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三章 おっさん勇者の初めての人命救助

第三十四話・おっさん、恩を仇で返される

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ルコールの衝撃波を至近距離で受けたジェントが、その身をズタズタに
斬り刻まれて、その場にバタンッと倒れ込んだ。

「ふん!そこでしばらく寝ていろ、この恩仇者めぇっ!」

そしてルコールが、地面に転がっているジェントを蔑む目で見ている。

「よ、よくも俺達の仲間をやりやがったなぁ、小娘ぇぇえっ!」

「この盗賊風情が...絶対に許さんぞ、覚悟しやがれっ!」

「見ていろ、ジェント!俺達がきっと仇を撃ってやるからなっ!」

「そうさ!こんな盗賊二人如き、直ぐに退治してくれるわっ!」

血気盛んな騎士達が気合いを入れると、俺とルコールの周囲を囲うように、
じわりじわり接近していく。

「やれやれ...。いつの時代も騎士というものは、どうしてこうも人の話を
聞きやしないんだろうねぇ...」

全く耳を貸す気のない兵士達に呆れるルコールが、深い嘆息を吐いてしまう。

「お、お前...こんな大ピンチだっていうのに、よくもまぁそんな冷静な態度で
いられるなぁ......?」

「え?大ピンチ?レンヤにはこれが大ピンチなの??」

動揺を見せて慌てているレンヤに、ルコールが「嘘でしょう?」と言う顔を
して首を傾げる。

「当たり前だろうがっ!相手は王族なんだぞ、王族っ!その連中に俺達は今、
敵認定を食らっているんだぞっ!これを大ピンチと言わず、何を大ピンチと
言うんだよぉぉおっ!」

今の状況がまるでわかっていないルコールに、俺は説教に近い激おこを返す。

「う~ん。そんなに面倒ならさ...もういっその事、全部まとめて消しちゃう?」

ルコールが悪代官の如き悪どい微笑みをニヤリと浮かべると、ルコールの爪が
シャキンッと鳴って大きく伸びた。

「お、おい!何で戦闘体勢に入った!?い、良いか、間違っても絶対に連中を
消すんじゃないぞっ!もしそれをやっちまったら、もう大ピンチどころの
騒ぎじゃなくなるからなっ!」

俺はルコールの殺る気満々な態度に目を見開き喫驚すると、慌て様でルコールに
マジの注意を促す。

「さて...この拮抗状態をどうするか、それが問題だな?」

キサリ皇后様かアリア皇女様が俺の無実を証言さえしてくれれば、それで事は
済む話なんだが。

俺はキサリ皇后様達の乗っている馬車へチラッと目線を向けると、先程の将軍が
馬車の出入口に...そして騎士数名が馬車の周囲をガッチリと守っており、

「キサリ皇后様達の乗っておられる馬車には、誰も近づさせやしないぞっ!」

...といった気概で、誰も迂闊には近寄れない状態だった。

「おいおい、おっさん!どこを目を向けていやがるんだぁぁぁぁあっ!」

俺が馬車に気を取られていると、周囲を囲っていた兵士のひとりが俺の視線に
気付き、持っていた槍を突き構え、こちらに向かって一直線に突っ込んで来た!

しかし、

「あんたこそ、どこに目を向けている!この恩仇者めがぁぁぁぁあっ!」


『焼き燃やせ!ドラゴン・ファイアァァァアア―――――ッ!!』


ルコールが息を大きく息を吸って、それを思いっきり吐き出すと、吐き出した
息が螺旋状の紅蓮の炎へと変わって発射される!

「なぁあ!?ほ、炎がぁぁあ!?炎が俺の身体に巻き―――ウギャアァッ!!」

そして俺に突進して来た騎士に向かって炎が渦を巻くように直撃すると、
騎士の身体を瞬時に焼いていく!

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