冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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12. 頼れるジェフリー

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「次期公爵閣下はいらっしゃらないのですね。」

 どこのどなたか存じ上げない、ここにいる者たちのリーダー格であろう恰幅の良い男が、気持ちの悪い卑下た笑みを浮かべて話しかけてきた。
 それを皮切りに会場内はざわざわとわたしを、わたしたちを、マイグレックヒェンを見下す声を上げ始めた。

 気持ち悪い……。

 声を出さなかっただけ偉いと思えるくらいに本当に気持ちの悪い男だ。
 男の後ろには妻らしき、病的なまでに細い女と、気持ちの悪い男にそっくりな笑みを浮かべた、普通過ぎるほどに普通で、掴みどころのない平凡な容姿の、わたしより10歳ほど年上の青年が立っていた。

「こんなにも美しい娘を放っておくなんてどうかしています。」

 息子の青年の方がやれやれと肩をすくめながらわたしの方に歩いてきた。そして、あろうことかわたしの耳元で「私なら、ずーっと側に置いて可愛がって差し上げますのに。」とニヤリと笑って呟いた。
 ゾワっと鳥肌が立つのと同時にジェフリーが気持ちの悪い男の息子とわたしの間にパッと出て来て、青年の視界からわたしを遮った。

「……ぁ。」
「大丈夫です。お嬢様、大丈夫。」

 ジェフリーは腕を抱くわたしの背をゆっくりと撫でて耳元で優しく囁いた。

「な!?貴様!私が話しているのになにをする!!」
「……はぁー、お嬢様は私以外のあなた方のような男性を苦手としています。分かったのならば、とっとと失せてください。」

 ジェフリーは面倒くさそうに殺気を纏って男を睨みつけつけながら、猛獣のように目を細めた。

 実際わたしはこの男たちのような卑下た男性が苦手だ。けれど、今ここでこれは明かすべき秘密では無い。わたしを生け贄にした人間たちや、ここにいる人間に知られていていい秘密では無い。

 だが、ジェフリーはわたしが声をあげようとすると、わたしのくちびるにふにゃりと人差し指を優しく当てた。まるで、『ここは任せて』と言っているかのようだった。今のわたしは震え上がってまるで声があげられるような状態では無い。ここはジェフリーに任せるのが得策だ。けれど、今日のわたしは覚悟を決めたにも関わらず、彼に任せてばかりだ。

「おまえ、よくもこの私に失せろなどと……!!」
「………。」

 それに、わたしの所為で修羅場になってしまった。
 どうしよう……、とくちびるを噛み締めて手を握りしめてこの場を静観していると、ジェフリーがこちらを僅かに振り返って、くちびるだけで『叱れ』と言った。
 わたしは静かに目を見開いてやっとのことで彼の意図に気がついた。
 そして、彼の作った機会を無駄にしないように意を決して真っ直ぐと気持ちの悪い男たちを見据えた後に、ジェフリーをみて口を開いた。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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