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女装と復讐 -街華編-
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…そして詩織は鈴ちゃんとの電話を済ませ、運転する岡ちゃんに、安全にスマホを返せるタイミングを待っている。
『ねぇ詩織、鈴ちゃん…なんて言ってたの?』
詩織も振り向き、僕の顔を見た。
『ランチごめんねって。あと、お土産なんだけど…』
『うん。お土産が…?』
詩織が運転席のほうを見た。
『ねぇ岡ちゃん、鈴ちゃんからのお土産…預かってるの?』
岡ちゃんは機嫌良さそうに詩織に答えた。
『えぇ。トランクに詩織ちゃんと金魚ちゃんと、金魚ちゃんのお姉ちゃんの分のお土産も、ちゃんと預かって入ってるわよ。駅前に停車したら手渡すわね』
『良かったぁ…ありがとう。岡ちゃん』
少し明るい表情に戻った詩織。
そして、また詩織は僕を見た。
『あとね…鈴ちゃんに、こんなことも訊かれたの』
『えっ、どんなこと?』
詩織は、それを言うのに少し躊躇してる様子…?
『《彩が詩織ちゃん達に、なにかご迷惑を掛けたこと…なかった?》って…』
『えっ?』
『《…喧嘩したとか…彩から嫌い!って、目の前ではっきり言われたりとか…今までなかった?》って…』
『!?』
そして、また詩織の表情が少し曇る。
『だけど私は…《彩乃ちゃんが私たちにご迷惑だなんて、一度もなかったよ》って、《心配しないでね》って…鈴ちゃんに言ってあげたの…』
…本当は彩乃から、迷惑掛けられまくりだったけど…。
僕は大きく頷いた。
詩織の鈴ちゃんへの、その言葉の返しは正しい…良い答え方だと思う。
鈴ちゃんと彩乃の姉妹関係に亀裂…それは僕らにとって、本来なら本望…嬉しいことなんだけど、手放しで素直に喜べることでもなかった。
本当に優しくて、凄く妹想いな鈴ちゃんのことだ…実の妹を叱りながらも、彼女の心は今傷ついている…かもしれないから。
詩織は優しいな…鈴ちゃんには。
僕には《時々、小悪魔降臨!》だけど…。
『あっ詩織、そうそう!…《カラフル》に歩美お姉ちゃんの写真を、彩乃が勝手に貼った例の件のこと…鈴ちゃん、なにか言ってなかった?』
はっ!とした大きな瞳で、僕をじーっと見る詩織。
『あー…ごめん。それ訊くの私…忘れちゃった…』
…そっかそっか。だったら仕方ないね。
僕は詩織に微笑んで見せて、うんうんと頷いた。
『でも…まぁいいよね。わざわざ訊かなくても。いずれ判ることだし』
『…うん』
今少し、自己嫌悪してるみたいにコクリと小さく頷いた詩織…こんな時だけは何故か、詩織が普段に増してちょっと可愛く見える不思議。
午前10時16分。《おばタク》が新井早瀬駅の駅前に到着。
大通りの路肩にゆっくりと停車…あっという間に女の子たちが集まり、この広い歩道に溢れだす。
『ねぇ詩織、鈴ちゃん…なんて言ってたの?』
詩織も振り向き、僕の顔を見た。
『ランチごめんねって。あと、お土産なんだけど…』
『うん。お土産が…?』
詩織が運転席のほうを見た。
『ねぇ岡ちゃん、鈴ちゃんからのお土産…預かってるの?』
岡ちゃんは機嫌良さそうに詩織に答えた。
『えぇ。トランクに詩織ちゃんと金魚ちゃんと、金魚ちゃんのお姉ちゃんの分のお土産も、ちゃんと預かって入ってるわよ。駅前に停車したら手渡すわね』
『良かったぁ…ありがとう。岡ちゃん』
少し明るい表情に戻った詩織。
そして、また詩織は僕を見た。
『あとね…鈴ちゃんに、こんなことも訊かれたの』
『えっ、どんなこと?』
詩織は、それを言うのに少し躊躇してる様子…?
『《彩が詩織ちゃん達に、なにかご迷惑を掛けたこと…なかった?》って…』
『えっ?』
『《…喧嘩したとか…彩から嫌い!って、目の前ではっきり言われたりとか…今までなかった?》って…』
『!?』
そして、また詩織の表情が少し曇る。
『だけど私は…《彩乃ちゃんが私たちにご迷惑だなんて、一度もなかったよ》って、《心配しないでね》って…鈴ちゃんに言ってあげたの…』
…本当は彩乃から、迷惑掛けられまくりだったけど…。
僕は大きく頷いた。
詩織の鈴ちゃんへの、その言葉の返しは正しい…良い答え方だと思う。
鈴ちゃんと彩乃の姉妹関係に亀裂…それは僕らにとって、本来なら本望…嬉しいことなんだけど、手放しで素直に喜べることでもなかった。
本当に優しくて、凄く妹想いな鈴ちゃんのことだ…実の妹を叱りながらも、彼女の心は今傷ついている…かもしれないから。
詩織は優しいな…鈴ちゃんには。
僕には《時々、小悪魔降臨!》だけど…。
『あっ詩織、そうそう!…《カラフル》に歩美お姉ちゃんの写真を、彩乃が勝手に貼った例の件のこと…鈴ちゃん、なにか言ってなかった?』
はっ!とした大きな瞳で、僕をじーっと見る詩織。
『あー…ごめん。それ訊くの私…忘れちゃった…』
…そっかそっか。だったら仕方ないね。
僕は詩織に微笑んで見せて、うんうんと頷いた。
『でも…まぁいいよね。わざわざ訊かなくても。いずれ判ることだし』
『…うん』
今少し、自己嫌悪してるみたいにコクリと小さく頷いた詩織…こんな時だけは何故か、詩織が普段に増してちょっと可愛く見える不思議。
午前10時16分。《おばタク》が新井早瀬駅の駅前に到着。
大通りの路肩にゆっくりと停車…あっという間に女の子たちが集まり、この広い歩道に溢れだす。
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