忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~

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拾参 最終配信 其の二

80 ひと息の巻き

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 忍チューバーVS揚陸艦ようりくかんは、負傷者続出。
 揚陸艦に乗っていた韓国兵の、3分の2もが戦闘不能となり、忍チューバー大勝利で幕を下ろした。

 揚陸艦が猛スピードで韓国本土に向かう中、半荘は船尾から飛び降り、ダッシュで海を走る。


 ほどなくして竹島の港に辿り着いた半荘は、息を切らして大の字に倒れた。

「ゼーゼー……しんど~~~!!」

 苦しそうに息をする半荘に、視聴者は心配する声をあげていたが、心配する者は他にも居た。
 スマホの着信音が鳴り、半荘はゴソゴソと胸元を漁って通話にする。

「大丈夫か!?」

 電話の相手はもちろん東郷。
 第一声は心配する言葉であったが、用事はそれだけではないだろう。

「俺が疲れて動けないかの確認か? もう一度言うが、攻めて来たら船を沈めるからな」

「なわけないだろう。それなら戦っている内に、とっくに占拠してる」

「じゃあ……」

「要求は通った」

 東郷の声に、半荘はガバッと体を起こす。

「お~! 今回は嫌に早かったな」

「まぁ条件も、元々日本が韓国に要求していた事だしな。これで決着がつくだろう」

「そっか~」

「もう、上陸していいか?」

「う~ん……もう少し待ってくれるか? 嫌な予感がするんだ」

「嫌な予感……まぁお前の事だから当たるんだろうな。さっきも、わざと私達を近付かせないようにしたんだろ?」

「さあね~? さてと、もうひと働きしますか!」

 惚けながら立ち上がる半荘は、気合いを入れ直す。

「……絶対に死ぬなよ」

「誰に言ってるんだ。拙者は忍チューバー服部半荘だ! ニンニン」

 それだけ言うと、東郷から笑い声があがり、通話は半荘から切る。
 そして、Vチューブのライブ映像も、しばらく休憩と言って切ってしまった。


 そうして基地に戻ると、冷蔵庫を漁って水分補給。
 ゴクゴク飲みながら地下へ降り、シェルターの前に立つ。
 シェルターの扉は少し開いていたのでため息が出たが、基地自体に損傷は無かったので、ジヨンの行動をとがめる事はやめたようだ。

 半荘は、念のため決められたノックをしてから、シェルターの扉を開いた。

「お~い。寝てるのか~?」

 反応を返さないジヨンに声を掛けると、奥からゴソゴソと音が聞こえ、ジヨンが慌てて寄って来た。

「おかえり……て、私が言うのも変ね」

「またか。疲れて戻って来たんだから、普通に出迎えてくれよ~」

 前回も同じような事を言っていたので半荘は愚痴るが、ジヨンは笑いながら言い訳をする。

「あはは。だって、Vチューブで見させてもらってたから、無事だとは知ってたんだもん」

「けっこう大変だったんだぜ~」

「見てた見てた。この島に居なかったら、絶対応援してたわ」

 それからジヨンの感想を聞きながら基地に戻ると、食堂にておやつにする。
 ただし、半荘は動き回ってペコペコだったらしく、一食、丸々平らげていた。


 食事が終わると、食休みをとってから半荘は荷物を袋に入れる。
 それを見ていたジヨンは、何事かと質問する。

「何してるの?」

「何って……撤収の準備だ」

「撤収……ようやく独島から出て行く気になったのね」

「そんな言い方はやめてくれよな~」

 ジヨンの嫌みを聞いた半荘は、寂しそうな声を出した。

「てか、ジヨンが残りたいと言っても、強引に連れて行くからな」

「ふ~ん……そんなに私と離れたくないんだ」

「ちがっ」

「照れちゃって~」

 からかうジヨンに、半荘は真面目な顔で応える。

「たぶんこの島は、これから火の海になるぞ」

「え……韓国の攻撃は、あれで終わりじゃないの?」

「だといいんだがな。韓国の武器は、それだけでは無いだろう。それにトップは門大統領だぞ。これまで俺に何をして来たか知ってるだろ? 今度はミサイル撃ち込んで来るかもな。あははは」

 笑う半荘に、ジヨンはジト目で見る。

「また笑ってるよ……。いえ、いまは、急いで島から離れなきゃ!」

「まぁそうなんだけど、ゴムボートの準備ができてない」

「じゃあ、早く東郷さんに迎えに来てもらってよ!」

「そうしたいところだけど、時間も無いな」

「まさか……」

 ジヨンの不穏な考えは正解。
 半荘の耳には、飛翔物が飛ぶジェット音が聞こえているのであった。
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