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女装と復讐 -発起編-
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『…ううん』
僕はゆっくりと、首を横に振った。
『ごめんね…は僕の方だよ。ごめん詩織。行こう』
僕は詩織に笑顔を見せて振り向き、先に行きかけた。
『信吾、待って!』
『…何?』
呼ばれてもう一度振り返ると詩織は、自分の首に着けていたシルバーのチェーンネックレスを外して、僕に見せた…?
ネックレスにはプラチナのデザインリングが通され、キラキラと輝きながらぶら下がっている。
『これは…信吾がもう人前であがらない為の《charm》だからね。ほら…後ろを向いて』
僕がそれに応えて後ろを向くと、そのシルバーのチェーンネックレスを、僕の着る黒のタートルネックの上から着けてくれた。
『あ…ありがとう』
『へへっ。黒に銀…って色合いもいいね。行こう。信吾』
歩き始めた詩織のあとを追うように、僕も歩き始めた。
『ねぇ、今朝はちょっと寒かったけど、天気も良くて日差しも暖かくて、気持ちいいねー』
『うん。そうだね』
まるで嘘のように、すっかり周りなんて気にならなくなった。ありがとう…詩織。
そして2人、テンポ良く並んで歩きながら行くと…急に詩織が大通りの向こうの、小さな古臭いビルを指差した。
『見て。あのお店…何て書いてある?』
『あれ?…あ、《閉店売り尽くしセール》って書いてあるね…?』
『ねぇ聞いて。あのお店さぁ、2年も前から《閉店セール》って言っておきながらさぁー、今もまだやってんだけど。どう思う?インチキ商売もいいとこだよねー。早く潰れろー』
『あははは』
『きゃはははは』
詩織の言葉に僕は笑った。そして詩織の僕への気遣いが凄く感じられて…嬉しかった。涙が出そうだった。
何より、心から幸せな気分になれて久し振りに笑った、って気がする。
…ってか、コンタクトレンズって偉いな。本当に遠くまで視界スッキリ。
『ねぇ、ちょっと私の前を歩いてみて』
『…?』
そう言って一旦立ち止まり、僕の後ろを歩く詩織。
『ちょっと!ヤバいよ信吾!女の子の歩き方忘れてる!』
『…あっ!!』
そうだ!…女の子歩き…感情的に色々あったから忘れてた…!
『きゃははは』
『!?』
急に笑う詩織。駆けて僕の隣に追いついてきて、僕の左腕に自分の右腕を絡めてきた。
『ねぇ!信吾って凄いね!一瞬で女の子の歩き方に、完璧に修正できるとか!きゃははは』
詩織って…凄く明るくて、本当に街を歩くのが楽しそうだ。
僕は左隣で僕の腕に腕を絡めてる、詩織の横顔をちらりと見た。
今は僕も女の子の姿なんだけど…本当にデートしているような錯覚に陥りかけて…なんか詩織が凄く可愛く、愛おしく見えて…徐々に気分が高揚しはじめた…!
…自分で《これはマズい!!》と判断し、詩織に気付かれないように…そっと…絡まれた左腕を、解いた…。
僕はゆっくりと、首を横に振った。
『ごめんね…は僕の方だよ。ごめん詩織。行こう』
僕は詩織に笑顔を見せて振り向き、先に行きかけた。
『信吾、待って!』
『…何?』
呼ばれてもう一度振り返ると詩織は、自分の首に着けていたシルバーのチェーンネックレスを外して、僕に見せた…?
ネックレスにはプラチナのデザインリングが通され、キラキラと輝きながらぶら下がっている。
『これは…信吾がもう人前であがらない為の《charm》だからね。ほら…後ろを向いて』
僕がそれに応えて後ろを向くと、そのシルバーのチェーンネックレスを、僕の着る黒のタートルネックの上から着けてくれた。
『あ…ありがとう』
『へへっ。黒に銀…って色合いもいいね。行こう。信吾』
歩き始めた詩織のあとを追うように、僕も歩き始めた。
『ねぇ、今朝はちょっと寒かったけど、天気も良くて日差しも暖かくて、気持ちいいねー』
『うん。そうだね』
まるで嘘のように、すっかり周りなんて気にならなくなった。ありがとう…詩織。
そして2人、テンポ良く並んで歩きながら行くと…急に詩織が大通りの向こうの、小さな古臭いビルを指差した。
『見て。あのお店…何て書いてある?』
『あれ?…あ、《閉店売り尽くしセール》って書いてあるね…?』
『ねぇ聞いて。あのお店さぁ、2年も前から《閉店セール》って言っておきながらさぁー、今もまだやってんだけど。どう思う?インチキ商売もいいとこだよねー。早く潰れろー』
『あははは』
『きゃはははは』
詩織の言葉に僕は笑った。そして詩織の僕への気遣いが凄く感じられて…嬉しかった。涙が出そうだった。
何より、心から幸せな気分になれて久し振りに笑った、って気がする。
…ってか、コンタクトレンズって偉いな。本当に遠くまで視界スッキリ。
『ねぇ、ちょっと私の前を歩いてみて』
『…?』
そう言って一旦立ち止まり、僕の後ろを歩く詩織。
『ちょっと!ヤバいよ信吾!女の子の歩き方忘れてる!』
『…あっ!!』
そうだ!…女の子歩き…感情的に色々あったから忘れてた…!
『きゃははは』
『!?』
急に笑う詩織。駆けて僕の隣に追いついてきて、僕の左腕に自分の右腕を絡めてきた。
『ねぇ!信吾って凄いね!一瞬で女の子の歩き方に、完璧に修正できるとか!きゃははは』
詩織って…凄く明るくて、本当に街を歩くのが楽しそうだ。
僕は左隣で僕の腕に腕を絡めてる、詩織の横顔をちらりと見た。
今は僕も女の子の姿なんだけど…本当にデートしているような錯覚に陥りかけて…なんか詩織が凄く可愛く、愛おしく見えて…徐々に気分が高揚しはじめた…!
…自分で《これはマズい!!》と判断し、詩織に気付かれないように…そっと…絡まれた左腕を、解いた…。
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