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まだまだ現役
第91話 ひろし、帰宅
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戦闘が終わると、翠が哲夫と和代のところへ無言で走ってきた。
「「翠ちゃん!」」
哲夫と和代は思わず涙ぐみながら翠を見つめると、翠は急に2人の腕を掴んだ。
そして2人を連れてシャームからバリードレへ抜ける洞窟へと走っていった。
「ちょっと入って」
そして翠は洞窟に入って誰にも見られていないことを確認すると、哲夫と和代の手を握った。
そして強張った表情を一気に崩して言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん! なんでここに?」
すると哲夫と和代は翠を優しく抱きしめながら言った。
「翠ちゃんに会いに来たんだよ」
「やっと会えたわね。ずっと会いたかったのよ」
哲夫と和代に抱きしめられた翠の顔はどんどんと優しい表情になり、小さな声を漏らした。
「おじいちゃん、おばあちゃん、私も会いたかった。でもメダル取るまで会わないって決めてたから……」
「そうだったのか……。翠ちゃん、ごめんな。会いに来てしまったよ……」
「ごめんなさいね。そんなふうに思ってるなんて知らなかったの」
「わたし、おじいちゃんとおばあちゃんに会うと心が折そうだったから強がって我慢してた……」
それを聞いた哲夫と和代は驚いたが、翠は話を続けた。
「おじいちゃんが倒れた時、わたしアーチェリーやめようと思ったんだ」
「「ええ!?」」
「おじいちゃんがいつ居なくなるか分からなかったから、できるだけ会いたかった」
「そんな。翠ちゃん」
「でも辞めたら、父さん母さん、それに周りの人たちの期待を裏切ることになる。だから早くメダル取って辞めようと思ってた」
「翠ちゃん……」
「そうしたら、自分でも気づかないうちに負けるのが怖くなってた。それに美咲にも腹を立ててた。先に辞めたから」
翠はスッと涙を頬につたわせて続けた。
「でも今は全部後悔ばっかり。ずっと周りの期待が重かった」
哲夫は済まなそうにしながら翠に言った。
「翠ちゃん、わたしが倒れたばっかりに苦しませてしまったね。本当にごめんよ」
「ううん、おじいちゃんのせいじゃない」
「翠ちゃん、でも安心してくれ。翠ちゃんがメダル取るまで、いつまでも待っているから。約束する!」
「おじいちゃん……、ありがとう。信じていいの?」
「もちろんだ! それにメダルだって取らなくてもいいんだよ。翠ちゃんが幸せならそれでいいんだ」
「でも……」
翠が目を伏せると、哲夫は少し考えてから翠に言った。
「翠ちゃん。今度、哲司をゲームの世界に呼んでくれないか?」
「お父さんを? うん」
「哲司にはキツく言ってやらんといかんな」
すると翠は涙を拭い、また少し険しい表情に戻って哲夫と和代に言った。
「そろそろ行かないと。みんなが待っている」
「そうだな」
「ええ」
翠たちが洞窟から出てくると、心配そうにしていたメンバーたちが一斉に駆け寄ってきた。
そして魔術武闘家のマサが前に出て翠に言った。
「翠さん、その方たち、翠さんの祖父母さんなんだってね」
「うん」
「翠さん、大丈夫かい?」
「ああ、もう大丈夫だ。気を使わせてすまない」
「そうか、それなら良かったよ」
マサは少し笑顔になると話を続けた。
「今みんなで話してたんだけど、入り口の時点であのレベルじゃ、ちょっとヤバいよねって」
「そうね。思ったよりも強かったわ」
「あのオロチのやつは、あれだけのステータスだし全快まで2日以上かかるだろうから、一回帰って作戦練り直そうって」
「たしかにそうね。そのとおりだわ」
「それに、そこの武闘家のタマシリもシャームで盗まれたモノがあるかもしれないから協力してくれるって」
「それは、心強いわね」
翠はタマシリのほうを向くと会釈して言った。
「Thank you for your cooperation. (ご協力に感謝します)」
「It's my pleasure.(どういたしまして)」
こうして翠とメンバー、そしておじいさんたちは黒の屋敷へ行くことになった。
ー 黒の屋敷 ー
哲夫と和代は屋敷に入ると驚いて翠に言った。
「凄い屋敷だなぁ」
「翠ちゃん、こんなところに住んでるの? すごいわね!」
「おじいちゃん、おばあちゃん、ここはメンバーみんなの家なんだ」
「まぁ、そうなのね。立派ねぇ」
哲夫と和代はキョロキョロしながら一緒に大広間に入ると、全員大きなテーブルの席についた。
