召還社畜と魔法の豪邸

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第三十一章 究極の先へ、賑やかに

すーぱーこんぴゅーたー

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 サムソン主導の研究。屋敷地下にある超巨大魔法陣の研究は、新しい段階に入った。
 オレ達が赤い手帳……ウルクフラの研究資料から、超巨大魔法陣の設計図を手に入れて3日。
 広間でオレと同僚達は、サムソンから途中経過の報告を受ける。

「超巨大魔法陣は、究極を超えた究極ってやつを目指して作った魔法陣らしい」

 サムソンが作った資料を見ながら、彼の説明を聞く。
 魔法の究極を超える魔法。ウルクフラの考え通りなら、叶える願いに限界はないらしい。
 黒本にあった魔法の究極と違い、願いを送る対象が高速移動しているため、魔法陣が巨大な物になったという。
 願いを送る対象に、道を作り、その道を通じて願いを送る。
 イメージ的には、高速移動している車にフック付きロープを括り付けて、設置したロープを使って荷物を送り込むようなものだ。
 高速移動している対象に願い……つまりデータを送る事から、いろいろな問題が発生している事もわかった。
 ただの魔法の究極に比べて、データの破損が大きい事、実行するために莫大な魔力を使う事。特にこの2つに苦しんでいたようだ。

「でも、サムソン先輩の予想では、未完成なんスよね?」

 サムソンが説明を続けるなか、資料に目を落としたままプレインが口を挟む。
 いうとおり資料に書いてある。

「あぁ、究極を超えた究極は未完成に終わったと思う。一番の壁は、データの破損みたいだ。それで、作りかけの魔法陣を流用して、何か別の魔法を作った」
「それで……3つめの塊を調べる方針って事?」

 ミズキが資料の最後に書いてある事を口にする。
 あの超巨大魔法陣は、大きくわけて3つの部分から成り立っている。
 その全てが、プログラム言語にコンバートが出来ていて、今は個別に解析している状況だ。
 サムソンは3つめの塊を解析すれば、あの超巨大魔法陣の正体が解明できると断言している。
 ぐちゃぐちゃのプログラムで書いてある3つめの塊を、解析すれば……か。

「そうだ。最初の塊は、究極を超えた究極の基礎部分。2つめの塊は、魔法の究極のアレンジバージョン。そこまでは設計図を見てわかった。だけど3つめは設計図には無いんだ。おそらく、急ごしらえで書き加えたものだと思う」
「でもさ、そんな事せずに、この究極を超えた究極を作っちゃえばいいんじゃない?」
「それが出来ればベストだが……ウルクフラ氏の越えられなかった問題を解決できると、断言できない。それにパソコンの魔法の処理能力もある。巨大な魔法陣2つを平行して研究できないと思うぞ」

 確かにそうだ。パソコンの魔法の処理能力は、魔力に依存する。オレと同僚達の魔力を合わせたとしても、現状では超巨大魔法陣を言語的に問題ないかシミュレーションするだけで10日以上を要する。
 魔導具の開発、他の魔法を研究するためにも余裕が必要だ。
 現状、魔力が不足し2つを同時に進められない。

「それなんですが、ノアちゃんの魔力を使えそうなんです」

 そこにカガミが、画期的な事を言った。
 ノアの魔力は、パソコンの魔法に使えない。呪い子の持つ魔力特有の歪みが、魔力の貯蔵やパソコンの魔法に向かないのだ。
 それが可能になれば、莫大な魔力を開発に使えることになる。
 魔力に処理速度を依存するパソコンの魔法が、純粋に高速化できるのだ。

「やったじゃん」
「どういう仕組みでカガミ氏は進めるつもりなん?」
「糧食創造……カロメーを作る魔法ですけど、あれって、ノアちゃんでも問題なく使えますよね?」
「そういや、そうだな」
「ああいった、特に安全な実行が大事な魔法って、魔力を浄化する仕組みが備わっているようなんです。それで、分解して、魔力を浄化して整理する部分のみを取り出すことができました」

