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「ん?どういう意味です?聞かせてもらえますか?」

グレッグは注意深くそう言って、私に体を向けた。

「どういう噂で皆様の耳に届いたか知りませんが、父は最初、パトリシアを信じたんです。私の話を全て嘘だと決めつけて、罪を認めないなら殺すと脅されました」
「え……?」
「堕落した、恥ずかしい娘だと言われました。家名に泥を塗ったと言われました」

言い出すと止まらなかった。
恐ろしいくらいに、口が勝手に動いてしまう。

グレッグに言っても意味がないと、頭ではわかっている。それでも気持ちが昂って、全てをぶちまけるまでは終われない。

「だから生きていても仕方ないと思ったんです」

こんな話を聞かされて、グレッグもいい迷惑だろう。
そう思った私に返ってきたのは、思いがけない優しい声だった。

「それは知らなかった。申し訳ない」
「……?」

口調自体が突然、距離が近くなったようで戸惑う。
そんな私に、グレッグは少し声を潜め、真剣な口調で続ける。

「今は、御父上との関係はいいのかい?脅される?」
「い、いいえ……今は、父は、私の言いなりです」

言いながら笑ってしまった。
父は実に情けない男に成り下がり、自分の過ちをなかった事にするため私に尽くしている。私に心の篭った謝罪などしない。

「そうか。それはよかった。否、よくはないが」
「お気遣いどうも。ですが、御心配には及びません。過ぎた事ですので」
「辛くないかい?」
「聞いてどうするんです?私が辛いと言ったら、何かしてくださるんですか?」
「当然。そうでなければ、聞きはしないよ」

彼は実際、善人にしか見えない。
私はただ聞いて欲しくなって本当の事を話した。

「父の顔を見たくありません。私を殺すと言った人です。信じてもくれなかったし。だから、早く、結婚しなくてはと思ったのです。本当は男になんて頼りたくないけど……っ」

急に胸が締め付けられて、涙が溢れた。
自分でも信じられずに、慌てて顔を背ける。

同情を買うために来たわけではないのに、こんなの、悔しすぎる。

「私、馬鹿ですね。初めてお会いした方に、こんな話……忘れてください」
「そんな軽い気持ちでバルコニーに誘ったりはしませんよ、レディ・レーラ」

グレッグがそっとハンカチを渡してくる。
もう泣いてしまったのだし、素直に受け取った。そして涙を拭いた。そこでグレッグは、実は……と話し始めた。
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