28 / 490
女装と復讐 -発起編-
page.13
しおりを挟む
『アンナさん…僕をこんなに綺麗にメイクしてくれて…けど、何の期待にも応えられなくて…ごめんなさい』
アンナさんは驚いた顔をした。
『え、ぁ…ううん。何も気にしないで。あなたをメイクしてて私、すっごく楽しませてもらったから』
突然、僕の目の前に白い紙片が差し出された。菊江さんから。
…これ、名刺?
『可愛いお兄ちゃん。もし思い返して、やっぱり働きたいとか、お金に困ったときは、ここに電話してちょうだい』
僕は名刺を両手で受け取った。
【おかまバー・菊次郎の夜 携帯☎︎:080…】
…菊次郎の夜…。
これって、日本文学への冒涜じゃない…?このお店の名前。
僕はこの店名に、つい一瞬イラッとしてしまった…。
『あっ、ちょっと待ってて!』
そう言いながらアンナさんは、慌ててこの特別客室を出ていくと、しばらくしてまた戻ってきた。
『念のためにね。ここの名刺も渡しておくわ』
僕はアンナさんから受け取った名刺を見た。あの読めなかったフランス語らしき美容院の名前が書いてある。
『アンナさん、この店名【cloche dorée】って、何て読むんですか?』
『あ、それね。【クローシュ・ドレ】って読むの。《金色の鐘》って意味よ』
クローシュ・ドレ…へぇ。そう読むんだ…。
『じゃ、そろそろクレンジング始めようかしら…ね』
僕は、なんだか凄く申し訳ない気分になって…そして最後に、僕の女の子顔を記憶に焼き付けておこうと、もう一度だけ鏡をじーっと見る。
鏡に映る、その申し訳なさそうな複雑な表情が…まためちゃくちゃ可愛く見えた…。
『さぁ、もう一度椅子に座って』
僕はアンナさんの顔を見てウンと頷くと、振り返って椅子に戻り座った。
『…クレンジングを始める前に…最後に一言だけ言っておくわね…』
アンナさんは僕に『メイクしたあなたの顔、ちゃんと目に焼き付けた?』と訊いてきたから『はい』と答えた。
『…私は、瀬ヶ池の女の子たちを、そりゃもう数え切れないほどメイクしてきたし、メイクした顔をたくさん見てきた…』
僕は鏡に映る、僕の横に立つアンナさんと視線を合わせた。
『…あなたは《綺麗》だとか《美人》っていう方向性では、ちょっと勝ち目はないかもしれない…』
…勝ち目?
『…だけど《可愛い》という方向性なら、あなたは…あの何千人と集まる瀬ヶ池の女の子たちのなかでも、上位の10人に入るだけのメイクルックスを持ってるわ。そう断言する。だから自信を持って』
あの、瀬ヶ池に集まる何千人というお洒落な女の子たちのなかで…上位の10人!?自信を持って!?って…マジで!?
アンナさんは驚いた顔をした。
『え、ぁ…ううん。何も気にしないで。あなたをメイクしてて私、すっごく楽しませてもらったから』
突然、僕の目の前に白い紙片が差し出された。菊江さんから。
…これ、名刺?
『可愛いお兄ちゃん。もし思い返して、やっぱり働きたいとか、お金に困ったときは、ここに電話してちょうだい』
僕は名刺を両手で受け取った。
【おかまバー・菊次郎の夜 携帯☎︎:080…】
…菊次郎の夜…。
これって、日本文学への冒涜じゃない…?このお店の名前。
僕はこの店名に、つい一瞬イラッとしてしまった…。
『あっ、ちょっと待ってて!』
そう言いながらアンナさんは、慌ててこの特別客室を出ていくと、しばらくしてまた戻ってきた。
『念のためにね。ここの名刺も渡しておくわ』
僕はアンナさんから受け取った名刺を見た。あの読めなかったフランス語らしき美容院の名前が書いてある。
『アンナさん、この店名【cloche dorée】って、何て読むんですか?』
『あ、それね。【クローシュ・ドレ】って読むの。《金色の鐘》って意味よ』
クローシュ・ドレ…へぇ。そう読むんだ…。
『じゃ、そろそろクレンジング始めようかしら…ね』
僕は、なんだか凄く申し訳ない気分になって…そして最後に、僕の女の子顔を記憶に焼き付けておこうと、もう一度だけ鏡をじーっと見る。
鏡に映る、その申し訳なさそうな複雑な表情が…まためちゃくちゃ可愛く見えた…。
『さぁ、もう一度椅子に座って』
僕はアンナさんの顔を見てウンと頷くと、振り返って椅子に戻り座った。
『…クレンジングを始める前に…最後に一言だけ言っておくわね…』
アンナさんは僕に『メイクしたあなたの顔、ちゃんと目に焼き付けた?』と訊いてきたから『はい』と答えた。
『…私は、瀬ヶ池の女の子たちを、そりゃもう数え切れないほどメイクしてきたし、メイクした顔をたくさん見てきた…』
僕は鏡に映る、僕の横に立つアンナさんと視線を合わせた。
『…あなたは《綺麗》だとか《美人》っていう方向性では、ちょっと勝ち目はないかもしれない…』
…勝ち目?
『…だけど《可愛い》という方向性なら、あなたは…あの何千人と集まる瀬ヶ池の女の子たちのなかでも、上位の10人に入るだけのメイクルックスを持ってるわ。そう断言する。だから自信を持って』
あの、瀬ヶ池に集まる何千人というお洒落な女の子たちのなかで…上位の10人!?自信を持って!?って…マジで!?
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる