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第二章
92ーケイvsピア
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その日は、日が暮れるまで炊き出しを続けました。イワカムが余分に沢山の食料を持たせてくれていて、助かった。
もしかしたら、イワカムは必要になるかもと思っていたのかも知れない。だって、イワカムに持たされた食料が入ったマジックバッグには、とんでもない量の食料が入っていたから。
こんな量、1日で作れるはずないもの。私の知らない、お父様やお母様があるんだと思った。だから、領邸の皆は慣れているんだ。予測できるんだ。だからこの量なんだ。
私はこのとんでもない両親も、それに対応しようとする使用人達も誇りに思う。
元領主邸に戻ると、お父様が走ってきた。
「ルル! 助かったぞ!」
相変わらず大きな声だわ。
「お父様、ただいま戻りました。ケイがまだ街で出てこなかった者の解呪に回っています」
「そうか、まだいるか!」
「ルル、レオン殿下お疲れ様でした。さあ、私達も食事にしましょう」
「はい、お母様」
皆でやっと夕食です。
「しかし、ルル。よくその量の食料を持っていたな」
「ラウ兄様、出発する時にイワカムにマジックバッグを持たされたのです。食料が入っているから持って行ってほしいと。きっと必要になると言ってました」
「そう、イワカムが」
「お母様、イワカムは分かっていたみたいですね?」
「ルル、そうみたいね。あの子も立派になったわ」
「ルルは知らないか? イワカムも母上に保護された孤児だったんだ。俺が5歳位だったかな?」
「ラウ兄様、そうなんですか?」
「ああ、イワカムは俺より2歳上で歳が近かったから、よく一緒に遊んだもんだ」
「兄貴、初めてイワカムがルルに料理を作らされた時は傑作だったよな?」
私、全然覚えてないんですけど。
「そうそう、料理と言ってもバターとマヨネーズだったな」
「イワカムはルルに、イワカムまだ振って! もっと振って! と言われてたよな」
ええー……
「ハハハ、ジュードそうだった。マヨネーズの時もだな。イワカムまだかき混ぜて! もっとかき混ぜて! てな。イワカムが、もう腕が動かない、て言ってたのを覚えているよ」
「ルル、何やってんだ?」
「レオン様、私は全然覚えてないもの」
「あれからイワカムはルル担当になったんだ」
「ラウ兄様、そうなんですか?」
「そうだよ、ルル。料理長が、自分ではあれは無理だと言ってな」
「貴方達、それよりも可哀想だったのが、ルルにコッコちゃんの卵を取りに行かされた時よ」
「ああ、あれはイワカムが気の毒だったな!」
お母様、お父様まで。
「イワカムが、ルルに言われて初めてコッコちゃんの卵を取りに行った時はね、コッコちゃんにボコボコにされたのよ。驚いたわ」
「「えぇー!」」
レオン様と二人で思わず声をあげましたよ。
「そうそう! イワカム、コッコちゃんの卵を取ってきて! て、ルルに言われたんだ」
「ラウ兄様、もうやめて下さい。恥ずかしいです!」
「ハハハ。ルル、俺達は恵まれている。父上と母上の努力があってこそだ」
「はい、ラウ兄様」
「俺達も守って行かないとな、ティシュトリア領をな」
「はい、ジュード兄様」
「ラウ、ジュード、俺もだよ。一緒に守っていくよ」
「ああ、レオン。有難う」
翌朝、前の街で待っているクロノス侯爵とジュノー様を迎えに戻ってから、再び王都へ向かう為に出発です。
「公爵様、この御恩は決して忘れません」
「其方ももう暫く踏ん張ってくれ。必ず王には報告する」
「はい、有難う御座います」
腐らない程度の食料を調理場に出しておきました。領地からラウ兄様の手配した隊員達が来る迄は保つでしょう。
「隊員達が来たら、子供達を預けて下さい。一緒にティシュトリアに連れて行ってくれます。その後は領主邸で保護します。安心して下さい」
「公爵夫人、有難うございます。子供達を死なせないで済みます。宜しくお願いします」
「よいか、何かあれば必ずティシュトリアに知らせる様にな。忘れるでないぞ」
「はい! 公爵様!」
元領主邸を出発しました。一番前にリルとノトスがいます。私達の馬車の前にケイがいます。この3人はこの街では英雄です。
「わふ」
「モモちゃんどうしたの?」
「神が信頼される意味が良く分かったわ」
「そうだな」
「ピ?」
「ピアはまだ馬鹿だからわからないのー」
「ピ……!」
ルビちゃん相変わらず辛辣ね。ピアかわいそう。
お昼休憩です。
「ケイ、お疲れ様。沢山食べてね」
「はい! ルルーシュア様、いただきます!」
「ケイ、お前さ俺とルルへの態度が違うよな」
「レオン殿下、何を仰っているんですか?」
「ほら、俺には冷たいよな」
「おや殿下、殿下は1歳上の男に優しくされたいタイプでしたか?」
「いや、気持ち悪い」
「でしょう? そういう事です」
「何がだよ」
「私も殿下に優しくするより、ルルーシュア様に優しくされる方が嬉しい、て事です」
「あー……そぅ」
何言ってんの? この二人は?
