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女装と復讐 -完結編-

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アンナさんの美容院へ帰り、あの《特別客室》で…遅めのお昼ごはんは詩織の希望どおり、ケーキ1個とシュークリーム2個、それと飲み物はホットココアとなった。

それでもちょっと物足りない詩織は…ポテチを半袋。残りの半分は僕とアンナさんで分けて食べた。


『はーぁ。ごちそうさまー』

『ごちそうさまでした…』


詩織…もし、いつもこんな食生活だったら…健康面とか大丈夫だろうか…ちょっと心配になる。


『アンナさんは大変ね。食べたらすぐお店に戻っちゃった』

『うん。さすがだね、アンナさん凄い』


このあと、僕はメイクをクレンジングして落として、女装からまた普段着へと着替えて…帰る準備をした。

詩織も今日は、もう帰るという。






『お疲れさま。今日は遂に大役を果たせたね』

『うん…まぁ』


僕と詩織は、美容院の外で少し話していた。
11月も下旬ともなれば、空が赤く夕暮れてくるのも早い…。

美容院の駐車場に、詩織のお母さんの運転する車が入ってきた。詩織が運転席のお母さんに小さく手を振る。


『今夜はゆっくり休んでね。信吾』

『うん。今日はありがとう…詩織』

『じゃあ…私、行くね』


詩織がお母さんの車の助手席に乗り込んだ…すると、すぐに助手席の窓が静かに開いた。


『寂しくて、なかなか眠れなかったら、私にLINEで電話してきてもいいからね』


…寂しくて…って。


『心配ありがとう。でも僕は大丈夫。たぶん』

『えへへっ。そっかぁ。じゃあ安心だね』






…詩織を乗せた車は、ゆっくりと街道へ出て走り去った。それを僕は見えなくなるまで見送る。

僕は、いつものように電車で帰ろうと思う。

復讐を成し遂げた、今日という記念の日の夜。
いつもならファミリーのメンバーが全員集まって、みんなでワイワイ楽しく祝賀会…なんて一瞬想像もしたけど…今夜はそれが無いらしい。






…帰りの電車の中。僕はドアの窓の外を流れる、街の風景を眺めながら…。

今日も振り返れば…色んなことがあったなぁ。
駆けつけてくれたベテラン俳優の浅見丈彦さんと、若手女優の寺本陽凪さん。
会場には秋良さんと啓介さんもいて…。金魚の正体が僕だったってことをバラして…。
樋口とも、初めてあんなに長く話したし。

これからの早瀬ヶ池は、樋口が必ず見守り続けてくれるはず。そのための約束のKissを交わしたんだから。
でもこれで、ようやく僕は心置きなく…安心して詩織と行ける…。
あっ!もちろん雄二さんも僕らと一緒に。

今までありがとう…藤浦市。それと宮端学院大学。
あと…早瀬ヶ池や嘉久見大通り…アンプリエも。

この街は、本当に夜景が特別綺麗だったし、色んな思い出も生まれたし…やっぱり僕が憧れただけの街だった。






…なんだか肩の荷が下りて、ほっとした僕は…今度は少し寂しさに襲われた…。
アンナさんや秋良さん達とも、しばらくのお別れかぁ…。

僕がこの街…藤浦市にいられるのも、あと2日。
日曜日は引っ越し日なんだから…今夜からでも、ダンボールに荷物を纏めて、入れ始めないと…遅くなる。

寂しさなんて感じてる余裕なんてない。頑張らないと。


『…ん?』


詩織からLINE…?
すぐに確認する。


【引っ越しの日は、信吾のアパートには春華さんと啓介くん、それに鮎美ちゃんが手伝いに来てくれるらしいって】


へぇ…なるほど。
僕はすぐに【そうなんだ。教えてくれてありがとう】って、詩織に返した。






…そして、迎えた日曜日の朝。






















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