上 下
268 / 490
女装と復讐 -街華編-

page.257

しおりを挟む
『ねぇ信…あ、ごめん金魚。もうちょっと…ちゃんとこっち向いて。私に完成したメイクを見せて』

『もうちょっ、ちゃんと…ってなに?』


僕はそう独り言のように言いながら、横目でちらりと詩織を見て…座り直して上体ごとひねって、詩織に顔を向けた。

その僕の顔を、ぐいっと近づいて覗き込む詩織。


『はぁ…ほんとだ。こんなに近くで見ても…凄く丁寧に、綺麗にメイクできてる。確かに上手…』


詩織の体がぐいぐいと…顔がどんどん僕に近付いてくる…!


『ちょ…詩織!顔…近過ぎだって!』

『あ、きゃはははは。ごめんね』


詩織のぱっちりキラキラした瞳やうるうるピンクの唇を、こんなにもの凄く間近で、じかに見たのは初めてだ。


『あの…金魚ぉ…1こだけ私のお願…やっぱ2こ!…聞いてくれない?』

『私のお願い?』

『うん。私のお願い。2こ』


…なんだろう…詩織のお願いって。
アンナさんが見てるからか、詩織の唇が僕の耳元へと近づいてきて…そっと小声で僕に言った。


「先週…アンナさんとナオさんが、金魚をお化粧するの…取り合って喧嘩してたでしょ?」

『あー…うん』

「まず私の1こ目のお願いは…金魚のお化粧、私もやってみたいの」


あー。そういうことか。


「アンナさん達が…あんな取り合いの喧嘩をするくらい…ほんとに金魚をお化粧するのって、気持ちいいのか…どうなのかなぁ?…って」

『…。』


…あぁ…そっちだったか…。


『…って、どうせ聞こえてたんでしょ?アンナさん…ダメ?』


一応…アンナさんにお伺いしてみる詩織。


『別にいいわよ』

『やったぁ』






『詩織、僕へのもう1つのお願いってのは…?』

『あ、そうそう…えぇっと…』


詩織は、少し躊躇しながらそれを言い始めた。


『私も自分のお化粧は、毎日もちろん自分でやってるんだけど…』


うんうん。


『…綺麗にお化粧してるように見えるけど…実は私、お化粧が下手っぴーで…意外と大雑把で…面倒くさがり屋で、ちょっといい加減だったり適当だったりするのね…』


大雑把…面倒…いい加減…適当…。どれも似たような意味なんだけど。


『…だっ、だから…もし、金魚が私にお化粧をしてくれたら、どんな感じになるのかな…やっぱり出来上がりは違うのかなぁ…もっと可愛くなれたりするのかなぁ…って。あはは…』


ふむふむ。なるほど。


『だから!…いい?ダメ?ねぇ金魚…』

『うん…いいよ』


詩織のキラキラ瞳が、更にキラキラと輝きだした。


『ほーんとにー!?やったぁ!ありがとう金魚!』


ぱっと明るい笑顔に変わって、可愛らしく喜んでみせる詩織。


『じゃあじゃあ…来週、私のお化粧道具持ってくるね!』

『あの…別に持ってこなくてもいいんじゃない…?』

『えっ?…あー。そっか…きゃはははは』

























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...