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79 皇女は語る

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 セレスティアは虫唾の走る内容がびっしりと書いてある1冊目の書類の内容をを思い出し、ぐっと眉を寄せた。悪行や悪逆非道などと言う言葉では生やさしいと感じる書類には、吐き気を覚えるほどの内容が長きにわたって記されていた。そして、それはあくまで他人が見ている前での行動でしかないことを思い出し、他人が見ていない時はどうだったのかという疑問を覚え、そして身体に震えがで始めたところで思考を停止した。

(考えるべきではないな。………わたしには重た過ぎる)

 家族には比較的恵まれていたセレスティアは、戦場での惨い記憶で呼び起こされた血みどろの惨状を顔を小さく左右に振ることで頭の端に追いやった。

(いくらなんでも家庭内であんなことが起こっていたはずはない)
「報告書は上がっているこの状態で彼女を巻き込ませるというのであれば、わたしはそれを許さない。もしそれでも駄々をこねるのであれば、今この場でお前がやっていたことの一端を話して多数決を取っても良かろう」

 それくらいの事をしていたということに気がつき、会場内の貴族はグートハイル男爵を睨みつけた。

「………グートハイル夫人についても同じ処置を取らせてもらう」
「………………」

 1度も社交界に出たことのない病弱だと有名な夫人が、実際には病弱ではなく監禁されているとセレスティアが暗に言えば、会場内から向けられる男爵への視線は尚の事鋭いものとなった。

「では、これを踏まえた上で断罪を始める。衛兵、縛り上げろ」

 セレスティアは冷酷な声音で顎をしゃくった。指示を受けた騎士はなんの躊躇いもなく、侮蔑の籠った視線で男爵家の人間を睨みつけながらわざと強くギチギチに縛り上げた。

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