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第116話

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 今後の方針も決まり脳筋の俺がやる仕事は落ち着き暇ができてきた。そこで俺は鍛冶工房にやってきた、ちなみにここも再建築を受けて立派な工房に生まれ変わっている。
「旦那、教えてもらった新しい武器なんだがやっぱよくわからねぇ技術が使われてて再現できねぇな」
「あぁ、やっぱ火薬ですよね?」
「ワシらもマリエール嬢ちゃんから聞いて発火の性質を持つ黒砂は知っておりましたが、それを使った武器なんて考えもしなかったんでね」
 ガンプは頭を掻きながらそう語る。実際この世界には魔法が存在しているため研究も魔法が前提で進んでいく、早い話が地球のように科学が発展していかないのだ。
「主様の言う火薬っていう物の性質は理解できたんですけど圧力を受けると発火する物、その熱を受けて爆発を起こす物を組み合わせるというのがわからなくて……」
「俺も詳しいことはわからないんだけどそう言う物を利用して鉛の弾を撃ちだす武器があったんだよね」
 察しのいい人はわかったかもしれないが俺が暇つぶしにガンプやマリーと作っている物、それは銃弾である。早い話が俺達は地球の現代兵器、銃を作ってみようとしているのだ。
「魔法や魔力に頼らない武器というのに興味がありましたけど、やっぱ工程がめんどくさいし手間ですね」
「武器自体は試作品もいくつか作っているが、消耗品の弾を作るのにこんな手間がかかるとはなぁ」
 マリーとガンプを中心に職人達は頭を抱えていた。まぁ異世界転生のお話で現代兵器が無双するのはよくあるんだけど、正直作るのが手間すぎる……そもそもド素人に作れる代物じゃないし弾薬なんて機械で大量生産するのが大前提、その機械装置が無いこの世界ではコスパが悪すぎる。正直遠距離攻撃はファイヤーボールなどの消耗の低い魔法を連射すれば代用できてしまうのもあって微妙な印象みたいだ。弓も魔力付与で自在に操れるし曲射ができるという利点があるのもマイナス点であり弾速や威力も魔法によるブーストで解決してしまう。話を聞く感じ勝るのはアサルトライフルなどの連射性くらいだろうか? 一定の威力を発揮してそれを銃身の破損、もしくは弾が続く限り最速で連射可能という点だけみたいだ。
「確かに魔力を消費しない、威力のある遠隔武器っていうのも利点はあるんですけどねぇ」
「この武器自体、作るのはそこまで難しくねぇんだけどなぁ」
「元々ある程度現場での組み立て分解を想定してるみたいなのでどの形状の物も簡易な構成ですよね」
 ちなみに俺は既に置いてけぼりになりかけている。ハンドガンからアサルトライフル、スナイパーライフルまでいろんな銃を調べて教えてみたがここまで分析されてるともう知識量で負けている感がすごい。
「あの~私、話聞いてて思ったんですけど」
 そんな話をしているとアリッサがひょこっと顔を出してきた、何か思いついたのかな?
「私も設計図とか見せてもらって考えていたんですけど、別にこれ通りに作らなくていいんじゃないですか?」
「ん?」
「どういうことだ?」
「これって早い話が魔力や魔法が無いことが前提の武器であってそれがあるならその技術を組み込んじゃえばいいと思うんですよね」
「こいつにか?」
「ちょっと見て欲しいんですけど」
 アリッサはそう言うと持ってきた紙を机に広げていく、どうやら設計図のようだ。
「魔導銃?」
「はい、ルーン魔法で術式を刻み込んで。魔法の詠唱、硬直を短縮。消耗を押さえて銃の弾薬の確保という燃費の悪さを解消しつつ一定の威力をキープできる少し器用貧乏かもしれませんが魔法と銃の弱点を無くしたいい武器になると思うんですよね」
「なるほど、これなら問題点は全部解消されてるな」
「弾の代わりにルーンを刻み込んだクリスタルを装填して状況に応じた魔法を弾丸として発射するんですね、私みたいな研究者の護身用にすごくいいかもしれません!」
「旦那! 方針を魔導銃に変えて再設計してもいいか?」
「いいよ、俺が言った銃より面白そうだし完成楽しみにしてるよ」
「おう!」
 すごくいい顔してる。こんなのダメなんて言えないじゃん、それにしても魔導銃ねぇ……こっちの世界に合わせた銃、面白いものができそうだなぁ。考えてみればファンタジーの武器らしくてめっちゃいいじゃん!
「あ、旦那!」
「ん?」
「作成のために鱗とかが欲しいんだがぁ……」
「あぁ了解、今度用意しとくよ」
「主様ありがとうございます!」
 竜の素材って本来高級なんだけど、ここだとホントに石や鉄みたいに使ってるんだよなぁ……確かに剥がしてもご飯食べて寝てればすぐ生えてくるけど結構痛いんだよ? 生活が豊かになるし需要があるからあんま気にしてないけど。
「じゃあ試作品楽しみにしてるよ!」
「おう! 期待しててくれ!」
 そろそろ春も終わりそうだけど、今年も楽しい一年になりそうだなぁ。今年こそほのぼのスローライフができますように、ちょっとフラグかな? とか思いつつ余った時間で農作業の手伝いに向かったのだった。
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