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拾参 最終配信 其の二
81 最終配信の巻き
しおりを挟むところ変わって韓国、大統領官邸……
Vチューブで忍チューバーの戦いを苦虫を噛み潰したような顔で見ていた門大統領は叫んだ。
『どうして死なないんだ!』
韓国艦隊の総攻撃でも、軍用ヘリの総攻撃でも、揚陸艦に乗る韓国兵の総攻撃でも死ななかった半荘に、門大統領は怒りをぶつける。
『こうなったら、最終手段だ!』
最終手段……対北朝鮮用に韓国が開発したミサイル「玄武」だ。
本来ならば北朝鮮に向けて配置されているのだが、何故か独島に向けても、少なからず配置してあった。
もしかすると、独島に何かあった場合に備えて配置していたのかもしれない。
韓国本土、数十ヵ所から放たれるミサイルは、独島など、簡単に火の海に変えるだろう。
側近もその事にすぐに気付いたのか、止めに入る。
『そんな事をすれば、独島の形が変わってしまいます。どうかお考え直しを……』
『それがどうした?』
側近の意見などおかまいなし。
門大統領は厳しい顔で言葉を続ける。
『前大統領も言っていただろう? 「独島を爆破してでも、日本には渡さない」……とな。私がそれを実行してやると言っているんだ』
ついに気が触れたと感じた側近は、心配そうな顔になる。
門大統領もそれに気付いたようで、自分の考えを教える。
『独島が無くなれば、また新たな境界線が引ける。多少は狭くなるが、それは日本も同じだ。そうなれば、独島に使っていた国費も、経済に回せるようになる』
『大統領……』
門大統領の発言は、先を見越した戦略だったと感動した側近は、「独島爆破作戦」を急ぐのであった。
* * * * * * * * *
食堂でお喋りをしていた半荘とジヨンは、荷物を抱えて基地の外へ出る。
「おっと、これを渡しておくな」
半荘はそう言うと、胸元からサングラスと耳栓を取り出してジヨンに手渡す。
「うるさくなりそうだから、しておくといいよ」
「耳栓はわかるけど、サングラスは何に使うの?」
「ミサイルの着弾する瞬間、見たくないか?」
「はあ!? 馬鹿じゃないの!?」
どうやら半荘は、ミサイルが着弾した瞬間、閃光を放つと思ってサングラスを装備しろと言っているようだ。
そんな現場を見たくないジヨンは罵るが、半荘は聞く耳持たず。
いそいそとライブ配信の準備をしている。
「だから……聞きなさいよ!」
すでに耳栓を付けていた半荘に、ようやく気付いたジヨンは肩を掴む。
半荘もいま気付いたようで、片方の耳栓を外してジヨンを見る。
「ん? もう配信してるけど、喋っていていいのか?」
「もう! これが終わったら覚えてなさい!!」
二人の痴話喧嘩はVチューブに乗ってしまい、視聴者から笑い声があがっていた。
「さてと……」
半荘は仕切り直すと、正式に開始の挨拶をする。
「いつもの開始は今回は無しな。あと、これが竹島から配信する最後の配信になると思う。ここからは、切れるまでノンストップでお送りするぞ~」
にししと笑う半荘の顔は、カメラが額当てに付いているので映し出されていないが、声の暢気さから緊張は伝わらない。
全世界の視聴者も、心配する声よりも動画が終わる事を残念がる声が大多数だ。
「韓国の、次の攻撃は何だろうな~? みんなは何だと思う?」
視聴者に聞いた半荘であったが、送られて来る書き込みが多すぎて、目を通せないでいる。
「あはは。たくさんの書き込みありがとう。では、正解を発表します。あ、クノイチさんは、サングラスとか付けて俺の後ろに隠れてな」
半荘が正解発表をしようとした数秒後、基地のある島の、隣の島が大爆発を起こして吹き飛んだ。
「正解は、ミサイルでした~」
半荘の暢気すぎる正解発表は、その衝撃的な光景の前に、世界中の視聴者から無視されるのであった。
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