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三章 おっさん勇者の初めての人命救助

第三十五話・第三突撃部隊

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「お、おい、ルコールさん...。あれ、死んじゃったりはしてないよね?」

俺は炎に包まれて地面を転がっている兵士の安否を、恐る恐るルコールに
聞いてみた。

「大丈夫、大丈夫!一応ちゃんと計算して攻撃の威力を五分の四殺し
くらいに落としてあるから安心して♪あ、勿論さっきの兵士もちゃんと
手加減しているから、そっちの方も安心しなよ♪」

俺の素朴な疑問に対し、お日様な笑顔でルコールが、ちゃんと手加減は
したと返事を返す。

「そっか...それなら、安心......していいのか?あの状態なのに!?」

俺は未だに炎に包まれ、地面をのたうち回っている騎士と、先程身体中を
切り刻まれて血だらけになって倒れている兵士に目を動かし、「本当にこれ、
大丈夫なのか!?」と、困惑と不安の入り混じった表情を浮かべてしまう。

だってさ、五分の四だぞ!五分の四殺しっ!

それって、八十以上は死んでいるって意味だよね!?

それってもう、完全に手加減したとかいうレベルじゃないと
思うんだけど!?

事実、どう見てもあの連中達、死に様にしか見えないしぃいっ!?

ヤ、ヤベェェエ...もし、これで仮にコイツらが死んだりしてみろ。

もう百パー、後には引けない状況へと陥ちゃうじゃんっ!?

俺はそれを考えると、不安を突き破った絶望的な未来しか頭の中に
浮かんでこず、思いっきり叫声を荒らげたい気分になる。

レンヤがそんな嘆きにまみれている最中、騎士や兵士達が見た事ない
ルコールの技に動揺を隠しきれず、あたふたとしていた。

「く、くそ...何なんだよ、あの小娘の強さは!さっきの衝撃波といい、
今の火炎攻撃といい......!」

「あんな魔法や技、今まで見た事も聞いた事もないぞ!?」

「お、俺だってあんな技、初めて見る。一体何なんだよ、あれって?」

「俺にもわかるかよ!ただ分かるのは、今まで見てきた技や魔法とは
桁がまるで違うって事だっ!」

「ど、どうする!?あいつらを見る限り、こんな鎧程度の防御では
紙くずも同然だぞ......」

そしてそのルコールの技を食らって息も絶え絶えなジェントや兵士を見て、
騎士や兵士達が動揺と混乱の混じった言葉を吐き、恐怖してしまう。

「あの小娘、強いな......。あの者らでは、とても相手は務まらんか.....」

そんな恐怖感に陥っている騎士達と同様、マッシュ将軍も恐怖感に陥っていた。

が、

「だがしかしっ!どんな事があろうとて、皇后様や皇女様が乗っておられる
この馬車だけは意地でも死守するっ!よいかぁぁあ、皆の者達よぉぉおっ!!」

それでもマッシュ将軍は足を踏ん張り、手に持っていた槍を天高く突き上げ、
部下の騎士達にそう命を下す。

それを聞いた周りの部下達は、


「「「ハッ!我々にお任せ下さいっ!!マッシュ将軍っ!!!」」」


マッシュ将軍に向け、肯定の返事とともにキレイな敬礼をビシッと決めると、
馬車を囲う様に陣形を組んで防御全開で身構えていく。

「聞けぇいっ!フォーラム帝国の精鋭なる、第三突撃部隊の皆の者よぉおっ!
例え叶わぬ敵だとしても、キサリ皇后様とアリア皇女様を汚そうとした
この愚か者どもに、我らの底力と意地、それを見せつけてやるのだぁぁあっ!」

そしてマッシュ将軍が、天に掲げていた槍をレンヤ達にバシッと突きつけると、
戦意を落としている部下達に豪声で発破をかける。


「「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ―――――っ!!!」」」」」」


すると、部下達に戦意と気合いが戻り、マッシュ将軍の豪声に合わせるように
高らかな雄叫びを荒らげると、レンヤ達をじわりじわりと取り囲んでいく。

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