「あれ? それはそうとユリウスとマーリソン様がいないわね」
「ルル、今頃かよ! ユリウス泣くぞ!」
「あら、どうして?」
「だってユリウスと良いコンビじゃん」
「ユリウスは私の師匠よ」
「ユリウスとマーリソン殿は前の街に残って、魔石の調達と魔道具の作成をしてるぞ」
「ラウ兄様、気づきませんでした」
「ルル、ユリウスが泣くぞ!」
ラウ兄様までどうして? まぁ、いいや。
「いいのかよ!」
レオン様、見事なツッコミだわ。
「ラウ兄様、またリルとノトスは先行するんですか?」
「ああ、二人はもう出たぞ。ケイもまた頼めるか?」
「んぐッ、勿論です」
ケイはお口いっぱいでした。喉詰まってない?
「リアンカ! 飲み物お願い!」
「はい、ルル様」
「ピー!」
ピアが慌てて自分の水をケイに差し出してるわ!
「ピア、いいんだよ。人は飲めないんだ」
「ピ?」
「ピア、いいのよ。それはピアが飲みなさい」
「ピー? ングッングッ……プハー!」
「殿下、その頭の白い小さいのは以前からいましたか?」
ケイがジト目でピアを見てます。
「お? ケイは見るの初めてだったか? ドラゴンの赤ちゃんでピアだ」
「何故、殿下の頭に?」
「知らねー」
ケイのテンションてイマイチ掴めないなぁ。
「は?」
「知らないよ。何故か俺の頭にのってくるんだよ」
「ピ」
ケイがピアをギュンと睨みます。
「そうですか。ではドラゴンのピアちゃん、いいですか? 人の頭は乗るものではありません。乗ってはいけません。分かりますか?」
「ピ、ピ……」
ピアがスゴスゴとレオン様の頭から降りて私の膝に乗って抱きついてきました。
「よし。おりこうさんです」
「ピ」
ピアがしがみついてきます。ドラゴンに怖がられるケイて何なの?
もしかしたら、イワカムは必要になるかもと思っていたのかも知れない。だって、イワカムに持たされた食料が入ったマジックバッグには、とんでもない量の食料が入っていたから。
こんな量、1日で作れるはずないもの。私の知らない、お父様やお母様があるんだと思った。だから、領邸の皆は慣れているんだ。予測できるんだ。だからこの量なんだ。
私はこのとんでもない両親も、それに対応しようとする使用人達も誇りに思う。
元領主邸に戻ると、お父様が走ってきた。
「ルル! 助かったぞ!」
相変わらず大きな声だわ。
「お父様、ただいま戻りました。ケイがまだ街で出てこなかった者の解呪に回っています」
「そうか、まだいるか!」
「ルル、レオン殿下お疲れ様でした。さあ、私達も食事にしましょう」
「はい、お母様」
皆でやっと夕食です。
「しかし、ルル。よくその量の食料を持っていたな」
「ラウ兄様、出発する時にイワカムにマジックバッグを持たされたのです。食料が入っているから持って行ってほしいと。きっと必要になると言ってました」
「そう、イワカムが」
「お母様、イワカムは分かっていたみたいですね?」
「ルル、そうみたいね。あの子も立派になったわ」
「ルルは知らないか? イワカムも母上に保護された孤児だったんだ。俺が5歳位だったかな?」
「ラウ兄様、そうなんですか?」
「ああ、イワカムは俺より2歳上で歳が近かったから、よく一緒に遊んだもんだ」
「兄貴、初めてイワカムがルルに料理を作らされた時は傑作だったよな?」
私、全然覚えてないんですけど。
「そうそう、料理と言ってもバターとマヨネーズだったな」
「イワカムはルルに、イワカムまだ振って! もっと振って! と言われてたよな」
ええー……
「ハハハ、ジュードそうだった。マヨネーズの時もだな。イワカムまだかき混ぜて! もっとかき混ぜて! てな。イワカムが、もう腕が動かない、て言ってたのを覚えているよ」
「ルル、何やってんだ?」
「レオン様、私は全然覚えてないもの」
「あれからイワカムはルル担当になったんだ」
「ラウ兄様、そうなんですか?」
「そうだよ、ルル。料理長が、自分ではあれは無理だと言ってな」
「貴方達、それよりも可哀想だったのが、ルルにコッコちゃんの卵を取りに行かされた時よ」
「ああ、あれはイワカムが気の毒だったな!」
お母様、お父様まで。
