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第307話〈それぞれの本心〉
しおりを挟むその日、朝からジルヴァンに呼び出されたアミィは、退屈すぎて「ふわぁ~あ」と、欠伸をした。その日とは、文官試験の結果が貼り出される当日である。ジルヴァンこそ、恭介と同じく首を長くして、この時を待っていた。
「まだなのか! まだわからぬのか!?」
「んも~、ジルさまったらウロウロしないで、少しは落ちついてくださいよぅ。まだ早朝ですよ~。こんな時刻に貼り出すわけないじゃありませんか~。あたしはすっごく眠いです~。」
「なんと悠長な! アミィよ、おぬしは気にならぬと申すのか!!」
「えー? キョウくんのことなら、心配いりませんってば~。きっと、合格してますよ~。」
アミィほど能天気でいられない第6王子は、身装を整える前から落ちつかないようすで、寝台のまわりを行ったり来たりしていた。女官が本日の衣装を届けにくると、アミィが扉から顔を出して受け取った。
「ほらほら、ジルさま。お着替えをなさいませぇ。国王様にご挨拶へ行かないと~。」
側仕えで世話役のアミィから、ポンッと右肩に手を置かれたジルヴァンは、過剰な反応を示した。
「わっ、なんだ!? いきなり触るなっ。着替えなら、ひとりでできる!」
「でもぉ、きょうの衣服、飾り釦が背中についてますよぅ、」
「な、なにっ?」
「さぁ、パパッと脱いじゃってくださいな~。」
「わーっ! やめろーっ!」
逃げようとするジルヴァンの腕を掴んだアミィは、ニコニコしながら絹の寝巻に手をかけた。はらりと肩からすべり落ちると、肌理のなめらかな素肌が晒され、ジルヴァンは「よさぬか!」と云って、あからさまに拒絶した。
「ジルさまったら、どうしたんですかぁ? きょうは、まるで乙女みたいですよ~。」
「う、うるさい! 吾に構うな。衣服をよこせ!」
「はい、どうぞぉ。」
「おぬしはあっちを向いておれ!」
「は~い。」
ビシッと、壁を指で示されたアミィは、躰ごと反転した。恭介から前回の共寝の際、2ヵ月後に呼び出してほしいと頼まれたジルヴァンだが、文官試験の結果次第では、それを躊躇した。
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