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女装と復讐 -完結編-
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僕は一旦、冴嶋社長との電話を切った。そして真剣ない眼差しで詩織を見る。
『詩織』
『…うん』
『僕は本当に、詩織と一緒に東京に行くよ。だけど条件がある』
『条件…って?』
僕は再度、冴嶋社長に電話を掛けた。
また電話は切られ、冴嶋社長のほうから電話を掛け直してくれた。
『もしもし…大変お待たせしまして…すみません』
「それはいいの。で…信吾くんの決意は…?」
『はい…行きます。詩織と一緒に。それで…その、僕との契約のことなんですが…』
僕は冴嶋社長に条件を出した。
それは、詩織の芸能界デビューから、少なくとも1年の間は《池川金魚》へと女装する僕のタレントデビューは控えてほしい…と。
代わりに、それまでは僕を詩織の《専属のメイク担当》として採用してください。専属のメイク担当が無理なら、詩織の付き人でも…。
それさえダメだと言われるなら…詩織も僕も、契約は揃って無理です…って。
…なんか、ちょっと無茶言い過ぎかもだけど…。
「…私、信吾くんや詩織ちゃんに…黙ってたことがあるの」
…冴嶋社長が僕らに黙ってたこと…?
「詩織ちゃんも確かに可愛いわ。だからもちろん、詩織ちゃんとのタレント契約も取りたいって思ってる。けど一番、契約を取りたかったのは…女装できる信吾くん。あなたなの」
『…えっ?ぼっ僕!?』
冴嶋社長は僕のことを《稀に見る逸材》だと言った。
こんなにも若くて、こんなにも綺麗に丁寧にメイクができて、しかも女装した姿が、こんなにも本物の普通の女の子以上に可愛い男の子なんて、日本中どこを探しても、そんなにいるものじゃない…って。
だから、他の芸能事務所が僕の存在を知る前に…僕に目を付けられる前に、急いで契約を成立させたいんだとか…。
「…もし私が…幾らの契約金を提示すれば、あなたとの契約が成立できるのかしら?」
…幾らの契約金…って…。
「あなたの欲しいだけの契約金を提示してちょうだい。それで…」
『えぇっ!?まっ待ってください!!』
僕は金額の問題なんかじゃないことを、冴嶋社長に言った。
…てゆうか、欲しいだけって…いつかどこかで聞いたことがあるような…。
「…じゃあ、1年だけ我慢すればいいのね?」
『はい』
…その1年間で、僕は自分のお馬鹿な女装姿…《池川金魚》を全国に晒してもいいっていう覚悟を…なんて、ほんとに1年で覚悟できるかな…。ちょっと不安…。
冴嶋社長もそれで納得して「またこちらから連絡するわね」と、電話を切ろうとしたその時…。
『あっ!待ってください!』
「えっ?なに?」
…僕はもう一つだけ、条件をお願いした。
『詩織』
『…うん』
『僕は本当に、詩織と一緒に東京に行くよ。だけど条件がある』
『条件…って?』
僕は再度、冴嶋社長に電話を掛けた。
また電話は切られ、冴嶋社長のほうから電話を掛け直してくれた。
『もしもし…大変お待たせしまして…すみません』
「それはいいの。で…信吾くんの決意は…?」
『はい…行きます。詩織と一緒に。それで…その、僕との契約のことなんですが…』
僕は冴嶋社長に条件を出した。
それは、詩織の芸能界デビューから、少なくとも1年の間は《池川金魚》へと女装する僕のタレントデビューは控えてほしい…と。
代わりに、それまでは僕を詩織の《専属のメイク担当》として採用してください。専属のメイク担当が無理なら、詩織の付き人でも…。
それさえダメだと言われるなら…詩織も僕も、契約は揃って無理です…って。
…なんか、ちょっと無茶言い過ぎかもだけど…。
「…私、信吾くんや詩織ちゃんに…黙ってたことがあるの」
…冴嶋社長が僕らに黙ってたこと…?
「詩織ちゃんも確かに可愛いわ。だからもちろん、詩織ちゃんとのタレント契約も取りたいって思ってる。けど一番、契約を取りたかったのは…女装できる信吾くん。あなたなの」
『…えっ?ぼっ僕!?』
冴嶋社長は僕のことを《稀に見る逸材》だと言った。
こんなにも若くて、こんなにも綺麗に丁寧にメイクができて、しかも女装した姿が、こんなにも本物の普通の女の子以上に可愛い男の子なんて、日本中どこを探しても、そんなにいるものじゃない…って。
だから、他の芸能事務所が僕の存在を知る前に…僕に目を付けられる前に、急いで契約を成立させたいんだとか…。
「…もし私が…幾らの契約金を提示すれば、あなたとの契約が成立できるのかしら?」
…幾らの契約金…って…。
「あなたの欲しいだけの契約金を提示してちょうだい。それで…」
『えぇっ!?まっ待ってください!!』
僕は金額の問題なんかじゃないことを、冴嶋社長に言った。
…てゆうか、欲しいだけって…いつかどこかで聞いたことがあるような…。
「…じゃあ、1年だけ我慢すればいいのね?」
『はい』
…その1年間で、僕は自分のお馬鹿な女装姿…《池川金魚》を全国に晒してもいいっていう覚悟を…なんて、ほんとに1年で覚悟できるかな…。ちょっと不安…。
冴嶋社長もそれで納得して「またこちらから連絡するわね」と、電話を切ろうとしたその時…。
『あっ!待ってください!』
「えっ?なに?」
…僕はもう一つだけ、条件をお願いした。
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