女装と復讐は街の華

女装と復讐 -街華編-

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はぁ…と一度、小さく息を払ってから出た鈴ちゃんの第一声。


『彩…筒井鮎美ちゃん…って、知ってる…？』


彩乃は『あゆみちゃん？って誰？うーん。私知らない』と真顔で答えた。

ところが『あなたが新井早瀬駅で写真を撮ったって子なんだけど』と言うと…。


『写真撮った？私が？うそ！？あんまり私、覚えてないや…』


そうやって、とぼけたふうに言ったすぐ、彩乃は血相を変えて…。


『それ！！誰から聞いたの！！？』


声を荒げ、カッと目を見開いて、鈴ちゃんに言い迫る勢いの彩乃。

彩乃のそんな様子から《やっぱり何かあるんだ…》と、そう感付いた鈴ちゃんは、落ち着いて優しく彩乃に答えた。


『あることが切っ掛けで私、鮎美ちゃん本人とお友達になったの。それで彩に写真を撮られたんだ…って聞かせてくれたのは、鮎美ちゃん本人…』

『あー…待って。そんなこと、もしかしたらあったかもぉ』


天井を見上げながら目を泳がせ、まるで記憶を巡らせているような雰囲気を《演技》している彩乃。


『あっ！お姉ちゃん、ごめん！この話の続きは今度にして！私、もうそろそろキッチンに戻って、ママの料理のお手伝いしてあげなきゃ！』


彩乃はベッドから勢いよく立ち上がり、タタッと慌てて部屋のドアのところまで急ぎ、ドアノブに触れた。


ガチャッ…。


『彩！待ちなさい！！』

『！！』


鈴ちゃんに背を向けたままの彩乃。今の一声で開けようとしていたドアを静かに閉め戻し、触れたノブから手を離した。


『鮎美ちゃんの写真、なんらかの目的があって撮らせてもらったんでしょ？何に使ったの？』

『…。』


鈴ちゃんは彩乃が自ら正直に、本当のことを言ってくれるのを待ってた…言ってくれると信じてた。

だけど彩乃は黙ったまま。いつまで待っても、何も言おうとしない。


『…。』

『彩…鮎美ちゃんって間近で見ても、本当に金魚ちゃんにそっくりだよね』

『お姉ちゃん…何が言いたいの？誰から何を聞いたの？何を知りたいの？ねぇ…お姉ちゃん！言いたいことがあるんだったら、ハッキリ言ってよ！！』


彩乃は憤怒の形相で、激しく振り返った。

鈴ちゃは彩乃の管理するサイト《★Colorful-Girls★》内で、歩美さんの身に覚えのない、歩美さん本人に成りすましたうえでの《私は本物の金魚のですよー》という嘘の書き込み…更には本人の写真公開まであったことを彩乃に語った。

…彩乃が歩美さんに成りすました書き込みのせいで、歩美さんは《偽物金魚》と言われるまでに…。

《迷惑行為》なんて簡単な言葉では絶対に片付かない。