48 / 117
47. ジェフリーはわたしの願いを聞かない
しおりを挟む
「……司祭殿はどこにいる。」
「……入り口のところでお待ちいただいています。」
お兄様は質問に答えたわたしに対して何も言わずに、踵を返してわたしの前から去っていった。
本当に失礼な人だ。
「ついて行かないのですか?」
「……むぅー、ちゃんとついて行くわよ。」
肘で小突いてくるジェフリーに答えながら、わたしは罪人たちには一瞥もくれずに、お兄さまの後に続いた。
………歩くのが、早い。
ドレスワンピースでも見苦しくないギリギリのペースで必死になって歩いても、どんどんお兄さまとの距離が空いていってしまう。
この男は、否、お兄さまは人のペースを考えるということができないらしい。もしも人のペースを考えるということができるのであれば、わたしには興味がない、もしくは、わたしが捨て置くレベルの人間でしかないということだ。
うん、むかつくから人のペースを考えることができないということにしておこう。
「お嬢様、もう諦めましょう。」
「………。」
「お嬢様。」
「……うぅー、分かったわ。」
わたしはお兄の後ろをついていくのを諦めて、歩くペースを普段のペースに戻した。
「……ねぇ、ジェフリー。あなただけならお兄さまの歩くペースに問題なくついていける?」
「う~ん、正直キツイと思いますね。そもそも足の長さが違いますし。それにしても、公爵閣下は誰かさんと違ってとても背が高いですね。」
先日わたしの身長を追い越したジェフリーは、自分よりも僅かに背が低くなったわたしに視線を向けながら言った。
最近背があまり伸びなくなってしまったことを気にしている主人に対してする態度ではない気がする。
「気のせいではないでしょうか。」
「……主人の心を勝手に読んだ挙句、それに対する返答をしないでくれるかしら?」
「………。」
ジェフリーは嫌なことには頷かない。
だから、ここで頷かなかったということは、わたしの願いを聞き入れる気はないのだろう。
わたしはジェフリーに気がつかれないように密かに溜め息を吐いた。
「私は主人に対しては嘘をつかない主義ですので。」
「……そう。」
唐突に彼が発した言葉は、先程のわたしの願いを聞き入れる気はないという拒絶の内容だった。
「ですが、私のご主人様は私によ~く悪戯を仕掛けてきますので、そんな時はよく嘘を吐いていますよ。」
「……聞き捨てならない言葉ね。」
「わざと言っていますから~。」
ヘラヘラと軽薄に笑う彼は、おそらく緊張気味なわたしを気遣っているのだろう。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「……入り口のところでお待ちいただいています。」
お兄様は質問に答えたわたしに対して何も言わずに、踵を返してわたしの前から去っていった。
本当に失礼な人だ。
「ついて行かないのですか?」
「……むぅー、ちゃんとついて行くわよ。」
肘で小突いてくるジェフリーに答えながら、わたしは罪人たちには一瞥もくれずに、お兄さまの後に続いた。
………歩くのが、早い。
ドレスワンピースでも見苦しくないギリギリのペースで必死になって歩いても、どんどんお兄さまとの距離が空いていってしまう。
この男は、否、お兄さまは人のペースを考えるということができないらしい。もしも人のペースを考えるということができるのであれば、わたしには興味がない、もしくは、わたしが捨て置くレベルの人間でしかないということだ。
うん、むかつくから人のペースを考えることができないということにしておこう。
「お嬢様、もう諦めましょう。」
「………。」
「お嬢様。」
「……うぅー、分かったわ。」
わたしはお兄の後ろをついていくのを諦めて、歩くペースを普段のペースに戻した。
「……ねぇ、ジェフリー。あなただけならお兄さまの歩くペースに問題なくついていける?」
「う~ん、正直キツイと思いますね。そもそも足の長さが違いますし。それにしても、公爵閣下は誰かさんと違ってとても背が高いですね。」
先日わたしの身長を追い越したジェフリーは、自分よりも僅かに背が低くなったわたしに視線を向けながら言った。
最近背があまり伸びなくなってしまったことを気にしている主人に対してする態度ではない気がする。
「気のせいではないでしょうか。」
「……主人の心を勝手に読んだ挙句、それに対する返答をしないでくれるかしら?」
「………。」
ジェフリーは嫌なことには頷かない。
だから、ここで頷かなかったということは、わたしの願いを聞き入れる気はないのだろう。
わたしはジェフリーに気がつかれないように密かに溜め息を吐いた。
「私は主人に対しては嘘をつかない主義ですので。」
「……そう。」
唐突に彼が発した言葉は、先程のわたしの願いを聞き入れる気はないという拒絶の内容だった。
「ですが、私のご主人様は私によ~く悪戯を仕掛けてきますので、そんな時はよく嘘を吐いていますよ。」
「……聞き捨てならない言葉ね。」
「わざと言っていますから~。」
ヘラヘラと軽薄に笑う彼は、おそらく緊張気味なわたしを気遣っているのだろう。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。


新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。

わたしはただの道具だったということですね。
ふまさ
恋愛
「──ごめん。ぼくと、別れてほしいんだ」
オーブリーは、頭を下げながらそう告げた。
街で一、二を争うほど大きな商会、ビアンコ商会の跡継ぎであるオーブリーの元に嫁いで二年。貴族令嬢だったナタリアにとって、いわゆる平民の暮らしに、最初は戸惑うこともあったが、それでも優しいオーブリーたちに支えられ、この生活が当たり前になろうとしていたときのことだった。
いわく、その理由は。
初恋のリリアンに再会し、元夫に背負わさせた借金を肩代わりすると申し出たら、告白された。ずっと好きだった彼女と付き合いたいから、離縁したいというものだった。
他の男にとられる前に早く別れてくれ。
急かすオーブリーが、ナタリアに告白したのもプロポーズしたのも自分だが、それは父の命令で、家のためだったと明かす。
とどめのように、オーブリーは小さな巾着袋をテーブルに置いた。
「少しだけど、お金が入ってる。ぼくは不倫したわけじゃないから、本来は慰謝料なんて払う必要はないけど……身勝手だという自覚はあるから」
「…………」
手のひらにすっぽりと収まりそうな、小さな巾着袋。リリアンの借金額からすると、天と地ほどの差があるのは明らか。
「…………はっ」
情けなくて、悔しくて。
ナタリアは、涙が出そうになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる