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第六章 進化する豪邸
こしばい
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帰りも馬車で送ってくれるらしい。
入れたり尽せりだ。
メイドさんに、馬車の中で待っていてほしいといわれる。
屋敷にもどって、詳細が決まるまで待機だ。
これからどうしようかと考える。まずは、皆に報告だ。
それから……。
「さすがねぇ、リーダわぁ」
物思いにふけっていると、スルリと馬車の壁を抜けてロンロが入ってきた。
「何処に行ってたんだ?」
「領主の部屋でぇ、何を話しているのか聞いてたのよぉ」
「解決したってのに、どうして?」
「だってぇ、急に領主様が全部引き受けるってぇいうからぁ、怪しいと思わないのぉ?」
確かに、建前が云々と言っていたのにもかかわらず、いきなり前向きに何でもやるって感じになっていたな。
「確かに怪しいかもね」
「もぉう、そんなこと言って。全部リーダの策略なんでしょぉ、領主様も言っていたわぁ」
策略? 何言っているのだろう、こいつ。
「何の話?」
「あの温泉は、おそらくテストゥネル相談役が、呪い子に渡した報酬の一種だ」
いきなり、ロンロが声音を変えてしゃべりだした。
「あの、ロンロさん?」
「もぉう、領主様の真似してるんだからぁ。黙っててぇ」
領主の真似なのか、いわれてみると結構似ている。
ロンロは声音を変えたまま話を再開する。
「だが、温泉は国王の物だ。発見者でなくな……リーダは、ロウスの法律で当初考えていたのだ。だから発見者である自らが所有者になれると考えていた」
「なるほど、それでリーダは、私に発見者である自分達が温泉の所有者だと言ったのですな」
今度は、ヘイネルさんの声音だ。
すごい。こいつこんなに芸達者だったのか。
「小芝居がうまくて驚くよ」
素直に賞賛する。
「もぉう、黙ってて」
オレが褒めたにもかかわらずロンロは憤慨したような声をだした。
「テストゥネル相談役もそのつもりだったのだろう」
今度は領主の声だ。この小芝居はまだまだ続くのか。
「なるほど。ですが、ヨラン王国では仕組みが違う。呪い子に温泉を与えるには、もう一手、必要になった……ということでしょうか」
今度は、ヘイネルさんの台詞……と。
「そうだ。それで、ギリアの絵だ……、つまりテストゥネル相談役は、私に、これで便宜を図れといっているのだ」
すごい勘違いだ。
まぁ、別に勘違いにしろ、オレ達は温泉の所有権を得られるから問題ない。
「なるほどね」
「ふふぅん。龍神テストゥネルのプレゼントだと上手く思わせて、温泉を自由につかえるようにするなんてぇ、やっぱりリーダはすごいわぁ」
成り行きをそんなに褒められても困るが、悪い気はしないのでハイハイと適当に相づちを打っておく。
あとでノアにも教えてあげるらしい。
あんまり尾ひれつけて話さないでねと、一応釘を刺しておく。
長々と待たされたあと、エレク少年がやってきた。彼が、屋敷までの御者をしてくれるらしい。
それに護衛の兵士2人。
「ヘイネル様が同行する予定でしたが、急用ができたとのことで私一人です。道中よろしくお願いします」
そんなことをエレク少年は言って、早速馬車を走らせた。
ヘイネルさんに急用ができたと聞いて、ヘイネルさんに対応丸投げしたんじゃないかと思ったが、領主が急ぎ王都へ向かうことになったので留守番だそうだ。
広めの馬車にはオレが一人乗って屋敷へと戻る。
今日のエレク少年は、馬車の御者をしてこともあって無言だった。
「おかえりなさい」
「先輩、どうでした? うまくいったっスか」
