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女装と復讐 -完結編-
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僕は下を向いて大きく息を吸い、はぁーっと息を払った。
『…違うよ。そうじゃない。詩織』
『えっ?』
急にこんな言い方したら、詩織が目を円くして驚くのは無理もない。
僕は目を瞑り、自分の早まる鼓動を一旦落ち着かせた。
『あのさ…詩織。まだ間に合うかな…』
『なっ何?…どういうこと??』
僕は顔を上げて、ゆっくりと詩織を見た。
『やっぱり、僕も行ってもいいかな…って』
『えぇっ!?』
『あの…東京へ。詩織と一緒に…』
詩織は僕に、大切なことを気付かせてくれた。
《大切や大好きの優先順位》ってのは、別に詩織の気持ちの中だけにあるわけじゃない。僕の気持ちの中にだってあったんだ…ってこと。
《大学の無事卒業》と《詩織の存在や気持ち》《アンナさんとの約束》…それらの《大切の優先順位》を考えてみたんだ。
《どれを選択するのか》ってことは…逆に言えば《どれを犠牲にし棄てるのか》《どれを失っても後悔しないのか》…ってこと。
《詩織の存在や気持ち》と《アンナさんとの約束》は、ほぼ同じものと考えていい。
だとすれば、選ぶのは…《大学》か《詩織》か…この2つのどちらか1つ。
もし僕が《大学の無事卒業》を選んでたら…間違いなく僕は一生後悔してただろう。
詩織とサヨナラしてしまったら、こんなにも金魚を必要としてくれる子なんて、この先絶対に現れない。
金魚にだって絶対必要なんだ。詩織のことが。この先もずーっと。
だから詩織を守れないことを…アンナさんとの約束を破ることを考えたら、《大学の卒業》を諦める覚悟なんて容易だった。
それに、詩織が僕にもくれた《温かい涙の一粒》だけで、卒業を諦める理由なんて十分だ。迷いはない。
今の僕のこんな人生の選択を、誰が馬鹿だと言ったとしても、自分の選択に後悔なんてしない。絶対に。
…ふと我に返ると…詩織はまた、僕を優しく抱きしめていた。
『…遅くなんかないよ。私、信吾と行きたい…東京にに行っても、ずっとずっと金魚と一緒にいたい!』
『うん。ずっと一緒だね。だって金魚と詩織は、お互いを支え合い、助け合うパートナーだからね』
なのに…だから、要らないことで泣かせて、ごめん。詩織。
僕はアンナさんから『…もう二度と詩織が悲しい涙を流さないように、今後は私に代わって、あなたが詩織を守ってあげて…』ってお願いされてたのに…。
その《守ってあげる立場の僕》が詩織を泣かせ、涙を流させてしまった…。
こんな事実をアンナさんが知ったら…僕、アンナさんに怒られるかなぁ…。
そのとき…。
《ヴーン…ヴーン…ヴーン…》
僕のスマホに着信。スマホはいつの間にか床に落ちていた。僕はスマホを拾い上げ、それが冴嶋社長からの電話だと確認。
『信吾…?』
『うん』
僕と詩織は視線を交わした。
『…もしもし』
「大変遅くなってごめんなさい。冴嶋美智子です」
冴嶋社長は忙しそうに、単刀直入にあのことを訊いてきた。
『…その《僕との契約》の話なんですけど…今、僕の目の前に詩織がいます…』
僕は冴嶋社長に『最後にもう一度だけ、詩織と意思確認をさせてください…』とお願いを言った。
「…分かったわ。大事な事だものね…」
『…違うよ。そうじゃない。詩織』
『えっ?』
急にこんな言い方したら、詩織が目を円くして驚くのは無理もない。
僕は目を瞑り、自分の早まる鼓動を一旦落ち着かせた。
『あのさ…詩織。まだ間に合うかな…』
『なっ何?…どういうこと??』
僕は顔を上げて、ゆっくりと詩織を見た。
『やっぱり、僕も行ってもいいかな…って』
『えぇっ!?』
『あの…東京へ。詩織と一緒に…』
詩織は僕に、大切なことを気付かせてくれた。
《大切や大好きの優先順位》ってのは、別に詩織の気持ちの中だけにあるわけじゃない。僕の気持ちの中にだってあったんだ…ってこと。
《大学の無事卒業》と《詩織の存在や気持ち》《アンナさんとの約束》…それらの《大切の優先順位》を考えてみたんだ。
《どれを選択するのか》ってことは…逆に言えば《どれを犠牲にし棄てるのか》《どれを失っても後悔しないのか》…ってこと。
《詩織の存在や気持ち》と《アンナさんとの約束》は、ほぼ同じものと考えていい。
だとすれば、選ぶのは…《大学》か《詩織》か…この2つのどちらか1つ。
もし僕が《大学の無事卒業》を選んでたら…間違いなく僕は一生後悔してただろう。
詩織とサヨナラしてしまったら、こんなにも金魚を必要としてくれる子なんて、この先絶対に現れない。
金魚にだって絶対必要なんだ。詩織のことが。この先もずーっと。
だから詩織を守れないことを…アンナさんとの約束を破ることを考えたら、《大学の卒業》を諦める覚悟なんて容易だった。
それに、詩織が僕にもくれた《温かい涙の一粒》だけで、卒業を諦める理由なんて十分だ。迷いはない。
今の僕のこんな人生の選択を、誰が馬鹿だと言ったとしても、自分の選択に後悔なんてしない。絶対に。
…ふと我に返ると…詩織はまた、僕を優しく抱きしめていた。
『…遅くなんかないよ。私、信吾と行きたい…東京にに行っても、ずっとずっと金魚と一緒にいたい!』
『うん。ずっと一緒だね。だって金魚と詩織は、お互いを支え合い、助け合うパートナーだからね』
なのに…だから、要らないことで泣かせて、ごめん。詩織。
僕はアンナさんから『…もう二度と詩織が悲しい涙を流さないように、今後は私に代わって、あなたが詩織を守ってあげて…』ってお願いされてたのに…。
その《守ってあげる立場の僕》が詩織を泣かせ、涙を流させてしまった…。
こんな事実をアンナさんが知ったら…僕、アンナさんに怒られるかなぁ…。
そのとき…。
《ヴーン…ヴーン…ヴーン…》
僕のスマホに着信。スマホはいつの間にか床に落ちていた。僕はスマホを拾い上げ、それが冴嶋社長からの電話だと確認。
『信吾…?』
『うん』
僕と詩織は視線を交わした。
『…もしもし』
「大変遅くなってごめんなさい。冴嶋美智子です」
冴嶋社長は忙しそうに、単刀直入にあのことを訊いてきた。
『…その《僕との契約》の話なんですけど…今、僕の目の前に詩織がいます…』
僕は冴嶋社長に『最後にもう一度だけ、詩織と意思確認をさせてください…』とお願いを言った。
「…分かったわ。大事な事だものね…」
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