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女装と復讐 -発起編-
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…中学生なのに、クリスマス・イブの夜に瀬ヶ池でデート…なんてお洒落だ。本当に。
僕が中学生の頃なんていったら…お母さんが隣町まで車で行って買ってきてくれたクリスマスケーキを、家で父さんと母さんと囲んで…。
僕が生まれ育ったのは田園風景広がる田舎だし、ましてや中学の女子を誘って、瀬ヶ池みたいな華やかな街でクリスマスデートなんて…想像や憧れでしかなかった…。
その中学生カップルも、僕らが見ていたのに気付いたらしい。
『あ、あの…僕たち、そろそろ行きますので、ベ…ベンチどうぞ』
『ちょ…待って!あなたたち!私たちにそんな気を遣うことなん…て…』
男子が顔を少し赤らめて立ち上がり、女子も続いて立ち上がって、彼らは恥ずかしそうに優しく手を繋ぎ合った。そしてその場を去る中学生カップルの後ろ姿は、大通りの広い歩道の向こうへと消えていった…。
なんか…彼らのデートを邪魔したようで、今更だけど…ごめん。
『あの中学生カップル…初デートね。間違いないわ』
『…えっ!?判るの!?』
女の子って…いや、詩織って…一目見ただけで、本当にそんなの判るの!?…だったらマジで凄いんだけど。
『んじゃあ…せっかくベンチ譲ってもらったんだし…金魚、ちょっと座っていく?』
『あ…うん』
ベンチに座る詩織。僕も続いてその隣に座った。
隣に座ってはみたものの…詩織は目の前を行き交うカップルたちを、ただ黙って目で追ってるだけ。だから僕は、しばらく詩織に話し掛けるタイミングを掴めずにいた。
『あ…あの…詩織』
『えっ?なぁに?』
そう応えてくれた詩織は今も僕を見ず、行き交うカップルたちを、まだ目で追っていた…。
『今日って…クリスマス・イブだよね…』
『うん』
僕は思いきってあのことを訊いてみた。
『こんな大切な聖なる夜に…いいの?』
『いいの?…って?』
だって…イブの夜っていえば、やっぱり一番好きな人と過ごしたい…そう思うものだと思っていたから。
それを詩織に伝えると詩織は一瞬、驚いたような表情を見せた。
『…うん。彼ね、3月で大学を卒業するの。ほら、今の時期って卒論とか就活とか、企業説明会とか…色々と忙しくなるじゃない?』
なるほど…そっか。彼は年上の大学4年生なんだ。それだったら今は忙しい頃かもしれない…。
『だから…詩織には悪いけど、イブは一緒には過ごせないんだ…って。詩織ごめんな、って。彼…』
本当に寂しそうに…やや下を向き、肩を震わせながら語る詩織…。そしてこの詩織の説明は確かに納得がいく。
この彼の語りがこんな瞬時に出てくることを考えると…僕は嘘じゃないって気がするんだ。
だけど、もしこれが即興の作り話で、ほんの一瞬の閃きだけで、これの全てを思いついたというのなら…詩織は実はもの凄く頭が良いってことだし、彼女の演技力は相当に凄い!…ってことになる…。
僕が中学生の頃なんていったら…お母さんが隣町まで車で行って買ってきてくれたクリスマスケーキを、家で父さんと母さんと囲んで…。
僕が生まれ育ったのは田園風景広がる田舎だし、ましてや中学の女子を誘って、瀬ヶ池みたいな華やかな街でクリスマスデートなんて…想像や憧れでしかなかった…。
その中学生カップルも、僕らが見ていたのに気付いたらしい。
『あ、あの…僕たち、そろそろ行きますので、ベ…ベンチどうぞ』
『ちょ…待って!あなたたち!私たちにそんな気を遣うことなん…て…』
男子が顔を少し赤らめて立ち上がり、女子も続いて立ち上がって、彼らは恥ずかしそうに優しく手を繋ぎ合った。そしてその場を去る中学生カップルの後ろ姿は、大通りの広い歩道の向こうへと消えていった…。
なんか…彼らのデートを邪魔したようで、今更だけど…ごめん。
『あの中学生カップル…初デートね。間違いないわ』
『…えっ!?判るの!?』
女の子って…いや、詩織って…一目見ただけで、本当にそんなの判るの!?…だったらマジで凄いんだけど。
『んじゃあ…せっかくベンチ譲ってもらったんだし…金魚、ちょっと座っていく?』
『あ…うん』
ベンチに座る詩織。僕も続いてその隣に座った。
隣に座ってはみたものの…詩織は目の前を行き交うカップルたちを、ただ黙って目で追ってるだけ。だから僕は、しばらく詩織に話し掛けるタイミングを掴めずにいた。
『あ…あの…詩織』
『えっ?なぁに?』
そう応えてくれた詩織は今も僕を見ず、行き交うカップルたちを、まだ目で追っていた…。
『今日って…クリスマス・イブだよね…』
『うん』
僕は思いきってあのことを訊いてみた。
『こんな大切な聖なる夜に…いいの?』
『いいの?…って?』
だって…イブの夜っていえば、やっぱり一番好きな人と過ごしたい…そう思うものだと思っていたから。
それを詩織に伝えると詩織は一瞬、驚いたような表情を見せた。
『…うん。彼ね、3月で大学を卒業するの。ほら、今の時期って卒論とか就活とか、企業説明会とか…色々と忙しくなるじゃない?』
なるほど…そっか。彼は年上の大学4年生なんだ。それだったら今は忙しい頃かもしれない…。
『だから…詩織には悪いけど、イブは一緒には過ごせないんだ…って。詩織ごめんな、って。彼…』
本当に寂しそうに…やや下を向き、肩を震わせながら語る詩織…。そしてこの詩織の説明は確かに納得がいく。
この彼の語りがこんな瞬時に出てくることを考えると…僕は嘘じゃないって気がするんだ。
だけど、もしこれが即興の作り話で、ほんの一瞬の閃きだけで、これの全てを思いついたというのなら…詩織は実はもの凄く頭が良いってことだし、彼女の演技力は相当に凄い!…ってことになる…。
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