女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.427

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僕は一旦、冴嶋社長との電話を切った。そして真剣ない眼差しで詩織を見る。


『詩織』

『…うん』

『僕は本当に、詩織と一緒に東京に行くよ。だけど条件がある』

『条件…って?』






僕は再度、冴嶋社長に電話を掛けた。
また電話は切られ、冴嶋社長のほうから電話を掛け直してくれた。


『もしもし…大変お待たせしまして…すみません』

「それはいいの。で…信吾くんの決意は…?」

『はい…行きます。詩織と一緒に。それで…その、僕との契約のことなんですが…』


僕は冴嶋社長に条件を出した。

それは、詩織の芸能界デビューから、1年の間は《池川金魚》へと女装する僕のタレントデビューは控えてほしい…と。

代わりに、それまでは僕を詩織の《専属のメイク担当》として採用してください。専属のメイク担当が無理なら、詩織の付き人でも…。

それさえダメだと言われるなら…詩織も僕も、契約は揃って無理です…って。

…なんか、ちょっと無茶言い過ぎかもだけど…。


「…私、信吾くんや詩織ちゃんに…黙ってたことがあるの」


…冴嶋社長が僕らに黙ってたこと…?


「詩織ちゃんも確かに可愛いわ。だからもちろん、詩織ちゃんとのタレント契約も取りたいって思ってる。けど一番、契約を取りたかったのは…女装できる信吾くん。あなたなの」

『…えっ?ぼっ僕!?』


冴嶋社長は僕のことを《稀に見る逸材》だと言った。

こんなにも若くて、こんなにも綺麗に丁寧にメイクができて、しかも女装した姿が、こんなにも本物の普通の女の子以上に可愛い男の子なんて、日本中どこを探しても、そんなにいるものじゃない…って。

だから、他の芸能事務所が僕の存在を知る前に…僕に目を付けられる前に、急いで契約を成立させたいんだとか…。


「…もし私が…幾らの契約金を提示すれば、あなたとの契約が成立できるのかしら?」


…幾らの契約金…って…。


「あなたの欲しいだけの契約金を提示してちょうだい。それで…」

『えぇっ!?まっ待ってください!!』


僕は金額の問題なんかじゃないことを、冴嶋社長に言った。

…てゆうか、欲しいだけって…いつかどこかで聞いたことがあるような…。


「…じゃあ、1年だけ我慢すればいいのね?」

『はい』


…その1年間で、僕は自分のお馬鹿な女装姿…《池川金魚》を全国に晒してもいいっていう覚悟を…なんて、ほんとに1年で覚悟できるかな…。ちょっと不安…。

冴嶋社長もそれで納得して「またこちらから連絡するわね」と、電話を切ろうとしたその時…。


『あっ!待ってください!』

「えっ?なに?」


…僕はもう一つだけ、条件をお願いした。

























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