46 / 49
42話 建国祭⑧
しおりを挟む
ライアン視点
「ふぅ~ 終わった~」
ボクは芝生広場に寝そべると大きく体を伸ばした。1日目は火薬を回収するために走りまくったせいで足が痛い……
でもそんな事はお構いなしに、翌日も屋台の仕事を課せられた。まぁ、何とか無事に建国祭は終わったけど、もうクタクタだ……少しだけ休ませてほしい……
「ちょっと、こんなところで寝ていたら風邪をひくでしょ?」
大の字になって倒れていると、バーバラが呆れた表情でやって来てボクを見下ろした。
夜風に吹かれバーバラが手で自分の髪を押さえる。それでも赤色の髪がサラサラと揺れていた。普段は強気で怖いけど、こういう何気ない仕草はやっぱり女の子らしくて可愛らしい。
「何よ、ジロジロ見て」
「なっ、何でもないです。えっと……何をしに来たんですか?」
「別に……ただ、はいこれ……余ったからあげるわよ!」
バーバラはボクの隣に座ると、サンドイッチの入ったバスケットを手渡した。
(おかしいな……確か完売したはずなのに……もしかしてバーバラはボクのために!)
「かっ、勘違いしないでよね! 余った材料が勿体無いから作っただけなんだから!」
バーバラが慌てて言い訳をすると、「ぐぅ~」とお腹が鳴る音がした。
「えっと……一緒に食べますか?」
「…………頂くわ……」
バーバラはサンドイッチを取り出すと、両手でつまんで小さく頬張った。態度とは裏腹に食べ方はお上品で思わず見惚れてしまう。
「少し冷えるわね……これならスープにすればよかったかしら?」
「それならこれを使って下さい。冷えるといけないので」
ボクは上着を脱ぐと、バーバラの肩にかけてあげた。
「……………ありがとう……」
「えっ、何か言いましたか?」
「何でもないわよ、ほら、冷えるとダメなんでしょ? だったらもっと側に来なさいよ!」
「えっ⁉︎ じゃあ……」
ボクは言われた通りにそっと距離を詰めてみた。肩と肩がピタッと触れて、照れくさそうにバーバラは目を背ける。
「ねぇ、ライアンはハタマ村の仕事は楽しい?」
「えっ、あっ、はい、最初は嫌でしたけど、今は毎日充実していますよ」
「そう……ならよかったわ……」
バーバラはなぜかほっとした表情で息をはいた。
「実はね……私もハタマ村に来た時は嫌で嫌で仕方なかったの。こんな田舎で生きてくなんてありえないと思ったわ」
「そっ、そうなのですか? 意外です」
あんなに熱心に畑作業をするから、初めは嫌だったなんて信じられない。あのバーバラがボクと同じ事で悩んでいたなんて……
「ロレッタに悪い事をしてハタマ村に追放されて、イヤイヤ畑作業をしていたのよ。だから同じ境遇のライアンの事がほっとけなかったのよ……」
「そっ、そうだったのですね……」
ハタマ村に追放……それも初めて聞いた事だった。何か事情があってあの村に移住したのだと思ったけど……まさか追放だったなんて……ボクと同じだ……
「それで……つい気になって、ライアンが村の人と楽しそうに馴染んでいるの見ていたら私まで嬉しくなって……」
バーバラの顔がみるみる赤くなっていく。珍しく今日はとても素直だ。それに緊張しているのか声が震えている。
「ねぇ、一度しか言わないからよく聞きなさい」
バーバラはボクの目をまっすぐ見つめると、絞り出すように声を出した。
「ライアン……私はライアンの事が好きなの! だから付き合って!」
バーバラらしい強気でまっすぐな告白にボクの心臓が激しく昂る。学校を退学させられて、辺境の村に飛ばされた時はもうダメだと思っていた。
でもまさか……こんな事になるなんて……
「もっ、もちろんです。よろしくお願いします!」
バーバラはクスッと微笑んで目元に涙を浮かべる。初めて見せてくれた素直な笑顔はとても可愛かった。
「ふぅ~ 終わった~」
ボクは芝生広場に寝そべると大きく体を伸ばした。1日目は火薬を回収するために走りまくったせいで足が痛い……
でもそんな事はお構いなしに、翌日も屋台の仕事を課せられた。まぁ、何とか無事に建国祭は終わったけど、もうクタクタだ……少しだけ休ませてほしい……
「ちょっと、こんなところで寝ていたら風邪をひくでしょ?」
大の字になって倒れていると、バーバラが呆れた表情でやって来てボクを見下ろした。
夜風に吹かれバーバラが手で自分の髪を押さえる。それでも赤色の髪がサラサラと揺れていた。普段は強気で怖いけど、こういう何気ない仕草はやっぱり女の子らしくて可愛らしい。
「何よ、ジロジロ見て」
「なっ、何でもないです。えっと……何をしに来たんですか?」
「別に……ただ、はいこれ……余ったからあげるわよ!」
バーバラはボクの隣に座ると、サンドイッチの入ったバスケットを手渡した。
(おかしいな……確か完売したはずなのに……もしかしてバーバラはボクのために!)