屋敷について、馬車と兵士が城への帰途についたと同時に、屋敷からノアとプレインが駆け寄ってきた。
笑顔で交渉がうまくいったことと、詳細は後日になることを伝える。
「よかったね。ミズキお姉ちゃんも、カガミお姉ちゃんも大喜びだね」
「さっそくバルカンに報告するっスね」
それから広間で、他の皆と遅めの昼食をとりながら今後の話をした。
「俺は温泉を温める方法を探す。いくつか絞れたんで、今日から実験だ」
「何か手伝おうか?」
「嫌、今はいい。もう少ししたら皆にも手伝って貰うことになる。当面はまかせてもらうぞ」
サムソンは、楽しげに、そして自信たっぷりと言った調子で進捗を説明したあと部屋から出ていく。
オレよりも少しだけ早く屋敷に帰ってきたカガミは、ミズキと一緒にイザベラの所で習ったことの復習をしたいそうだ。
「温泉のこと任せきりにして、申し訳ないと思っています」
「そんなことないさ。カガミの情報で一気に事を進められた」
「そうですか。なら、良かったです」
「特に温泉のためにすることもないか。んじゃ、ドレスとお金のため……がんばんないとね」
自分に言い聞かせるように、ミズキはぼやきカガミと一緒に行動することを決め、二人で部屋から出て行った。
「ボクは何しようかな、先輩は何かするんスか?」
正直なところゴロゴロしようかと思っていたが、皆が何かに一生懸命なところで寝るとは言いづらい。
温泉の準備は、サムソンとバルカンが進める。
オレは領主からの連絡があるまで急いでやることもない。
「うーん。どうしようかな、ノアは何かしたいことある?」
「あのね。お勉強するの。魔法の」
勉強か。自分から勉強したいと言うなんてすごいなノア。
魔法……魔法の勉強と聞いてふと思い出した。
「ノアは立派なだな。オレもノアを見習って魔法の勉強しようかな」
「どんなことやるんスか?」
「まずは飛翔の魔法を試してみようかと思うんだ」
そう。温泉までの道のりをひとっ飛び。そんな魔法を練習するのだ。
入れたり尽せりだ。
メイドさんに、馬車の中で待っていてほしいといわれる。
屋敷にもどって、詳細が決まるまで待機だ。
これからどうしようかと考える。まずは、皆に報告だ。
それから……。
「さすがねぇ、リーダわぁ」
物思いにふけっていると、スルリと馬車の壁を抜けてロンロが入ってきた。
「何処に行ってたんだ?」
「領主の部屋でぇ、何を話しているのか聞いてたのよぉ」
「解決したってのに、どうして?」
「だってぇ、急に領主様が全部引き受けるってぇいうからぁ、怪しいと思わないのぉ?」
確かに、建前が云々と言っていたのにもかかわらず、いきなり前向きに何でもやるって感じになっていたな。
「確かに怪しいかもね」
「もぉう、そんなこと言って。全部リーダの策略なんでしょぉ、領主様も言っていたわぁ」
策略? 何言っているのだろう、こいつ。
「何の話?」
「あの温泉は、おそらくテストゥネル相談役が、呪い子に渡した報酬の一種だ」
いきなり、ロンロが声音を変えてしゃべりだした。
「あの、ロンロさん?」
「もぉう、領主様の真似してるんだからぁ。黙っててぇ」
領主の真似なのか、いわれてみると結構似ている。
ロンロは声音を変えたまま話を再開する。
「だが、温泉は国王の物だ。発見者でなくな……リーダは、ロウスの法律で当初考えていたのだ。だから発見者である自らが所有者になれると考えていた」
「なるほど、それでリーダは、私に発見者である自分達が温泉の所有者だと言ったのですな」
今度は、ヘイネルさんの声音だ。
すごい。こいつこんなに芸達者だったのか。
「小芝居がうまくて驚くよ」
素直に賞賛する。
「もぉう、黙ってて」
オレが褒めたにもかかわらずロンロは憤慨したような声をだした。
「テストゥネル相談役もそのつもりだったのだろう」
今度は領主の声だ。この小芝居はまだまだ続くのか。
「なるほど。ですが、ヨラン王国では仕組みが違う。呪い子に温泉を与えるには、もう一手、必要になった……ということでしょうか」
今度は、ヘイネルさんの台詞……と。
「そうだ。それで、ギリアの絵だ……、つまりテストゥネル相談役は、私に、これで便宜を図れといっているのだ」
すごい勘違いだ。
まぁ、別に勘違いにしろ、オレ達は温泉の所有権を得られるから問題ない。
「なるほどね」
「ふふぅん。龍神テストゥネルのプレゼントだと上手く思わせて、温泉を自由につかえるようにするなんてぇ、やっぱりリーダはすごいわぁ」
成り行きをそんなに褒められても困るが、悪い気はしないのでハイハイと適当に相づちを打っておく。
あとでノアにも教えてあげるらしい。
あんまり尾ひれつけて話さないでねと、一応釘を刺しておく。
長々と待たされたあと、エレク少年がやってきた。彼が、屋敷までの御者をしてくれるらしい。
それに護衛の兵士2人。
「ヘイネル様が同行する予定でしたが、急用ができたとのことで私一人です。道中よろしくお願いします」
そんなことをエレク少年は言って、早速馬車を走らせた。
ヘイネルさんに急用ができたと聞いて、ヘイネルさんに対応丸投げしたんじゃないかと思ったが、領主が急ぎ王都へ向かうことになったので留守番だそうだ。
広めの馬車にはオレが一人乗って屋敷へと戻る。
今日のエレク少年は、馬車の御者をしてこともあって無言だった。
「おかえりなさい」
「先輩、どうでした? うまくいったっスか」
屋敷について、馬車と兵士が城への帰途についたと同時に、屋敷からノアとプレインが駆け寄ってきた。
笑顔で交渉がうまくいったことと、詳細は後日になることを伝える。
「よかったね。ミズキお姉ちゃんも、カガミお姉ちゃんも大喜びだね」
「さっそくバルカンに報告するっスね」
それから広間で、他の皆と遅めの昼食をとりながら今後の話をした。
「俺は温泉を温める方法を探す。いくつか絞れたんで、今日から実験だ」
「何か手伝おうか?」
「嫌、今はいい。もう少ししたら皆にも手伝って貰うことになる。当面はまかせてもらうぞ」
サムソンは、楽しげに、そして自信たっぷりと言った調子で進捗を説明したあと部屋から出ていく。
オレよりも少しだけ早く屋敷に帰ってきたカガミは、ミズキと一緒にイザベラの所で習ったことの復習をしたいそうだ。
「温泉のこと任せきりにして、申し訳ないと思っています」
「そんなことないさ。カガミの情報で一気に事を進められた」
「そうですか。なら、良かったです」
「特に温泉のためにすることもないか。んじゃ、ドレスとお金のため……がんばんないとね」
自分に言い聞かせるように、ミズキはぼやきカガミと一緒に行動することを決め、二人で部屋から出て行った。
「ボクは何しようかな、先輩は何かするんスか?」
正直なところゴロゴロしようかと思っていたが、皆が何かに一生懸命なところで寝るとは言いづらい。
温泉の準備は、サムソンとバルカンが進める。
オレは領主からの連絡があるまで急いでやることもない。
「うーん。どうしようかな、ノアは何かしたいことある?」
「あのね。お勉強するの。魔法の」
勉強か。自分から勉強したいと言うなんてすごいなノア。
魔法……魔法の勉強と聞いてふと思い出した。
「ノアは立派なだな。オレもノアを見習って魔法の勉強しようかな」
「どんなことやるんスか?」
「まずは飛翔の魔法を試してみようかと思うんだ」
そう。温泉までの道のりをひとっ飛び。そんな魔法を練習するのだ。
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