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拾参 最終配信 其の二

82 竹島の巻き

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 その兵器は、韓国本土から火を吹いて飛び立ち、時速1000キロものスピードを出し、小さな島に向かっていた。
 作られた目的は、遥か遠くにある物を破壊するため……
 数年前まで弾頭に使われていた火薬は500kgだったが、アメリカとの協議で制限は無くなったので、1トンを超える火薬を乗せ、破壊力は倍増している。
 それほど強力な兵器が、竹島に連なる島に向かったのだ。

 兵器は島を視界に収めると、予め設定してあったGPSの目印の場所へと接近する。
 そうして岩山と接触した瞬間、轟音を響かせて周囲に熱を振り撒くのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 ミサイル着弾でこの世の終わりのような光景がVチューブで配信される中、視聴者は言葉を失う。

 だが、現場は別だ。

 ジヨンは暴風と熱風を浴びて悲鳴をあげるが、轟音によって悲鳴は掻き消される。
 そのジヨンより前に立つ半荘はと言うと……

「よっはっとう!」

 暢気のんきな声を出しながら、飛び散る岩山の破片を二本のクナイで捌いていた。
 しばらくして火柱が収まり、煙が晴れると、岩山の抉れた姿が全世界に映し出された。

「い、生きてる……」

 ジヨンは目の前の岩山よりも、自分の生に喜びを感じ、半荘は……

「うっわ……凄い威力だな。映像も凄かったんだろうな~。これで再生回数も増えるぞ~!」

 うん。仕事熱心なのはいいのだが、そんな喜び方をしていていいのか?

「もう! 死ところだったじゃない!!」

「ちょ、何するんだ」

 ほら。ジヨンにポコポコと叩かれてしまった。

 暢気な事を言っていた半荘はジヨンに叩かれてもビクともしないが、女性にそんな事をされた事が無いのでたじたじ。
 ジヨンに好きなようにさせてしまう。

 しかし、遊んでいる場合ではない。
 次なるミサイルが、いつ飛んで来てもおかしくない状況なので、半荘は叩いているジヨンの両手を掴んで止める。

「とりあえず、ここに居たら危ないから移動しよっか」

「う、うん……でも、この恨みは千年忘れないからね!!」

「生きてるんだから、もういいだろ~」

 怒り収まらぬジヨンに、半荘は情けない声を出しながら移動を開始するのであった。


 移動先は、島の日本側。
 ジヨンの足では辿り着けない場所なので、半荘が背負って岩山を掛け降りる事となる。
 当然ジヨンは「キャーキャー」叫んでいたが、耳栓ををした半荘には声は届かない。
 ただし、背中に感じる柔らかいモノは半荘の集中力を奪う。
 ヘタレなので、いつもより精細の欠く動きとなって、時間が掛かる事となった。


「なんか有り難う御座います!」

「なに言ってるのよ?」

 突然、感謝されたジヨンは首を傾げる。
 ジヨンの質問に、胸の感触を楽しんでいたとは言えない半荘は、慌てて話を変える。

「そ、そうだ! 日本に言う事があったんだ!!」

 またしてもジヨンは首を傾げる中、半荘は日本艦隊に向かって大声で叫ぶ。

「日本政府の人~! 契約通り、竹島はお返ししま~す!!」

 スマホを繋いで連絡せずに、半荘は一方的にVチューブに声を乗せた。
 その声は全世界に届き、この島は日本と韓国が各々呼び合っていた「竹島・独島」から名前が「忍びの国」に変わり、最終的には「竹島」と印象付けられたのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 半荘の声は、ライブ配信を見ていた総理官邸にも届き、阿保総理は会見の準備を急いで、あっと言う間にテレビの放送にて返答する。

「え~。日本政府の見解としまして、『竹島』は日本固有の領地でしたので、忍チューバーさんの独立宣言は容認していませんでした。ですが、和解によって、お互い納得いく結論に至り、現時刻を持ちまして、堂々と『竹島』は日本の領土と言わせていただきます。よって、韓国政府には、これ以上、我が国と国民を攻撃しないようにと、強く抗議させていただきます」

 阿保総理の会見は、ネットの民によって翻訳され、世界中に送られるのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 その会見は半荘にも届き、スマホで確認する事となる。

「門大統領! 聞いたか? この島は、日本国の竹島だ! 俺に攻撃すると言う事は、日本を攻撃する事だぞ!!」

 阿保総理と半荘の声は門大統領に届き、返答待ちとなるのであった。
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