翠は一番奥の席に着くと、みんなに話し始めた。
「おそらく敵は、さっきの襲撃で慌てているはず。できれば時間を空けずに、こちらも人数を増やして敵を壊滅させたいわ」
それを聞いたマサは翠に言った。
「確かにそうだね。さらに強大になる前にリーダーのベンドレを倒しておきたいね」
「このままだとバリードレを中心に、窃盗、詐欺、プレイヤー殺しが広がっていってもおかしくないわ。その前に叩かないと。それに黒を名乗るのは許せない」
すると戦いに破れた薙刀のイチやメンバーたちが口々に翠へ言った。
「翠さん、わたしS級武器のフレンド何人か呼べます。私はしばらく戦えないので協力をお願いしてみます」
「おれも課金勢のフレンドが何人か」
「わたしも強いフレ呼べます」
それを聞いて、和代が言った。
「美咲ちゃんなら」
それを聞いた翠は一瞬目を落とした。
しかしすぐに目線を上げると頷いて言った。
「うん、美咲もおねがい」
それを聞いた哲夫と和代は嬉しそうに頷いた。
するとアカネも嬉しそうに続けた。
「あたしのフレンドめっちゃ強いよ。誘ってみるね」
「ありがとう。お願いするわ」
さっそくアカネはイリューシュと黒ちゃんとめぐにメッセージを送った。
おじいさんも翠に言った。
「わたしも、元自衛官のお友達がいます。もしかしたら、手伝ってくれるかもしれません」
「本当ですか? それは助かります」
おじいさんも、元自衛官の3人にメッセージしてみた。
「みんな、ありがとう。ここで倒しておかないと、どんどん手のつけられない集団になっていくかもしれないわ」
翠は席から立つと、みんなに大きな声で言った。
「次の襲撃まで日を空ければ、敵も準備してくるわ。決戦は今日の深夜よ! 午前0時に屋敷に集合!」
「「はい!!」」
こうして、おじいさんたちは深夜の襲撃に参加することになった。
おじいさんたちは屋敷でタマシリと別れると、帰る準備を始めた。
哲夫と和代は翠とフレンド交換すると、名残惜しそうに話した。
「わたしも軍神さん召喚して頑張るわね、翠ちゃん」
「わたしもまだ弱いけど頑張るよ」
「ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん。来てくれるだけでも嬉しいよ」
「ありがとう翠ちゃん。じゃあ、また夜にね」
「うん。美咲によろしく」
「ああ、わかった」
こうして、おじいさんたちは軽トラでシャームの港へ戻り、船に乗り換えてピンデチへと向かった。
「「翠ちゃん!」」
哲夫と和代は思わず涙ぐみながら翠を見つめると、翠は急に2人の腕を掴んだ。
そして2人を連れてシャームからバリードレへ抜ける洞窟へと走っていった。
「ちょっと入って」
そして翠は洞窟に入って誰にも見られていないことを確認すると、哲夫と和代の手を握った。
そして強張った表情を一気に崩して言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん! なんでここに?」
すると哲夫と和代は翠を優しく抱きしめながら言った。
「翠ちゃんに会いに来たんだよ」
「やっと会えたわね。ずっと会いたかったのよ」
哲夫と和代に抱きしめられた翠の顔はどんどんと優しい表情になり、小さな声を漏らした。
「おじいちゃん、おばあちゃん、私も会いたかった。でもメダル取るまで会わないって決めてたから……」
「そうだったのか……。翠ちゃん、ごめんな。会いに来てしまったよ……」
「ごめんなさいね。そんなふうに思ってるなんて知らなかったの」
「わたし、おじいちゃんとおばあちゃんに会うと心が折そうだったから強がって我慢してた……」
それを聞いた哲夫と和代は驚いたが、翠は話を続けた。
「おじいちゃんが倒れた時、わたしアーチェリーやめようと思ったんだ」
「「ええ!?」」
「おじいちゃんがいつ居なくなるか分からなかったから、できるだけ会いたかった」
「そんな。翠ちゃん」
「でも辞めたら、父さん母さん、それに周りの人たちの期待を裏切ることになる。だから早くメダル取って辞めようと思ってた」
「翠ちゃん……」
「そうしたら、自分でも気づかないうちに負けるのが怖くなってた。それに美咲にも腹を立ててた。先に辞めたから」
翠はスッと涙を頬につたわせて続けた。
「でも今は全部後悔ばっかり。ずっと周りの期待が重かった」
哲夫は済まなそうにしながら翠に言った。
「翠ちゃん、わたしが倒れたばっかりに苦しませてしまったね。本当にごめんよ」
「ううん、おじいちゃんのせいじゃない」
「翠ちゃん、でも安心してくれ。翠ちゃんがメダル取るまで、いつまでも待っているから。約束する!」
「おじいちゃん……、ありがとう。信じていいの?」
