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13. わたしはキレる

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「ジェフリー、そこまでにしなさい。」
「……承知いたしました。」

 ジェフリーはしぶしぶといった様子で頷いた。けれど、ずっと彼の側にいて、ずっと彼を見てきたわたしには、彼にはわたしの言うことを聞く気はないと、簡単に分かった。彼はここにいる全員を怒っていると。許す気はないと。拍子抜けするくらいに、簡単に分かった。

「えーっと、そこのあなたたちもわたしの従者の躾がなってなくて悪かったわね。彼にはわたしからしっかりと言い聞かせておくわ。」
「ーー、承知いたしました。」
「レティシア嬢にはなにも思っていません。……クソガキ!あとで覚えてろよ!!」

 父親の方は思ったよりも簡単に引き下がった。簡単すぎて逆に不気味だ。要警戒する必要があるだろう。
 だが、今対応すべきは問題児な息子の方だ。わたしに許可を取らずに勝手に名前を呼んだ挙げ句、わたしの大切な従者を侮辱した。ならば、ここでわたしのすべきはこの青年を徹底的に、完膚なきまでに、社交界に2度と出れないまでに、わたしのでき得る全てを総動員して、潰すことだ。

「……覚えていなければいけないのはあなたの方よ、ご令息。これほどまでの無礼を働いておいて、わたしの従者をクソガキ呼ばわり?………、ふふふ、笑止千万ね。」
「レティ、シア嬢?」

 唐突に傲慢で尊大な態度に変わったわたしの姿に、青年はわなわなと震えてわたしの名を、その不愉快極まりない声で呼んだ。

「今時、“覚えてろよ!!”なーんてとっても安っぽいセリフを本当に吐くお馬鹿さんを見たのは、わたし、初めてだわ。本では吠え面をかきながら必死に逃げていく弱ーい敵が面白くて気に入っていたセリフだけれど、実際に言われると、びっくりするぐらいに不愉快極まりないわね。やめてくれる?」
「んな!れ、レティシア嬢!?」
「あぁ、あと、あなたに名を呼ぶのを許した覚えはないわ。」

 わたしは追い討ちと言わんばかりに礼儀作法について文句を言った。
 社交界では下の者から上の者に話しかけてはいけないのと、名前を呼ぶのは上の者に許された特別な者だけというのは常識だ。

「あ、う、…っマイグレックヒェン公爵令嬢、どうか、お許し、ください。」
「……いいわよ。そういえば、あなたはだぁれ?」
「えっ!?」

 屈辱的な思いによってぐぎぎという歪んだ表情を浮かべた青年は、微笑んで質問したわたしに、頬を赤く染めて驚いた顔を返した。
 ………ベールの間からでも、ある程度は表情を読めてしまうのね。

 わたしは表情を一切動かさずに溜め息を吐いた。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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