女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

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冴嶋社長は歩き近付いてきて、僕の目の前でゆっくりと立ち止まった。

見た目からして年齢は…僕のお母さんと同じくらいか、または少し歳上に見える。ちなみに僕のお母さんは今年で43歳。

白いブラウスの上に落ち着いた灰色のレディーススーツを着ている、少し痩せた背の高い冴嶋社長。


『あなたと岡本詩織ちゃんとは、ずっと前から1日でも早く会いたいと思ってたの。だから今日のこのときが、本当に待ち遠しかったわ』

『…はい』


冴嶋社長はニコリと笑った。


『池川金魚ちゃん…よね?実際に見るあなたは、鈴から聞いていた以上の可愛さね』


鈴ちゃんのことを、まるで本当の自分の娘のように『鈴』って呼んでるんだ…。

…そして冴嶋社長は唐突に、僕を驚かせるに十分な一言を口にした。


『だけど…鈴のことを、絶対に悪く思わないでね』

『?』

「あなたの…《性別の秘密》のことも…鈴から聞いて知ってるの…」

『!!!』


社長は後ろを…そして周りを見回した。


『それと、本名もね。でもここでは…そんな部外秘なお話はできそうにないわね…』


店内は一般客に混じって、もの凄い人の数で溢れ返っていた。雨宿りの目的で入店した人ばかりではないのは、見ていて明らか。
鈴ちゃんと詩織と金魚、それに冴嶋社長…その姿が店外から見えて、何だ何だ?と興味津々に入店し、寄り集まってきた…そんな雰囲気が漂っている。


『金魚ちゃん…何の相談もせず、金魚ちゃんの秘密や本名を社長にお話しして…ごめんなさい』


鈴ちゃんが小さく頭を下げて僕に謝った…けど『ううん。大丈夫。気にしてないから』と、僕は鈴ちゃんに答えて返した。


『じゃあ…どこか落ち着いた喫茶店にでも…』

『冴嶋社長』


鈴ちゃんが、冴嶋社長へ声を掛けた。


『何?』

『詩織ちゃんや金魚ちゃんは、この藤浦市や早瀬ヶ池の街では、非常なほど有名な女の子です…』


…だから、どこへ行っても《壁に耳あり障子に目あり》…鈴ちゃんはそう例えて冴嶋社長に言った。


『じゃあ、何処どこなら良さそう…』

『冴嶋様』


今度はナオさんから一言。


『私は、それに相応ふさわしい最も適したところを知っています』

『それは…どこなの?』






『…お待たせ致しました。どうぞお召し上がりください』


アンナさんが紅茶とケーキを運んできて、ロングソファーの前のテーブルに、静かに置いた。


『こんな狭苦しい美容院の店内ですが…申し訳ございません』

『狭いだなんて何をおっしゃるの。凄く広いじゃない。店内の雰囲気だって凄く清潔感があって、なんだか甘い香りが漂ってるし…凄くリラックスできるわ』

『ありがとうございます』


アンナさんは微笑んでお礼を言った。
美容院の室内には…冴島社長と鈴ちゃん、アンナさん、詩織、そして僕。

アンナさんは今日のこの時のために、お店の午後からの営業を《準備中》としていた。

えっ!?アンナさん…それを予見してた!?
























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