恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第306話

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 自分の目で合否を確かめたくても、最前列を陣取る受験者たちは、なかなか場所をゆずってくれない。恭介は、かたわらの若い男から合格している旨を伝えられた瞬間、ジルヴァンと抱き合っている時と類似した快楽に捉われた。頭から足の爪先まで、ゾクゾクッと、一気に血が騒ぐ。持て余していた下半身は、覚醒する場面をまちがる一歩いっぽ寸前すんぜんだった。

(うん? おわっ、あぶねぇ!! 公衆の面前めんぜんちそうになってどうすンだ阿呆アホが……!! ああ、でも、これでやっと、ジルヴァンにすべてを話せるぞ……)

 結果に安堵あんどして横を向いたが、さきほどの若い男は姿を消していた。とはいっても、同じ高官に抜擢ばってきされた合格者につき、すぐに再会できるだろうと考えられた。恭介は、手のひらで胸をでおろしながら呼吸をととのえると、まだ勤務時間のため執務室へ引き返した。近日中には女官にょかんがやって来て、共寝の呼び出しを受けるだろうと思っていたが、数日が経過しても恭介をたずねる者はひとりもいなかった。アミィですら、話題を振らない。結局、レッドに今後の話を持ち出せず、うしろめたさが残ったが、文官試験に合格し、高官に選ばれた現実は、ふわふわとした夢のように感じた。

(……今のオレは、最高に気分がいいはずなのに、なんだこの不安感はよ。……ああ、そうか。まだ、このよろこびを誰とも共感してねぇから、実感がかないのかもな……)

 一刻いっこくも早くジルヴァンへ結果を報告したい気分の恭介だが、こんな時に限って、口約束を反故ほごにされてしまう。

(……もしかして、まだ怒ってるのか? ずっと内緒にしてて悪かったと思うけど、オレにだって意地くらいある。今回の件は、どうしても自分の力だけでやり遂げたかったンだよ、ジルヴァン。それをわかってもらえると、ありがたいンだが……。この分だとやっぱり、勘違いされてそうだよなぁ……)

 裏を返せば、それだけ第6王子から深く愛されている証拠だが、複雑な心境である。同時に、自分の番号ばかり探してしまい、ユスラの名前が記されていたかどうか未確認だった。

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