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42話 建国祭⑧
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ライアン視点
「ふぅ~ 終わった~」
ボクは芝生広場に寝そべると大きく体を伸ばした。1日目は火薬を回収するために走りまくったせいで足が痛い……
でもそんな事はお構いなしに、翌日も屋台の仕事を課せられた。まぁ、何とか無事に建国祭は終わったけど、もうクタクタだ……少しだけ休ませてほしい……
「ちょっと、こんなところで寝ていたら風邪をひくでしょ?」
大の字になって倒れていると、バーバラが呆れた表情でやって来てボクを見下ろした。
夜風に吹かれバーバラが手で自分の髪を押さえる。それでも赤色の髪がサラサラと揺れていた。普段は強気で怖いけど、こういう何気ない仕草はやっぱり女の子らしくて可愛らしい。
「何よ、ジロジロ見て」
「なっ、何でもないです。えっと……何をしに来たんですか?」
「別に……ただ、はいこれ……余ったからあげるわよ!」
バーバラはボクの隣に座ると、サンドイッチの入ったバスケットを手渡した。
(おかしいな……確か完売したはずなのに……もしかしてバーバラはボクのために!)
「かっ、勘違いしないでよね! 余った材料が勿体無いから作っただけなんだから!」
バーバラが慌てて言い訳をすると、「ぐぅ~」とお腹が鳴る音がした。
「えっと……一緒に食べますか?」
「…………頂くわ……」
バーバラはサンドイッチを取り出すと、両手でつまんで小さく頬張った。態度とは裏腹に食べ方はお上品で思わず見惚れてしまう。
「少し冷えるわね……これならスープにすればよかったかしら?」
「それならこれを使って下さい。冷えるといけないので」
ボクは上着を脱ぐと、バーバラの肩にかけてあげた。
「……………ありがとう……」
「えっ、何か言いましたか?」
「何でもないわよ、ほら、冷えるとダメなんでしょ? だったらもっと側に来なさいよ!」
「えっ⁉︎ じゃあ……」
ボクは言われた通りにそっと距離を詰めてみた。肩と肩がピタッと触れて、照れくさそうにバーバラは目を背ける。
「ねぇ、ライアンはハタマ村の仕事は楽しい?」
「えっ、あっ、はい、最初は嫌でしたけど、今は毎日充実していますよ」
「そう……ならよかったわ……」
バーバラはなぜかほっとした表情で息をはいた。
「実はね……私もハタマ村に来た時は嫌で嫌で仕方なかったの。こんな田舎で生きてくなんてありえないと思ったわ」
「そっ、そうなのですか? 意外です」
あんなに熱心に畑作業をするから、初めは嫌だったなんて信じられない。あのバーバラがボクと同じ事で悩んでいたなんて……
「ロレッタに悪い事をしてハタマ村に追放されて、イヤイヤ畑作業をしていたのよ。だから同じ境遇のライアンの事がほっとけなかったのよ……」
「そっ、そうだったのですね……」
ハタマ村に追放……それも初めて聞いた事だった。何か事情があってあの村に移住したのだと思ったけど……まさか追放だったなんて……ボクと同じだ……
「それで……つい気になって、ライアンが村の人と楽しそうに馴染んでいるの見ていたら私まで嬉しくなって……」
バーバラの顔がみるみる赤くなっていく。珍しく今日はとても素直だ。それに緊張しているのか声が震えている。
「ねぇ、一度しか言わないからよく聞きなさい」
バーバラはボクの目をまっすぐ見つめると、絞り出すように声を出した。
「ライアン……私はライアンの事が好きなの! だから付き合って!」
バーバラらしい強気でまっすぐな告白にボクの心臓が激しく昂る。学校を退学させられて、辺境の村に飛ばされた時はもうダメだと思っていた。
でもまさか……こんな事になるなんて……
「もっ、もちろんです。よろしくお願いします!」
バーバラはクスッと微笑んで目元に涙を浮かべる。初めて見せてくれた素直な笑顔はとても可愛かった。
「ふぅ~ 終わった~」
ボクは芝生広場に寝そべると大きく体を伸ばした。1日目は火薬を回収するために走りまくったせいで足が痛い……
でもそんな事はお構いなしに、翌日も屋台の仕事を課せられた。まぁ、何とか無事に建国祭は終わったけど、もうクタクタだ……少しだけ休ませてほしい……
「ちょっと、こんなところで寝ていたら風邪をひくでしょ?」
大の字になって倒れていると、バーバラが呆れた表情でやって来てボクを見下ろした。
夜風に吹かれバーバラが手で自分の髪を押さえる。それでも赤色の髪がサラサラと揺れていた。普段は強気で怖いけど、こういう何気ない仕草はやっぱり女の子らしくて可愛らしい。
「何よ、ジロジロ見て」
「なっ、何でもないです。えっと……何をしに来たんですか?」
「別に……ただ、はいこれ……余ったからあげるわよ!」
バーバラはボクの隣に座ると、サンドイッチの入ったバスケットを手渡した。
(おかしいな……確か完売したはずなのに……もしかしてバーバラはボクのために!)
