

 カトリーヌも隣にちょこんと座って体を寄せる。2人の手が重なって心地よい時間が流れる。しばらくの間無言が続いたけど、気まずい感じはしなかった。

「ねぇ、ユーゴ、その……あれから大丈夫?」

「ん? 何のことだ?」

「その……劇薬を飲んでから何か異変はない?」

 カトリーヌは俺の手をギュッと握ると、心配そうに尋ねてきた。

「あぁ、問題ない」

「ならいいけど……本当にごめんね……」

「もう過ぎたことだろ? それにカトリーヌは何も悪くない。そう気にするな」

 俺ははっきりと断言した。カトリーヌも納得したのか、こっくりと頷く。

「でも、ありがとね。ユーゴがいなかったら……きっと私が罰を受けていたわ……」

「俺もカトリーヌが疑われなくてよかったよ」

 周りに人がいないせいか2人の吐息がよく聞こえる。俺はそっとポケットに手を入れると、小さな箱を出した。

「なぁ、カトリーヌ、これを受け取ってくれないか?」
 
「えっ、私に⁉︎ 開けてみてもいい?」

「もちろん!」

 小さな箱から出てきたのは、可愛らしい花のネックレスだった。

「絶対に似合うと思って……ちょっと目を閉じてくれないか?」
 
 カトリーヌは言われた通りにすっと目を閉じる。これはすごい……想像以上に似合っている!

「ありがとう! 大切にするね」

 カトリーヌはうっとりとした表情でネックレスを優しく撫でる。どうやら気に入ってくれたらしい。

「ねぇ……ユーゴ……私からもプレゼントがあるの。ちょっと目を閉じてもらえるかな?」

「あぁ、分かった」

 俺も言われた通りに目を閉じた。まさかカトリーヌもこっそりプレゼントを用意していたとは……一体何をくれるんだ?

「えっと……それじゃあいくよ……」

 なぜかカトリーヌの声がこわばっている。何に緊張しているのだろう? 不思議に思って目を開けると、目の前にカトリーヌの顔があった。そしてふっくらとした唇が俺の口に重なる。

「えっ、んん!!!!???!!」

 一瞬何が起きたのか分からなくて頭の中が真っ白になる。じんわりと唇に熱を感じる。えっ、俺……キスをされたのか⁉︎

「………ねぇ、ユーゴ……」

 





「………好きだよ…………」

 またしても頭の中が真っ白になる。えっ、俺……告白されたのか⁉︎

「私……ユーゴの事が好きなの……大好きなの!」

 好き……大好き……その言葉が何度も再生されて思わず頬が緩んでしまう。なんだよそれ……反則だろ……

「俺もだ……俺もカトリーヌのことが好きだ!」

 俺は力強くカトリーヌを抱きしめると、全力で愛を叫んだ。その度にカトリーヌの頬も緩んでいく。

「あれ? ユーゴ、泣いてるの?」

「そっそんなわけ……カトリーヌだって目元が赤くなってるだろ?」

 嬉しさのあまりなぜか泣けてくる。それがなんだか可笑しくて……俺たちは顔を見合わせると、泣きながら笑い合った。2人の声が静かな街に響き渡る……
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