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女装と復讐 -躍動編-
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春華さんが、もう一度マイクを手に取り、僕にウィンクして見せた。
『みんな、いい?テンポは92BPM…少しゆっくりで落ち着いた速さで。宜しくね!』
イントロは啓介さんのベースギターから。そのあとドラムが入り、最後に秋良さんとわっちさんのギターが入った。
メロディーラインはとても優しくて、とても心地がよく綺麗なのに、それでいて元気と明るさも、なんとなく感じられる…。
♪ 春の夕暮れ誘われ ビルの屋上へのぼった
待ってた彼女振り向き 私にそっと打ち明けた
失恋したって彼女 もうすぐ夜がくるね
明日からまた頑張ろう 絶対良いことあるから…♪
春華さんも、さっきとはすっかり変わって、とても丁寧に…大切に歌ってる感じ。そりゃ、彼氏である秋良さんの作詞した歌…だから、思い入れは特別なのかも…。
そして…曲はどんどん進んで、歌のサビだろう歌詞の部分が。
♪ 月の女神が今 見守ってるこの街は
キラキラと煌めいて 私たちみたいだね
どんな辛いときも いつもここに来よう
夜の街のネオンが 心を癒してくれる…♪
『はーぁ。こういう歌もいい…気持ちいいねー…』
凄くいい笑顔で、マイクを一旦マイクスタンドに戻した春華さん。
『どうだ?歌えそうか?金魚』
『うーん…ん』
僕は秋良さんに、ちょこんと首を傾かせて見せた。
『じゃあ歌の初めから、俺のギターに合わせて、ゆっくりと確認しながら流してみるか。ゆっくりとな』
『よし。じゃあ私も金魚ちゃんと、歌の確認一緒にやろおっと』
『宜しくお願いします』
『…ここは《メイクも服もお洒落して 夢を追い続けてた》だ』
秋良さんがシャララーと、ギターを鳴らす。それに合わせて、僕と春華さんはゆっくりと、ギターに合わせ息を合わせて歌ってみる。
♪メイクも服も~お洒落して~夢を追い続~け~て~た~♪
突然、秋良さんのギターの伴奏が止まった…?
『そういや…金魚』
『えっ?あ…はい』
『お前…どれくらいカラオケで歌ったことある?』
…えぇ…。
正直言うと…友達なんてほぼいなかったし…そもそも、僕の育った田舎にカラオケ屋さんなんて、1軒も無かったし…。
だから…つまり…僕はカラオケ屋さんで歌ったって経験さえ、ほぼ皆無…。
『あ…あの…』
『あ?なんだ?』
『実は私…人前で歌ったこととか…一度も…』
『はぁ?…ないのか!?』
ひぃぃぃ…。
僕はまるで《秋良さんに怒られた》みたいに、体を縮ませ強ばらせた…。
『そうか…でも金魚、もう少し自信を持って歌ってもいい。高音も出てて、なかなかいい歌声してるからな』
…ひぃぃ…えっ?
『うん!声が可愛くて上手だよ。金魚ちゃんの歌って。だから頑張って!』
…って褒めてはもらえたけど…。
そんな、カラオケ屋さんで、まともに歌ったこともない僕が《藤浦市スプリングフェスタ》で、何百人って観客…女の子たちの前で歌うってんだから…なんて恐ろしい話だか…。
『またお邪魔しまーす』
『お邪魔しまーす』
『失礼しまーす』
『まーす♪』
あの女子高生たちが、今度は4人で戻ってきた。
僕はマイクスタンドを両手でぎゅうっと握り、俯いて軽く目を閉じた。
『金魚さんの立ち姿、カッコいい♪』
『うん。金魚さんカッコいいー♪』
『きょ…今日は、ろ…ROCKじゃなくて…ちょっとゆっくりめの…ぽ、POPを歌ってみ…見せるね…』
『はーい♪』
『はぁぁい♪』
『わぁーい♪』
『楽しみー♪』
『…。』
…秋良さんは、歌う僕の声を初めて聞いて『なんか聞いたこともない歌声だな…』って言ってた。
春華さんも『スーパーウルトラ中性的♪&魅力的ミステリアス不思議ボイス』とか…意味不明な感想をくれた。
正直…自分の歌唱力に自信がない。けど今さら躊躇もしてられない。
…はーぁ。
僕は大きく息を払った。そして俯いたまま、少しだけ薄く目を開いた。
『みんな、いい?テンポは92BPM…少しゆっくりで落ち着いた速さで。宜しくね!』
イントロは啓介さんのベースギターから。そのあとドラムが入り、最後に秋良さんとわっちさんのギターが入った。
メロディーラインはとても優しくて、とても心地がよく綺麗なのに、それでいて元気と明るさも、なんとなく感じられる…。
♪ 春の夕暮れ誘われ ビルの屋上へのぼった
待ってた彼女振り向き 私にそっと打ち明けた
失恋したって彼女 もうすぐ夜がくるね
明日からまた頑張ろう 絶対良いことあるから…♪
春華さんも、さっきとはすっかり変わって、とても丁寧に…大切に歌ってる感じ。そりゃ、彼氏である秋良さんの作詞した歌…だから、思い入れは特別なのかも…。
そして…曲はどんどん進んで、歌のサビだろう歌詞の部分が。
♪ 月の女神が今 見守ってるこの街は
キラキラと煌めいて 私たちみたいだね
どんな辛いときも いつもここに来よう
夜の街のネオンが 心を癒してくれる…♪
『はーぁ。こういう歌もいい…気持ちいいねー…』
凄くいい笑顔で、マイクを一旦マイクスタンドに戻した春華さん。
『どうだ?歌えそうか?金魚』
『うーん…ん』
僕は秋良さんに、ちょこんと首を傾かせて見せた。
『じゃあ歌の初めから、俺のギターに合わせて、ゆっくりと確認しながら流してみるか。ゆっくりとな』
『よし。じゃあ私も金魚ちゃんと、歌の確認一緒にやろおっと』
『宜しくお願いします』
『…ここは《メイクも服もお洒落して 夢を追い続けてた》だ』
秋良さんがシャララーと、ギターを鳴らす。それに合わせて、僕と春華さんはゆっくりと、ギターに合わせ息を合わせて歌ってみる。
♪メイクも服も~お洒落して~夢を追い続~け~て~た~♪
突然、秋良さんのギターの伴奏が止まった…?
『そういや…金魚』
『えっ?あ…はい』
『お前…どれくらいカラオケで歌ったことある?』
…えぇ…。
正直言うと…友達なんてほぼいなかったし…そもそも、僕の育った田舎にカラオケ屋さんなんて、1軒も無かったし…。
だから…つまり…僕はカラオケ屋さんで歌ったって経験さえ、ほぼ皆無…。
『あ…あの…』
『あ?なんだ?』
『実は私…人前で歌ったこととか…一度も…』
『はぁ?…ないのか!?』
ひぃぃぃ…。
僕はまるで《秋良さんに怒られた》みたいに、体を縮ませ強ばらせた…。
『そうか…でも金魚、もう少し自信を持って歌ってもいい。高音も出てて、なかなかいい歌声してるからな』
…ひぃぃ…えっ?
『うん!声が可愛くて上手だよ。金魚ちゃんの歌って。だから頑張って!』
…って褒めてはもらえたけど…。
そんな、カラオケ屋さんで、まともに歌ったこともない僕が《藤浦市スプリングフェスタ》で、何百人って観客…女の子たちの前で歌うってんだから…なんて恐ろしい話だか…。
『またお邪魔しまーす』
『お邪魔しまーす』
『失礼しまーす』
『まーす♪』
あの女子高生たちが、今度は4人で戻ってきた。
僕はマイクスタンドを両手でぎゅうっと握り、俯いて軽く目を閉じた。
『金魚さんの立ち姿、カッコいい♪』
『うん。金魚さんカッコいいー♪』
『きょ…今日は、ろ…ROCKじゃなくて…ちょっとゆっくりめの…ぽ、POPを歌ってみ…見せるね…』
『はーい♪』
『はぁぁい♪』
『わぁーい♪』
『楽しみー♪』
『…。』
…秋良さんは、歌う僕の声を初めて聞いて『なんか聞いたこともない歌声だな…』って言ってた。
春華さんも『スーパーウルトラ中性的♪&魅力的ミステリアス不思議ボイス』とか…意味不明な感想をくれた。
正直…自分の歌唱力に自信がない。けど今さら躊躇もしてられない。
…はーぁ。
僕は大きく息を払った。そして俯いたまま、少しだけ薄く目を開いた。
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