女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

文字の大きさ
上 下
167 / 490
女装と復讐 -躍動編-

page.156

しおりを挟む
僕はもう我慢できなくなって、遂に正直に訊いてしまった。


『僕…色々見たけど、ほんと何も解らないんだ…ごめん。説明してくれないかな…』


忠彦くんは笑って頷いた。


『俺は、女装家じゃなくて…なりたいって、本気で思ってる男の一人なんだ…』

『…えっ!?』


彼は三面鏡の前の小さな椅子に座った。


『…つい去年まで、都内の《男の娘》のお店でバイトしてた。今は…こっちに引っ越してきて、本物の女の子たちに混ざって週に3日、夜働いてる』


《夜の接客業》以外にもお昼は普通に男性として週に2日、ここから少し離れた街にあるコンビニで、お昼にバイトしてるんだとか。

夜のほうのお店では…忠彦くんは《18歳以上です》と、年齢を誤魔化して働いてるという。


『…けど、お店に側も本当は18歳未満だって、感づいてるだろうと思うんだ…』

『…。』


彼は本物の男だけど、普通に女の子の姿となって働いてる。
僕だって女装はしてるけど…彼とは目的も、たぶんきっかけも…何もかも全てが違う…。


『俺には夢があるんだ。お金をいっぱい貯めて、タイで本物の、綺麗な女の子になりたい…!』

『!!』


僕は忠彦くんが、僕より歳下だとは信じられなくなってきた…。
だってさ、もう働いてるし…普通《女性に性転換したい》なんてことをさぁ、17歳の男子がだよ?さらりと言っ…こんなもんなの?近頃の17歳って…?


『もしかして忠彦くん…あの《男子として生まれてきたけど、実は男子が好き》とかって言…』

『はぁ?何言ってんの?信吾くん。全然違うよ』


えっ?違う?って…じゃあどういうこと!?…また即答で返ってきたけど…。


『俺は…《俺の女の顔》…緋子が大好きなんだ』

『んー……ん?』


僕のはっきりしない反応に、少しがっかり顔を見せる忠彦くん。


『じゃあ…分かった。俺の女顔見せるよ。そのほうが話が早いから』

『で…できるの!?忠彦くん…メイク!?』


忠彦くんは僕を見た…更に冷めた目で…。
手作り三面鏡…メイク解説書…たくさんの化粧道具…これだけ揃ってんのに、忠彦くんがメイクできないわけ…なのに、僕ときたら…。


『信吾くんだって女装してんのに…まさかね…自分ではメイクできないとか…言わないよねぇ…?』


『ぇ…えぇぇ…!』


ガーン。






…彼は三面鏡の台の上に必要な化粧品道具を並べ、丁寧に丁寧にメイクをしながら、僕に語り掛けてきた。


『俺が…《緋子》が好きだと目覚めたのは小6の夏。11歳歳上の従姉弟の姉ちゃんと、家ん中で走り回って、ふざけて追いかけっこしてて…油断した俺が捕まって…姉ちゃんが罰ゲームだよって、俺に女のメイクしてきたのがきっかけで…』


…そうなんだ。


『…初めて鏡で自分の女顔を見たとき…俺は全身が震えたよ。スゲー綺麗ぇ!!…って』


…んー…んん?
ちょっ、今の話…僕が初めてアンナさんにメイクして貰って、僕がその女装メイクした顔を見た、あのときのエピソードに似てない…?



























しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

笑わない妻を娶りました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:313

いじめ物語 美花学園

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

悪役令嬢に腐女子が転生した結果

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:861

古の物語

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

一般人がゆく!一年間のまったりVtuberスローライフ。

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

処理中です...