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女装と復讐 -発起編-
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午後10時51分。僕は玄関で、帰る春華さんを見送っていた。
『…ありがとうございました』
『ううん。こちらこそ。また来週の金曜日に来るね』
そう言って玄関のドアを開け、外に出る春華さん。
『じゃあね、信吾くん。またね』
『はい。おやすみなさい』
『えへへっ。金魚ちゃんにも…お・や・す・みー…ちゅっ♡』
『……。』
小さく投げキッスして春華さんはドアを閉め、帰っていった…。
僕は心の中で5つ数えて…ドアの錠をガチャリと掛ける…はぁ。
春華さんとも話してたんだけど…明日は12月24日の土曜日。クリスマス・イブ。
そして…今日の午後2時過ぎに来たアンナさんからの電話。
《『明日は午後4時頃に、お店に着くように来て』》
いつもは朝8時前後に美容院に着くよう出掛けてるんだけど…そっか。午後4時か。また暇潰しに苦労しそうだ。
更に次の日…25日の日曜日は…。
…っていうわけて、今日はクリスマス・イブ。
寂しくも…可愛い彼女のいない僕は、そんなメルヘンチックな予定もなく…部屋の掃除と洗濯を済ませ、独りパソコンの無料脱出ゲームを延々とやっている。
本日8つ目の密室に挑戦中。8つもやっても、まだひと部屋も脱出できない僕…。
こんなゲームの密室からの脱出なんか、本当はどうていいんだけど…それより、こんな寂しい大学生活…メダカ生活から早く脱出したいよ…ほんと。
…今頃詩織は…付き合ってるっていう《彼氏》と、楽しくデートでもしてるんだろうな…。
ふと、詩織のことが頭に浮かぶ…。
どんな人なんだろう…《詩織の彼氏》って。たぶん、背が高くてもの凄いイケメンだろう。間違いない。
あんなにも可愛い詩織が彼女だとか…どんだけ羨ましい彼氏なんだよ…ちくしょ。
…もう止めよう。そういう事をいちいち気にする…考えるのは。心の狭い証拠だ。
あーくそっ!8つ目の密室もダメだダメだ!!諦めて次…9つ目の別の密室に挑戦…。
…ただ今、地下鉄の電車に揺られ、未だに《あ、瀬ヶ池のメダカ!》と囁かれながら…アンナさんの美容院へと向かっている。
そして結局…18個の脱出ゲームをやって…18回脱出を諦めた…。
美容院の表の階段を上がり、玄関扉を開ける。
『いらっしゃいま…あ。篠崎店長ー』
店内の床に散らばった、カットした毛を掃除していた従業員のお姉さんが、慌てて掃除を終えてアンナさんと交代する。
もう毎週のことだから、僕もアンナさんも黙って、当然のように特別客室へと移動する。
『まだ詩織は来てないんですか?』
『えぇ。少し遅れてるみたい』
『…ありがとうございました』
『ううん。こちらこそ。また来週の金曜日に来るね』
そう言って玄関のドアを開け、外に出る春華さん。
『じゃあね、信吾くん。またね』
『はい。おやすみなさい』
『えへへっ。金魚ちゃんにも…お・や・す・みー…ちゅっ♡』
『……。』
小さく投げキッスして春華さんはドアを閉め、帰っていった…。
僕は心の中で5つ数えて…ドアの錠をガチャリと掛ける…はぁ。
春華さんとも話してたんだけど…明日は12月24日の土曜日。クリスマス・イブ。
そして…今日の午後2時過ぎに来たアンナさんからの電話。
《『明日は午後4時頃に、お店に着くように来て』》
いつもは朝8時前後に美容院に着くよう出掛けてるんだけど…そっか。午後4時か。また暇潰しに苦労しそうだ。
更に次の日…25日の日曜日は…。
…っていうわけて、今日はクリスマス・イブ。
寂しくも…可愛い彼女のいない僕は、そんなメルヘンチックな予定もなく…部屋の掃除と洗濯を済ませ、独りパソコンの無料脱出ゲームを延々とやっている。
本日8つ目の密室に挑戦中。8つもやっても、まだひと部屋も脱出できない僕…。
こんなゲームの密室からの脱出なんか、本当はどうていいんだけど…それより、こんな寂しい大学生活…メダカ生活から早く脱出したいよ…ほんと。
…今頃詩織は…付き合ってるっていう《彼氏》と、楽しくデートでもしてるんだろうな…。
ふと、詩織のことが頭に浮かぶ…。
どんな人なんだろう…《詩織の彼氏》って。たぶん、背が高くてもの凄いイケメンだろう。間違いない。
あんなにも可愛い詩織が彼女だとか…どんだけ羨ましい彼氏なんだよ…ちくしょ。
…もう止めよう。そういう事をいちいち気にする…考えるのは。心の狭い証拠だ。
あーくそっ!8つ目の密室もダメだダメだ!!諦めて次…9つ目の別の密室に挑戦…。
…ただ今、地下鉄の電車に揺られ、未だに《あ、瀬ヶ池のメダカ!》と囁かれながら…アンナさんの美容院へと向かっている。
そして結局…18個の脱出ゲームをやって…18回脱出を諦めた…。
美容院の表の階段を上がり、玄関扉を開ける。
『いらっしゃいま…あ。篠崎店長ー』
店内の床に散らばった、カットした毛を掃除していた従業員のお姉さんが、慌てて掃除を終えてアンナさんと交代する。
もう毎週のことだから、僕もアンナさんも黙って、当然のように特別客室へと移動する。
『まだ詩織は来てないんですか?』
『えぇ。少し遅れてるみたい』
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