「もちろんだ! それにメダルだって取らなくてもいいんだよ。翠ちゃんが幸せならそれでいいんだ」
「でも……」
翠が目を伏せると、哲夫は少し考えてから翠に言った。
「翠ちゃん。今度、哲司をゲームの世界に呼んでくれないか?」
「お父さんを? うん」
「哲司にはキツく言ってやらんといかんな」
すると翠は涙を拭い、また少し険しい表情に戻って哲夫と和代に言った。
「そろそろ行かないと。みんなが待っている」
「そうだな」
「ええ」
翠たちが洞窟から出てくると、心配そうにしていたメンバーたちが一斉に駆け寄ってきた。
そして魔術武闘家のマサが前に出て翠に言った。
「翠さん、その方たち、翠さんの祖父母さんなんだってね」
「うん」
「翠さん、大丈夫かい?」
「ああ、もう大丈夫だ。気を使わせてすまない」
「そうか、それなら良かったよ」
マサは少し笑顔になると話を続けた。
「今みんなで話してたんだけど、入り口の時点であのレベルじゃ、ちょっとヤバいよねって」
「そうね。思ったよりも強かったわ」
「あのオロチのやつは、あれだけのステータスだし全快まで2日以上かかるだろうから、一回帰って作戦練り直そうって」
「たしかにそうね。そのとおりだわ」
「それに、そこの武闘家のタマシリもシャームで盗まれたモノがあるかもしれないから協力してくれるって」
「それは、心強いわね」
翠はタマシリのほうを向くと会釈して言った。
「Thank you for your cooperation. (ご協力に感謝します)」
「It's my pleasure.(どういたしまして)」
こうして翠とメンバー、そしておじいさんたちは黒の屋敷へ行くことになった。
ー 黒の屋敷 ー
哲夫と和代は屋敷に入ると驚いて翠に言った。
「凄い屋敷だなぁ」
「翠ちゃん、こんなところに住んでるの? すごいわね!」
「おじいちゃん、おばあちゃん、ここはメンバーみんなの家なんだ」
「まぁ、そうなのね。立派ねぇ」
哲夫と和代はキョロキョロしながら一緒に大広間に入ると、全員大きなテーブルの席についた。
翠は一番奥の席に着くと、みんなに話し始めた。
「おそらく敵は、さっきの襲撃で慌てているはず。できれば時間を空けずに、こちらも人数を増やして敵を壊滅させたいわ」
それを聞いたマサは翠に言った。
「確かにそうだね。さらに強大になる前にリーダーのベンドレを倒しておきたいね」
「このままだとバリードレを中心に、窃盗、詐欺、プレイヤー殺しが広がっていってもおかしくないわ。その前に叩かないと。それに黒を名乗るのは許せない」
すると戦いに破れた薙刀のイチやメンバーたちが口々に翠へ言った。
「翠さん、わたしS級武器のフレンド何人か呼べます。私はしばらく戦えないので協力をお願いしてみます」
「おれも課金勢のフレンドが何人か」
「わたしも強いフレ呼べます」
それを聞いて、和代が言った。
「美咲ちゃんなら」
それを聞いた翠は一瞬目を落とした。
しかしすぐに目線を上げると頷いて言った。
「うん、美咲もおねがい」
それを聞いた哲夫と和代は嬉しそうに頷いた。
するとアカネも嬉しそうに続けた。
「あたしのフレンドめっちゃ強いよ。誘ってみるね」
「ありがとう。お願いするわ」
さっそくアカネはイリューシュと黒ちゃんとめぐにメッセージを送った。
おじいさんも翠に言った。
「わたしも、元自衛官のお友達がいます。もしかしたら、手伝ってくれるかもしれません」
「本当ですか? それは助かります」
おじいさんも、元自衛官の3人にメッセージしてみた。
「みんな、ありがとう。ここで倒しておかないと、どんどん手のつけられない集団になっていくかもしれないわ」
翠は席から立つと、みんなに大きな声で言った。
「次の襲撃まで日を空ければ、敵も準備してくるわ。決戦は今日の深夜よ! 午前0時に屋敷に集合!」
「「はい!!」」
こうして、おじいさんたちは深夜の襲撃に参加することになった。
おじいさんたちは屋敷でタマシリと別れると、帰る準備を始めた。
哲夫と和代は翠とフレンド交換すると、名残惜しそうに話した。
「わたしも軍神さん召喚して頑張るわね、翠ちゃん」
「わたしもまだ弱いけど頑張るよ」
「ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん。来てくれるだけでも嬉しいよ」
「ありがとう翠ちゃん。じゃあ、また夜にね」
「うん。美咲によろしく」
「ああ、わかった」
こうして、おじいさんたちは軽トラでシャームの港へ戻り、船に乗り換えてピンデチへと向かった。
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