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六章 おっさん、初めてのクエスト
第百六話・吉報を待て
しおりを挟む「大丈夫...大丈夫だから。そんなくだらない噂、偶然の類いだったと
しても、意図的なものだったとしても、全部纏めて薙ぎ倒してやるからさ。
だからミュミュ。キミはお日様笑顔で送り出してくれよ。その方が俺も
嬉しいからさ......ね♪」
未だに俺を心配そうに見てくるミュミュを安心させる為、俺はニコリと
微笑んだ笑顔を浮かべつつ、再びミュミュの頭を優しく撫でていく。
「うう...レ、レンヤ様。あ、ありがとうございます。そう言って
もらえる事が...ほ、本当に嬉しいです!」
優しい笑顔で自分をの事を安心させようとするレンヤに、ミュミュの
不安が安堵へと変わると、ミュミュは笑顔いっぱいの表情で感謝の言葉を
レンヤに送る。
「うん、うん。やっぱり、ミュミュは落ち込んでいるより、笑顔の方が
一番似合うよ♪」
「はひぃぃ!?そそ、そんな事はなぃ......ですぅ」
「あはは♪照れない、照れない。でもその照れた顔も可愛―――アギャ!」
ミュミュの見せる笑顔にレンヤが満足したその瞬間、後頭部にあの何度も
味わったトラウマの激痛が迸った。
「ったく...いつまで経ってもギルドから出て来ないと思えば、まさか
こんな所で似合いもしないキザをやっていたとは.........ねぇっ!!」
「アイダダダダダダァァァダダァァァッ!!」
眉をひくひくさせながら黒い笑顔を見せるルコールが、五本の指に
グイッと力を込めて、レンヤの後頭部を更に締め上げていく。
「い、だだだだ!?い、い、痛いですってルコールさん!ほ、骨が
キシキシと軋んでますってぇぇぇえ!た、確かにルコールを待たせて
しまった事は素直に謝る!け、けど!不安がっているミュミュの事を
安堵させなきゃいけないと大人として思い立ち...だ、だからね、
決してキザとかではないんですよ!お、大人の対応をおっさんなりに
一生懸命に頑張ってただけなんですよぉぉおぉぉおっ!!?」
俺は流れる様な矢継ぎ早の言葉にて、ルコールを待たせてしまった
理由と、ミュミュにキザっていた理由を懸命になって説明していく。
「なるほど、ミュミュを安堵させる為に......ねぇ?」
レンヤの説明が上手く通じたのか、ルコールの指の握力が少し弱まった。
だが次の瞬間、
「でもそれはそれ♪これはこれ♪」
「いただだたただだだああ――――っっ!!?」
ルコールがにこやかな表情を見せると同時に、レンヤの後頭部を掴んで
いた五本の指に力を込めて、先程よりも更に力強く後頭部を締め上げていく。
「く、くそぉおお!全然外れやしねぇぇえっ!な、何て馬鹿力なん――――
ギャァアアァァアッ!!ほ、骨が軋むぅぅうう!?ママ、マ、マジで
止めてぇぇぇえっ!?く、砕けるぅぅぅう―――っ!!あ、頭が砕けて
粉々に散ってしまうぅぅぅううう――――っ!!!?」
頭の中にミシミシと響き渡っていく音を聞き、これはヤバいと身の危険を
感じた俺は、物申しは取り敢えず後回しと考えて、ルコールの繰り出す
アイアンクローから緊急に脱出しようと試みるのだが、ウンともスンとも
ビクともしなかった。
「コホン!さて...っと。それじゃ、ミュミュ。今度こそあたし達はクエストに
行ってくるから、ミュミュはそこであたし達の吉報をのんびり待っててねぇ♪」
ドタバタコントを終えたルコールが、ミュミュに顔を向けてそう言うと、
ギルドの出入り口に歩いて行く。
「はい!ここでお二人の御武運をお祈りして待っています!ですがルコール様、
レンヤ様。もし少しでもその身が危ういとお感じになられましたら、即座に
クエストを破棄してその場からお逃げ下さいね!きっとですよ!それでは
お二人とも、どうかお気をつけてっ!」
ミュミュが思いの込もった嘆願をルコール達に伝えると、頭を深々と下げて
ルコール達に見送りの言葉を送る。
そんなミュミュの嘆願に答えるように、ルコールはミュミュの方に振り返って
パチンッとウインクを決め、そしてレンヤは了解とばかりに右手を小さく
左右に振って返す。
そしてルコールのレンヤ二人はクエストへ赴く為、ギルドを後にする。
「あ、あの...ルコールさん?お、俺も十二分に反省いたしましたので...
いい加減このアイアンクローをそろそろ外してはくれま―――」
グイッ!
「アイダダダダダダダダダ―――――ィィィィィッ!!!?」
外してくれませんでした。
応援ありがとうございます!
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