女装と復讐は街の華

女装と復讐 -完結編-

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詩織はドジョウに背を向けて歩き出した。

その詩織の後ろ姿を黙って注視する、瀬ヶ池の女の子たちとドジョ…ん？

…歩きだしたかと思ったら…詩織は振り返って僕の手首を掴んだまま、ドジョウの目の前へと、また早足で戻った…？


『何も解ってないあなたにね、２つだけ大事なことを教えてあげるわ…！』

『えぇぇ？』


詩織はドジョウを睨み付けた。


『どうせあなたのことだから、可愛い子にしか興味がないとか言って、ここでナンパやってるんでしょ？』


確かに瀬ヶ池は街中あちらこちら、可愛い女の子がいっぱい歩いてるからね…。

唖然と…そして怯えるように詩織を見詰めているドジョウが、遅れて思い出したかのようにウンウンと頷いた。


『でも、あなたは肝心なことを忘れてる…』


落ち着きなく動揺し、目を泳がせているドジョウ…対して詩織の瞳めは、ドジョウを真っ直ぐに捉え、じっと動くことはなかった。


『瀬ヶ池の女の子たちだってね、限られたお小遣いのなかでお洒落な洋服を買ったり…お化粧道具を買ったり…ダイエットしたり、美容院に行ったり…そうやって一生懸命可愛くなろうって頑張ってるの！』


周りの女の子たちから、「わぁ」という小さな歓声がちらほら聞こえた。


『あなたみたいな、自分磨きに何の努力も投資もしない《おバカ》がね、ただここに突っ立って何かボソボソ言ってるだけで、いっぱい努力してる可愛い女の子たちを狙おうなんてのが、そもそも根本的に大間違いなのよ！』

『えぇぇ…』

『あなたは私たち、女の子をバカにしてる！！』


パラパラと、詩織に拍手を贈る女の子たち。


『あともう一つ、これだけ言わせて…』


詩織は今やっと、彼からそっと視線を外した。


『あなたが明日からも、ここで今日と同じように、ここでナンパを続けようなんて思ってるのなら、もう無理だから…』

『えぇぇ？なんで？』


声を震わせ、詩織にそう訊くドジョウ。


『まだ解らないなら、もう一生解らなくてもいいわ。私も細かく説明するのも、もう面倒だし。じゃあ、さようなら…』


『行こう』そう言って、詩織は掴んだ僕の左手首をまた引っ張り、歩きだした。

…と思ったら、立ち止まって振り向き、詩織は彼に向かって叫んだ。


『あなたみたいなおバカ男はね…そうやって《一生モテない君》やってればいいのよ！！』


…！！
一生モテない君…。

ドジョウより先に…僕の身体が…脳とあのときの記憶が…《一生モテない君》というその一言に…酷く反応した…。