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騎士と派閥と学園生活と

第157話-腹を括った選択-

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「フランソワ様はどうされるのですか?」

 アンの質問に私は頭を悩ませた。私もそれは決めかねている。

「総長の派閥に付く、それが今の所一番安定はしてそうなのよね」

 普通に考えたら今の主勢力に付くのが効果的だろう。誘いも受けているのだから。ただ、それを最適な判断とするための材料も持ち合わせていない。

「アンはどう思う?」
「私には良し悪しは判断できません」

 きっぱりと言われた。だからこそ彼女の意見は判断材料として信用できる。

「そしたら、また貴方の知恵を貸して。派閥に入ることでのデメリットってある?」

 メリットについては聞くことが出来ている。それがあながち間違っていない事もある程度は判断できている。だけど、逆にデメリットについては私はまだ聞けていない。

「あまりないと言うのが正直な意見ではありますが……」
「あまりって事は何かしらはあるのよね? 少し含みのある言い方だし」
「そうですね。言ってしまえば総長の意見に反対出来ないなどでしょうか。総長直々に来た誘いであれば尚更」
「リーダーの言う事は絶対って言う事?」
「言ってしまえばそうです。例えばフランソワ様が朝のトラブルの時、先輩を介して所属すれば、絶対などではないかも知れません。なんと言えばよろしいのでしょうか。言葉が難しいですね」

 なんとなく言いたい事はわかる。総長直々に付くのと、フロー先輩に付いて、結果として総長に付くのとは意味合いがだいぶ違ってくる。アンが言いたいのはそう言う事だろう。

「大丈夫。言いたい事は分かったわ。それは確かに窮屈ね。今はいいかも知れないけど後々何言われるか分かんないし」
「人の考えは変わりますものね」

 やっぱり大きな組織の下に付くことはメリットもあるが、もちろんデメリットもある。当たり前と言えば当たり前の話だ。

「後は総長派閥についた後のことですが、上になればなる程フランソワ様の存在感は出てくるので私としては嬉しい事なのですが」

 アンが笑いながら言った。
 最近慣れてて忘れてたけど、ゲームの中ではアンもユリィもフランソワの取り巻きだった。そりゃ二人からしたら嬉しいのだろう。
 そう考えるみたら、ある意味フランソワも派閥の一つになっていたのかも知れない。

「そうね。でも私は総長に良いように使われるのはあんまり本意じゃないわね」
「私もあまり良いようには聞こえませんでした」

 アリスが恐る恐ると言った様子で言ってくれた。
 
「見返りはありそうだけど私としてはいまいちね。窮屈そうで嫌だもの。みんなで楽しくのんびりとしたいもの」
「もしフランソワ様との時間が短くなってしまうと私は寂しいのでご一緒できる時間は長い方が嬉しいです」

 そんな嬉しい事を言ってくれる友達がいるこの時間を私は無くしたくない。
 ただ、問題の根本は所属するかしないかと言うだけじゃない。
 その問題を解決しつつ、今を維持する事、それが私が今動かないと行けない事なんだ。
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