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46. わたしは恐れない

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「………お兄さま、司祭さまが到着いたしました。彼らをさっさと荷馬車で鉱山に送ったらいかがでしょうか。」

 冷たい殺気に覆われた兄に対して、わたしはにこやかに話しかけた。わたしがとっている行動は命知らずで、先程わたしを本気で殺そうとしてきた人間に対してする態度ではないだろう。

「……おまえの意見など必要ない。それとも、さっき従者であるジェフリーそいつに救われた命を無駄にして殺されたいのか。はっ、とんだ犬死だな。」

 ピリピリとした殺気が増幅して体に震えがほとばしる。

 けれど、ここで血祭りを開くのはあまりによろしくない。ここは身を挺してでも、止めるべきだろう。

「……死にに来たわけではありません。ただ、お呼びしに来たのです。
 ……で、お兄さまはそいつらをいかがする気なのですか?」
「……それを聞いてどうする気だ。」
「……いえ、ただ殺してしまうのは勿体無いので、労働させたらどうかと思っただけですよ。」

 わたしは強ばる身体を叱咤して提案をする。
 後ろから漂うジェフリーの安心できる柔らかな気配に縋っているのはわかっているが、それでもわたしは半分は自分の力でお兄さまの前に立てている。
 先程よりは大きな進歩だ。

「……こんなのは殺してしまった方がいい。」
「っ、」

 冷酷な声には拒絶のみが含まれていた。

「……殺してしまわれては、それで終わりではないですか。」

 ここでこの会話を行い始めてから、初めてお兄様の表情に変化が現れた。
 ただ、目が細められることによって、目力が強くなって、威圧感が増しただけだが。

「………何が言いたい。」
「……彼らにとって死ぬよりも辛い処罰を与えるべきだと申し上げているのです。」
「…………。」

 でも、わたしもここで怯まない。
 怯んでなんかあげない、なんなら優雅に笑ってあげる。こちらはお母さまの所為で殺気にはある程度普通の子供よりも慣れているもの。

 先程殺そうとしてくれたお礼に、正々堂々真っ正面から痛い提案をしてやるんだから!!

「……プライドがお山のように高い彼らに労働をさせることは、心を折るのにぴったりだとは思いません?」
「……だからこいつらを鉱山に送れと、おまえはそう言うのか。」

 見つめられるだけで感じる威圧感は、意識しなければ呼吸を忘れさせられる。

 やっぱりこの男の前に立つのは危険だ。

「……はい、ずっとそう申しています。」
「……はぁー、今回だけはおまえの思惑に乗ってやろう。次はないと思え。」
「……ありがとうございます。」

 これにて一件落着と言ったところかしら。

 ちゃんとお兄さまに提案、できていたよね………?

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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