 なるほど。まず魔力の歪みを取り除くか……。
 カロメーの魔法は盲点だった。

「だったら、カガミ氏のアイデアを先に実行しよう。パソコンの魔法をパワーアップってのは、どう考えても最優先だ」
「そうっスね」

 早速、すぐに屋敷に備え付けたパソコンの魔法の強化にとりかかる。
 正確には、魔力の貯蔵庫を増設し、パソコンの魔法と接続する仕組みを強化する。
 パソコンの魔法を使う度に、ノアを拘束するわけにはいかない。
 そういうわけで、魔力の貯蔵庫にノアの大魔力を流してもらい、それをパソコンの魔法に使用する。
 魔力の貯蔵に使う魔導具は、触媒に進化した遺物……元の世界から持ち込んだ小銭を使う。
 普通の魔導具に使う仕組みより、桁違いの魔力を貯めることができる魔導具。
 同僚達と一気に作りあげた貯蔵の魔導具が、壁に並ぶ。
 これだけあれば大丈夫だろうと、思い切って大量に作った。
 作りあげた魔導具を眺め、ミズキがパンパンと手を叩いた。

「じゃ、ノアノアを呼んでくるね」

 そう言って彼女は部屋から出て行く。
 さきほどチラリと聞こえた声から、ハロルドと庭で稽古しているはずだ。

「ちなみに、これが満タンになったら、どれくらいパソコンの魔法って早くなるんスか?」
「どのくらいのペースで使うかによるが……1日で使うとすると、1000倍以上は堅いと思うぞ」
「凄いっスね」

 そして、程なくしてノアがやってくる。予想どおりというか、呪いが解けてオークの大男になったハロルドと一緒だ。
 それからカガミの説明を受けて、床に描いた魔法陣の上に立って詠唱を始める。
 詠唱が終わると空中に、取っ手の付いた壺が出現した。
 ノアが壺を手に取って、カガミに言われるまま傾ける。キラキラと淡く輝く緑色の液体が床に落ちる。
 床に落ちた液体は、すぐに消える。

「ノアちゃん、少しでも疲れたら壺を傾けるのを止めてね」

 優しくカガミが伝え、ノアがコクリと頷く。
 壺からは緑色の液体が止めどなく流れる。カガミが言うには、視覚的な効果で見せているだけで、ただの幻らしい。壺を大きく傾けると一度に大量の魔力を供給する仕組みだとか。
 屋敷の防衛施設などに備わっている魔力供給システムに比べると随分と優しい。
 あっちは強制的に限界ギリギリまで魔力をもっていくからな。

「ノアノア、腕疲れない?」
「大丈夫」

 突っ立って眺めるのに飽きたのか、ミズキが落ち着きのない様子でノアへと尋ねる。
 ノアは余裕そうだ。たまに大きく壺を傾け、すぐさま戻したりして、流れる落ちる様子が変わる事を楽しんでいる。

「ストップ! ストップっス! ノアちゃん、壺を傾けるのを止めて」

 のんびりとした状況をボンヤリと眺めていたら、プレインが突如大声をあげた。
 ノアがビクリとして壺の口を真上に向ける。
 そして、プレインが大声をあげた理由にすぐ気がついた。
 大量に作った魔力の貯蔵用魔導具……棚に並んだソレが全て、緑色に変色してキラキラと輝いていた。
 全く疲労せずキョトンとした表情のノアを見て、圧倒的な魔力量を改めて思い知る。

「どうする?」
「もっと強力なのを探すか……あっ、ノアちゃんが失敗したわけじゃないぞ」

 ノアが困った顔になったのを見て、慌ててサムソンが弁解する。
 とりあえず、魔力は完全にクリアだ。
 この調子なら、毎日パソコンの魔法をぶん回しても問題無いだろう。

「ノアノアのスーパーコンピューターって感じだよね」

 ズラリと並ぶ満タンになった魔導具を見て、ミズキが笑う。
 確かにそうだよな。速度1000倍以上……パソコンが、スーパーコンピューターになった感じだな。
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