「かっ、勘違いしないでよね! 余った材料が勿体無いから作っただけなんだから!」
バーバラが慌てて言い訳をすると、「ぐぅ~」とお腹が鳴る音がした。
「えっと……一緒に食べますか?」
「…………頂くわ……」
バーバラはサンドイッチを取り出すと、両手でつまんで小さく頬張った。態度とは裏腹に食べ方はお上品で思わず見惚れてしまう。
「少し冷えるわね……これならスープにすればよかったかしら?」
「それならこれを使って下さい。冷えるといけないので」
ボクは上着を脱ぐと、バーバラの肩にかけてあげた。
「……………ありがとう……」
「えっ、何か言いましたか?」
「何でもないわよ、ほら、冷えるとダメなんでしょ? だったらもっと側に来なさいよ!」
「えっ⁉︎ じゃあ……」
ボクは言われた通りにそっと距離を詰めてみた。肩と肩がピタッと触れて、照れくさそうにバーバラは目を背ける。
「ねぇ、ライアンはハタマ村の仕事は楽しい?」
「えっ、あっ、はい、最初は嫌でしたけど、今は毎日充実していますよ」
「そう……ならよかったわ……」
バーバラはなぜかほっとした表情で息をはいた。
「実はね……私もハタマ村に来た時は嫌で嫌で仕方なかったの。こんな田舎で生きてくなんてありえないと思ったわ」
「そっ、そうなのですか? 意外です」
あんなに熱心に畑作業をするから、初めは嫌だったなんて信じられない。あのバーバラがボクと同じ事で悩んでいたなんて……
「ロレッタに悪い事をしてハタマ村に追放されて、イヤイヤ畑作業をしていたのよ。だから同じ境遇のライアンの事がほっとけなかったのよ……」
「そっ、そうだったのですね……」
ハタマ村に追放……それも初めて聞いた事だった。何か事情があってあの村に移住したのだと思ったけど……まさか追放だったなんて……ボクと同じだ……
「それで……つい気になって、ライアンが村の人と楽しそうに馴染んでいるの見ていたら私まで嬉しくなって……」
バーバラの顔がみるみる赤くなっていく。珍しく今日はとても素直だ。それに緊張しているのか声が震えている。
「ねぇ、一度しか言わないからよく聞きなさい」
バーバラはボクの目をまっすぐ見つめると、絞り出すように声を出した。
「ライアン……私はライアンの事が好きなの! だから付き合って!」
バーバラらしい強気でまっすぐな告白にボクの心臓が激しく昂る。学校を退学させられて、辺境の村に飛ばされた時はもうダメだと思っていた。
でもまさか……こんな事になるなんて……
「もっ、もちろんです。よろしくお願いします!」
バーバラはクスッと微笑んで目元に涙を浮かべる。初めて見せてくれた素直な笑顔はとても可愛かった。
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