「かっ、勘違いしないでよね! 余った材料が勿体無いから作っただけなんだから!」
バーバラが慌てて言い訳をすると、「ぐぅ~」とお腹が鳴る音がした。
「えっと……一緒に食べますか?」
「…………頂くわ……」
バーバラはサンドイッチを取り出すと、両手でつまんで小さく頬張った。態度とは裏腹に食べ方はお上品で思わず見惚れてしまう。
「少し冷えるわね……これならスープにすればよかったかしら?」
「それならこれを使って下さい。冷えるといけないので」
ボクは上着を脱ぐと、バーバラの肩にかけてあげた。
「……………ありがとう……」
「えっ、何か言いましたか?」
「何でもないわよ、ほら、冷えるとダメなんでしょ? だったらもっと側に来なさいよ!」
「えっ⁉︎ じゃあ……」
ボクは言われた通りにそっと距離を詰めてみた。肩と肩がピタッと触れて、照れくさそうにバーバラは目を背ける。
「ねぇ、ライアンはハタマ村の仕事は楽しい?」
「えっ、あっ、はい、最初は嫌でしたけど、今は毎日充実していますよ」
「そう……ならよかったわ……」
バーバラはなぜかほっとした表情で息をはいた。
「実はね……私もハタマ村に来た時は嫌で嫌で仕方なかったの。こんな田舎で生きてくなんてありえないと思ったわ」
「そっ、そうなのですか? 意外です」
あんなに熱心に畑作業をするから、初めは嫌だったなんて信じられない。あのバーバラがボクと同じ事で悩んでいたなんて……
「ロレッタに悪い事をしてハタマ村に追放されて、イヤイヤ畑作業をしていたのよ。だから同じ境遇のライアンの事がほっとけなかったのよ……」
「そっ、そうだったのですね……」
ハタマ村に追放……それも初めて聞いた事だった。何か事情があってあの村に移住したのだと思ったけど……まさか追放だったなんて……ボクと同じだ……
「それで……つい気になって、ライアンが村の人と楽しそうに馴染んでいるの見ていたら私まで嬉しくなって……」
バーバラの顔がみるみる赤くなっていく。珍しく今日はとても素直だ。それに緊張しているのか声が震えている。
「ねぇ、一度しか言わないからよく聞きなさい」
バーバラはボクの目をまっすぐ見つめると、絞り出すように声を出した。
「ライアン……私はライアンの事が好きなの! だから付き合って!」
バーバラらしい強気でまっすぐな告白にボクの心臓が激しく昂る。学校を退学させられて、辺境の村に飛ばされた時はもうダメだと思っていた。
でもまさか……こんな事になるなんて……
「もっ、もちろんです。よろしくお願いします!」
バーバラはクスッと微笑んで目元に涙を浮かべる。初めて見せてくれた素直な笑顔はとても可愛かった。
34
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~
平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。
ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。
ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。
保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。
周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。
そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。
そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる