女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -発起編-

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詩織が美容院に来るのが遅れている…ほらきた。やっぱりデートしているに違いない。そして今、もしかしたら…詩織と彼氏が束の間の別れを惜しんでいる頃かもしれない。

でも、本来ならそれが普通。
毎週毎週、2人がせっかく出会える貴重な土曜日を僕が《邪魔してた》ことを、詩織に申し訳なく思わないと…。
そんな複雑な心情のなか…ふと、そのことをアンナさんに訊いてしまった。


『あの…アンナさん。いいんですか?毎週毎週…ずっと土曜日、僕が詩織と一緒にいて』

『…どうして?なにか問題でも?』


美容院の《特別客室》へ入って『今夜、金魚が着る服よ』とアンナさんに渡されてすぐ、僕はそんな疑問を切り出した。


『問題ありますよ。だって詩織だって、たまには土曜日に会いたい時もあるはずですよ』

『会いたい?詩織が?…誰に?』

『誰に…って…』


…あれ?アンナさんって女性なのに、こんなに勘が鈍い人だった…?
アンナさんは普段見たことない、キョトンとした表情をしている。


『だから…か、彼氏ですよ』


アンナさんは軽く腕を組み、少し考えた…みたい。


『…彼氏?詩織の彼氏?…えっ、いるの?詩織に彼氏…って、どんな人?』


今度は逆に、僕がアンナさんに訊かれた。えぇ…僕だってそのを、詩織の口から直接聞いて知ってるのに、アンナさんが知らないって…。


『どんな人かは、僕も見たことない…ですけど』

『じゃあ、いつそれを聞いたの?』


今度は僕が記憶を巡らせて思い出すことに…。


『あれは…えぇと、確か…僕が天郷通りで《プレデビュー》した日ですから…11月の第1週の土曜日です』

『あら?意外と最近ね』


なぜ詩織は自分の彼氏を、アンナさんに紹介してないんだろう…?
アンナさんとはずっと、本物の姉妹のように付き合ってきたはずなのに…。


『…でも…それじゃ、おかしいわ』


おかしい?…なんで?


『だって、12月に入って《ほら、もうすぐクリスマスよ。早くいい人探しなさい。今年のクリスマスも独りで過ごすことになっちゃうから》って、詩織に言ったら…』


…今年のクリスマス…?
ということは…少なくとも今の詩織の彼氏は、去年のクリスマスから今年の11月の第1週までに出逢った人らしい。アンナさんの言うことが、もし本当に正しければ。


『…《うん。でも彼氏って、どうやって探したらいいのか私、解らないんだもん》って言ってたんだけど。詩織』


そうそう。詩織の言うとおり。
僕だってね、彼女の探し方に大失敗して、今じゃあ瀬ヶ池のメダカなんて呼ばれてますよ……って、えっ!?


『《どうやって探したらいいのか解らない》なんて…いかにも《今、彼氏はいません》って言ってるようなもんじゃないですか!?』

『そうよ。それに《来年の初詣で、神様にお願いしてみる!》って詩織、張り切って言ってたし。今も詩織は《フリー》だって、私は確信してるわ』


……か、確信!?



















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