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女装と復讐 -街華編-

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《金魚とメイクのやり合いっこしてみたい》に続く、詩織からのもう一つのお願い…それは《今度から私と金魚が街へ出掛けるときは、私のメイクを金魚にしてもらいたいな》…だった。

そして、今まで僕と詩織のやり取りを、こんな間近で黙って見ていたアンナさんがようやく一言、僕に訊いてきた。


『金魚、初めて自分以外の他の女の子…詩織にメイクしてみて、どうだった?』


アンナさんのそれに応え、僕は《違和感を感じた》ことを素直に伝えた。


『そうよね。そしてもっと色々な女の子たちのメイクを体験できれば、今よりももっと成長できる。それと、金魚のメイクへの感性とセンスや才能は、目に留めるほど本当に素晴らしいんだ…ってことを分かって』


なんか…そうアンナさんに言って褒めてもらえると、何とも言えない感情がぐっと胸に込み上げてきて、凄く…本当に嬉しい。

…けど、そんなに色んな女の子たちに、メイクできるほどの環境でもないことも、アンナさんはもちろん分かってる。


『…だから、詩織だけでも《自分のメイクスキルを成長させるためのいい教材》と思って、これからの詩織のメイク…快く引き受けてあげたら?』


それに僕が『はい』と答える前に、アンナさんがもう一言付け加えた。


『詩織があなたに、今後の自分自身のメイクをお願いするって、その意味…解るわよね?』


はい。僕だって解ってます。
女の子たちにとってメイクって、その仕上がりの良し悪しによって、その日の気分や運、そのほか全ての物事に影響し、左右するってほど本当に、大切で重要なものなんだってこと。

つまり、そのメイクを僕にお任せするってのは、詩織が僕のメイクを認めてくれた《最高の賞賛》なんだってことも。


「おーい、アンナさーん…あれ?居ねーのか…?」


あっ、特別客室の扉の向こうから秋良さんの声!
杏菜さんが慌てて店内へと出てゆく。


「ごめんね。秋良くん」

「おぉ。いたいた。あの2人は?」






アンナさんが少し開いた扉の隙間から顔を出し、僕らを呼んだ。


『詩織、金魚。行くわよ』

『ちょっと待ってアンナさん!ここ片付けなきゃ!』


詩織があたふたと慌てだす。


『そんなのは帰ってきてからでいいの。ほら2人とも。早くして』


僕は忘れて置いて行かないよう、プレゼントの入ったあの白い紙袋の手提げを、しっかりと左手に握った。






午後7時18分…着いた場所は、早瀬ヶ池から見て10kmほど東にある、とある飲み屋街。


『よぉし。ここな。アンナさんもお前らも、さぁさぁ遠慮なく入った入った』


…見た目にも、入り口の照明や電工看板がチカチカと派手な、4階建ての年季の入った小さなビル…《焼き鳥居酒屋-野ノ坂-》…?






店内に入ると…凄い人混み。
すぐに店員のお兄さんが駆け寄ってきた。


『いらっしゃいませー』

『《愉快なアンナファミリー》で予約の者だけど』


ゆ…愉快なアンナファミリーって…。


『《愉快なアンナファミリー様》ですね。見せの奥の階段を上がって3階ですねー』

『どうも』


秋良さんが店員さんに軽く挨拶をして、アンナさんとともに奥へと入ってゆく。僕と詩織も秋良さん達のあとに続いて、挨拶しながら入っていく。


『こんばんはー。お邪魔しまぁーす♪』
『…こんばんは』

『いらっしゃいませ。どうぞごゆっくり』

























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