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『マリー・アルメイダのその後の話④』

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恋というのは、本当に突然やってくる。
……私は、クリストフくんに恋をしている。プライドなんてちっぽけなものなんて捨てて、彼に告白してしまいたい。そう思ってしまうくらい、私は彼を好きになってしまった。


それは決して奢ってもらった、とかそんなのではない。……優しさや、彼との何気ない日常で、私は彼に惹かれていったのだ。
……彼のことを思うと心が温かくなる。今までの心地いい時間とはまた違う感覚に、私は戸惑いを覚えると同時に、どこか嬉しくなっていた。


学生時代に悪女として振る舞っていたことが嘘のように、今の私は恋する乙女化としている。
……でも、それは決して嫌な気分ではない。むしろ、私はこれからの未来に期待で胸がいっぱいだ。


嘘をつき、婚約破棄をされた女のことを笑っていたら、復讐され、婚約破棄をされた挙句、慰謝料まで払わされたし。


今思えばバカなことをしたな、と思う。…当時は、逆恨みをしていたけど、よく考えなくても、私が悪い、とそう思うぐらいには。


学生時代の自分が見たらきっと滑稽だと笑うだろう。……だって、あのときの私は控えめに言ってクズだった、と自負している。だからこそ、こうしてクリストフくんと出会って、恋を出来たのは、運が良かった。


「告白、したら……」


きっと、クリストフくんは告白を承諾してくれるだろう。……笑顔で受け入れてくれる未来があると思う。………多分。


「どうして、こんなに臆病になったのでしょう……?」


私の名前は、マリー・アルメイダ。学生時代に、レオナルド殿下やクラウスを騙した女よ!今更、庶民を虜にするなんて、造作もないことよ!


「……そうよ。私の美貌を持ってすれば……!」


自画自賛になるけれど、私は間違いなく美人だ。美しいと何度も褒められたし、自分でも自覚しているし。……ジール様は落とせなかったけども、クリストフくんは落としてみせる。……とゆうか、あの反応で私に惚れてない方が可笑しい話だ。


……故に私が告白したらきっと、クリストフくんは嬉しそうに頷いてくれる――と思う。…………うん。多分、きっと大丈夫なはず……大丈夫だよね?不安と期待で胸がドキドキする。……この私が、今更こんな気持ちになるなんて想像もしてなかったわ……。


「待っていなさい。クリストフくん……!必ず、必ず落としてみせますわ……!」


そう意気込み、私は早速行動を開始した。


△▼△▼


「いいところだね!マリーさん!」


笑顔のクリストフくんを見る。……私は今、クリストフくんと海にいる。告白するには、ロマンチックなスポットだとそう思ったから。


「そう――ですね」


クリストフくんに同意をしつつ、私は考える。……さて、どうやって告白しよう?さりげなく?それとも、ロマンチックに?……それとも――。


候補はたくさん上がってくる。……だけど、私は最終的にどう告白するか決めた。……ちょっと、ズルいけど……仕方ないわ!だって、ロマンチックな告白なんて私には出来そうにないもの! 海を眺めながら、私は覚悟を決めてクリストフくんの方を見る。
そして、口を開き――。


――ザブーーンッ!!!と、盛大な水飛沫が目の前から上がってきた。……へ?と唖然とする私に、目の前の人物はニコニコと笑いながら口を開く。


「冷たいねぇ!マリーさん!」


「え……あ、はい……そ、そうですね……」


「さぁ!泳ぐぞー!!」


「……え?」


私は目をパチクリとさせた。今、クリストフくん何て言った……?聞き間違いでなければ、遊ぶとかどうとか……いや、海なんだから遊ぶのは当たり前。……でも、遊ぶって……とゆうか……


「あの……水着は?!」


「俺は加護があるから必要ないよ!」


「加護って……!?」


加護って神に愛されたものしか与えられないものなのよね?!貴族でも、一部の人にしか与えられない……そう聞いたわ! じゃあ、クリストフくんはその〝一部の人〟に入っていると?


とゆうか、加護なんて、百年ぐらい見つけてないし。――水着なしで泳げる加護って何なの?変じゃない?


「……水避けの加護が付いているんだ」


不意に、クリストフくんがそう言った。……水避けの加護って何?文字通り水がクリストフくんを避ける加護ってこと?何それ……?


「ま、そんなもん、どうでもいいんだよ。俺の手を取って」


そう言ってクリストフくんは手を伸ばす。……私に向かって。戸惑った。だって、この手を取ったら――。


「ぬ、濡れますよね?私……その加護持ってないし」


「大丈夫!俺の手を繋いだら濡れないから!」


そう言って私の手を握るクリストフくん。それに対し、私は……


「う……わ、わかった……」


と、答え、私はクリストフくんの手を握った。
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