309 / 364
第308話
しおりを挟むかれこれ、ひと月ほど前、恭介がやるべきことに集中する最中、ちょっとした事件が起きた。王室行事に(面倒ながら渋々)出席したジルヴァンは、第4王子のシグルトから耳打ちされた。
「ジル。おまえの情人とやらは、曲者だな。いや、強者と評しておくべきか……。」
突飛な意見につき、ジルヴァンは眉をひそめ「なんのことであるか?」と、小声で聞き返した。本日は、五穀豊穣を祈願する宴につき、第4王子の他、数十人もの身内が方卓を囲っている。そこに義兄の姿はない。また、日頃から病弱な第5王子は欠席扱いのため、シグルトの隣りにジルヴァンが座ることになった。
「そのようすだと、キョースケは独断で動いているようだな。」
「兄上よ。いったい、それはなんのことか?」
「おまえはキョースケについて、何を承知している?」
「どういう意味であるか?」
「なんでも構わぬ。好きな食べ物や趣味のこと、生まれてから今日までの、いわば為人について、どこまで知っているのだ。」
シグルトは、恭介の身分が私奴から平民に仮登録された事実を内密で調べていたが、ジルヴァンは恭介について、あまり細かな情報を得ていない。改めて問われると、好きな人についての知識は、あまりにも少なかった。恭介のために何かしてやりたいと思う反面、情人として独占している現在、なんとなくそれだけで満足していたジルヴァンは、急に不安を覚えた。
「……むぅ、なんたる不覚であったことか。吾は、キョースケの事情を、殆ど知らぬな。以前、両親は遠いところにいると聞いたことがあるが、それはつまり、コスモポリテスの出身者ではないということか……。確かに、あのような見た目は、めずらしかった。」
「フッ、正直だな。では、ひとつ教えてやろう。これより1ヵ月後、北棟で文官試験が実施される。……当日、会場へ行ってみるがいい。なにかしらの収穫があるはずだ。」
シグルトは恭介に関する情報を示唆するが、ジルヴァンは第4王子の本心を見抜けず、ただ当惑した。
* * * * * *
1
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる