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女装と復讐 -躍動編-

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扉が開くと中は真っ暗…なんとも言えない、いい甘い香りがふわっと漂った。これ…何の香り…?


『えぇと…玄関のスイッチは…と』


ぱっと玄関が明るくなる。下駄箱の上には、クレーンゲームの景品の縫いぐるみがいっぱい。
あー。あの《ウマを美少女にしたゲームのあれ》だ。
それらがご主人さまを待ってたかのように、綺麗に並べられている。


『あ、悪いんだけど玄関の扉、閉めてくれる?』

『あ…はい。うわわわ!』


軽く閉めたつもりだったのに、鉄の玄関扉は勢いよく《バタンッ!!》と、もの凄い音を立てて閉まった。

靴を脱ぎ、廊下の電気は点けず、忠彦くんはどんどんと奥へと進む。
ドアの開けっ放しだった奥の部屋…ガチガチッと音がして、暗い部屋が明るくなった。


『信吾くん、こっちに来てよ』

『あ、うん』


…久しぶりにドキドキしながら、僕もおくへと進む…。彼は本当に何者なんだろう。忠彦くんは『俺ん家に来たら一目で全てが理解できるよ』って言ってたけど…。

ゆっくりトントンと、つま先歩きでテンポ良く、周りを気にしながら廊下を進む…あの明るい部屋に入ったら…鬼が出るか蛇が出るか…。




『…えぇぇっ!?…なにこの部屋!?』


僕はその部屋の入り口のところまで来て…一目見て何もかもが理解できた…どころか、余計にどういうことなのか解らなくなった…。

12畳だろう広さの部屋…目の前の奥の壁には手作りらしき三面鏡が置いてあり、それの左右の鏡の縁には、お手製で照明が取り付けられている。

部屋に入って後ろを振り向くと…そこにはテーブルがひとつ。国内海外問わず、様々なメーカーの香水のガラス小瓶がびっしりと、無造作に置かれている。
まだ香水液が残っている小瓶もあれば、もう空になっている小瓶もある。

さっき漂ってた甘い香り…たぶん、これだったんだろう。

テーブルの横には本棚。たくさんのコスメ情報誌や化粧テクニックの解説書などが、きちんと整頓されて並んでいる。


『…凄い』

『三面鏡の左横に置いてある洋服小タンスの中…見てみる?』

『えっ?…うん』


引き出し3段の小タンス。ゆっくりと…まずは一番上の引き出しを引っ張り開けて、中を覗いてみる…。次にその下…最後に一番下…。

どの引き出しにも、入ってたのは洋服じゃない。全てが揃った、たくさんの化粧道具だ。


『…この部屋は…?』

『そうだよ。俺の手作りのメイクルーム』

『…手作りのメイクルーム!?』


忠彦くんは、自信と自慢気に満ちた表情で頷いた。


『あっちにも小さな和室があるんだけど、あっちは洋服クローゼット兼ベッドルームとして使ってる』


『忠彦くん…女装するの?』

『女装とだけは…絶対言われたくない…!』

『!!?』


彼ははっきりと、即答して返した。


























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