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女装と復讐 -躍動編-

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瀬ヶ池へ向かう《おばタク》の車内で、詩織は…なんだかそわそわしてた。

…毎回毎週《おばタク》に乗るたびに『岡ちゃん、りんちゃんからのLINEの返信来たかなぁ?』って詩織は訊いてた。
だから、これ以上は《しつこい》と思われてしまいそうで訊き辛い…ってのが、詩織がそわそわしてる理由。


『…ねぇ、詩織ちゃん』

『えっ?何!?岡ちゃん』


詩織が後部座席から勢いよく立ち上がる。だから危ないって…。


『鈴ちゃんからのLINEの返信ね…』

『うん…来たの?』

『えぇ。来たわよー』

『えっ…えっ!ほんとー!?』


さっきの雰囲気とは一転して、わあっと表情に明るさが戻る詩織。


『岡ちゃん!それで…どんな返信だったの!?』

『ふふふ。鈴ちゃんの言ってた《普通の女の子っぽくない雰囲気の子》ってね…』

『…う、うん』


詩織の瞳のキラキラが相当高まって…かなりヤバそうな状態…。嬉しそうな詩織は、少し不安そうな表情も秘めながら…岡ちゃんからが聞けることを、期待してまってるよう。


『…やっぱりね、金魚ちゃんのことだったわ』

『ほんと!?ほらぁ金魚!やーったぁ!』


突然暴れ出すように万歳し…かと思えば襲い掛かる仔熊の如く、詩織は僕をガッと抱き締めてきた…!

だーから…僕も嬉しいけど、車ん中で暴れたら危ないって。さっきから何度も…。


『…あとね』

『えっ?…あと?なに!?』


詩織は少しだけ落ち着いて、もう一度岡ちゃんのほうを見た。


『鈴ちゃん、詩織ちゃんのことも知ってたわよ』

『なんで!?』


《おばタク》は新井早瀬駅の付近で、歩道脇の路肩に止まって停車。岡ちゃんは上体ごと捻って振り返った。


『《G.F.アワード》の会場で、金魚ちゃんの隣に座ってたのを見てたし、帰りの《おばタク》に乗る前にも、2人が揃って私を見送ってくれてたのを、よーく覚えてたから…って』

『…あの鈴ちゃんが、私のことも見て覚えてくれてたなんて…なんか、凄く嬉しい…』


…詩織は嬉しさのあまり、ほろりと涙をこぼしそうになったけど…持ち直してにこっと可愛く笑った。






岡ちゃんが、いつものように左のドアを開けてくれた。そして右手を差し伸べてくれた岡ちゃんに左掌を重ね、立ち上がって僕らは《おばタク》から降りた。


『ありがとう。岡ちゃん♪』


野次馬のように《おばタク》付近に集まってきていた、瀬ヶ池の女の子たち。僕らがこの高級タクシーを週末、常時利用していることはもう十分知られている。

…おかげで『マジで金魚って《デビュー前のアイドルの卵》とかなんかじゃないの!?』『それともお金持ちの子!?』なんて噂する声を聞いたりも。

…んなわけないし。




僕らは走り去る《おばタク》に手を振った。


『さてさて…じゃあ、バレンタインチョコを買いに行こう。金魚』

『うん。行こう』


…野次馬の女の子たちなんて眼中になし。僕らは堂々と遠慮なく、さっさと歩き出した。























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