女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.476

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まだ少し暗い、午前6時に目覚めた僕は…上体を起こして部屋を見渡した。


『結局…あんまり片付けられなかった…』


僕がダンボール箱に詰めて荷造りできたのは…本当に元から少なかった衣類と3足のスニーカー…だけ。

お母さんが用意してくれた、一度も使わなかったたくさんの食器類とか、鍋とか…パソコンとかPS4とか照明器具類とか…あの手作りポスターとか本棚の単行本とか…洗面器周りのタオルとか歯磨きセットとか…。

アパート用の化粧道具は、元々小さな空きダンボール箱をメイクボックス代わりにしてたから、そのままでも持ち運べるけど…。

僕は窓のカーテンを開けた…あ、このカーテンもあった…。
あと、朝ごはん…どうしよう…。午前7時には、啓介さん達が来るって聞い…。




《コン、コン、コン…》

玄関のドアをノックする音…?
えっ、もう来たの!?啓介さん達?
だってまだ、6時18分だよ!?


僕は慌てて玄関へ小走りし、解錠してゆっくりとドアを開けた。


『啓介さん、おは…えっ?』

『おはようございます』

『な、なんで!?』


《おばタク》の岡ちゃん!なんでここに居るの!?


『詩織ちゃんから服を預かってきました。それと伝言も…』


…伝言?






…僕は《詩織が準備した》に着替え終え、慌ててメイクを始めた…。

ちょっとちょっと…ちょっと!
何で引っ越しするこんな日に、いきなり《金魚に変身して?》って…詩織!?


『おはよーっ。信吾くんッ♪』
『信吾くん、おはよう』
『おっ、早速始めてるな。金魚への変身』


鍵は掛けず、ドアを閉めてメイクしていた。そのドアを開けて、春華さんと歩美さんと啓介さんが部屋に入ってきた。

岡ちゃんは今《おばタク》に乗って待ってくれている。


『信吾くん、サンドイッチ作ってきたよん。どーぞ♪紅茶もあるからねッ♪』

『どこから荷造り始めます?啓介さん』
『じゃ…歩美ちゃんは食器類を新聞紙で包んでダンボール箱に入れて』


僕は春華さんに『あーん、してッ♪』って、時折サンドイッチを貰い頬張りながら、メイクを進めていく。


…できた!完成…はぁ、はぁ…。


『メイク終わったの?じゃあ早く行ってあげて!』
で詩織ちゃんが待ってるって!』
『荷造りは俺たちが全部やるから…ほら』

『あ…あの、じゃあ…行ってきます…』


僕は玄関のドアを開けて、外へ出ようとした。


『うわっ!』

『きゃっ』


危なっ!…えっ?
そこに居たのは…このアパート《寿美安壮》の大家のおばちゃん…!!


『すっ、済みません!ちょっと急用で僕…ちょっと出掛けてきますんで!』


大家のおばちゃんは、キョトンとした目で僕を見てる…。


『あっ、あぁ…。こんな女の子みたいな格好してますけど…僕です。岩塚です…』

『えっ…??』


引っ越しの日に女装して?荷造りをひとに任せて?出掛けるって…そんなバカな奴いるかーっ!…って…ここに居ました…。


『啓介さん!荷造りお願いしまーす!行ってきまーす!』

『あぁ。安心して行ってきな!』

『はいっ!』


僕はカンカンと慌ただしく、《早朝のシンデレラ》みたく錆びた階段を駆け下りて…ガラスの靴は落とさなかったけど…《おばタク》に駆け寄り乗り込んだ。

車から出てきてた岡ちゃん。僕が乗り込むと後部座席のドアを閉めてくれて、岡ちゃんも運転席に『よいしょ』と座った。


『お待たせ!ごめん!岡ちゃん!』

『はい。じゃあ向かいますね。に』























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