「イワカムが、ルルに言われて初めてコッコちゃんの卵を取りに行った時はね、コッコちゃんにボコボコにされたのよ。驚いたわ」
「「えぇー!」」
レオン様と二人で思わず声をあげましたよ。
「そうそう! イワカム、コッコちゃんの卵を取ってきて! て、ルルに言われたんだ」
「ラウ兄様、もうやめて下さい。恥ずかしいです!」
「ハハハ。ルル、俺達は恵まれている。父上と母上の努力があってこそだ」
「はい、ラウ兄様」
「俺達も守って行かないとな、ティシュトリア領をな」
「はい、ジュード兄様」
「ラウ、ジュード、俺もだよ。一緒に守っていくよ」
「ああ、レオン。有難う」
翌朝、前の街で待っているクロノス侯爵とジュノー様を迎えに戻ってから、再び王都へ向かう為に出発です。
「公爵様、この御恩は決して忘れません」
「其方ももう暫く踏ん張ってくれ。必ず王には報告する」
「はい、有難う御座います」
腐らない程度の食料を調理場に出しておきました。領地からラウ兄様の手配した隊員達が来る迄は保つでしょう。
「隊員達が来たら、子供達を預けて下さい。一緒にティシュトリアに連れて行ってくれます。その後は領主邸で保護します。安心して下さい」
「公爵夫人、有難うございます。子供達を死なせないで済みます。宜しくお願いします」
「よいか、何かあれば必ずティシュトリアに知らせる様にな。忘れるでないぞ」
「はい! 公爵様!」
元領主邸を出発しました。一番前にリルとノトスがいます。私達の馬車の前にケイがいます。この3人はこの街では英雄です。
「わふ」
「モモちゃんどうしたの?」
「神が信頼される意味が良く分かったわ」
「そうだな」
「ピ?」
「ピアはまだ馬鹿だからわからないのー」
「ピ……!」
ルビちゃん相変わらず辛辣ね。ピアかわいそう。
お昼休憩です。
「ケイ、お疲れ様。沢山食べてね」
「はい! ルルーシュア様、いただきます!」
「ケイ、お前さ俺とルルへの態度が違うよな」
「レオン殿下、何を仰っているんですか?」
「ほら、俺には冷たいよな」
「おや殿下、殿下は1歳上の男に優しくされたいタイプでしたか?」
「いや、気持ち悪い」
「でしょう? そういう事です」
「何がだよ」
「私も殿下に優しくするより、ルルーシュア様に優しくされる方が嬉しい、て事です」
「あー……そぅ」
何言ってんの? この二人は?
「あれ? それはそうとユリウスとマーリソン様がいないわね」
「ルル、今頃かよ! ユリウス泣くぞ!」
「あら、どうして?」
「だってユリウスと良いコンビじゃん」
「ユリウスは私の師匠よ」
「ユリウスとマーリソン殿は前の街に残って、魔石の調達と魔道具の作成をしてるぞ」
「ラウ兄様、気づきませんでした」
「ルル、ユリウスが泣くぞ!」
ラウ兄様までどうして? まぁ、いいや。
「いいのかよ!」
レオン様、見事なツッコミだわ。
「ラウ兄様、またリルとノトスは先行するんですか?」
「ああ、二人はもう出たぞ。ケイもまた頼めるか?」
「んぐッ、勿論です」
ケイはお口いっぱいでした。喉詰まってない?
「リアンカ! 飲み物お願い!」
「はい、ルル様」
「ピー!」
ピアが慌てて自分の水をケイに差し出してるわ!
「ピア、いいんだよ。人は飲めないんだ」
「ピ?」
「ピア、いいのよ。それはピアが飲みなさい」
「ピー? ングッングッ……プハー!」
「殿下、その頭の白い小さいのは以前からいましたか?」
ケイがジト目でピアを見てます。
「お? ケイは見るの初めてだったか? ドラゴンの赤ちゃんでピアだ」
「何故、殿下の頭に?」
「知らねー」
ケイのテンションてイマイチ掴めないなぁ。
「は?」
「知らないよ。何故か俺の頭にのってくるんだよ」
「ピ」
ケイがピアをギュンと睨みます。
「そうですか。ではドラゴンのピアちゃん、いいですか? 人の頭は乗るものではありません。乗ってはいけません。分かりますか?」
「ピ、ピ……」
ピアがスゴスゴとレオン様の頭から降りて私の膝に乗って抱きついてきました。
「よし。おりこうさんです」
「ピ」
ピアがしがみついてきます。ドラゴンに怖がられるケイて何なの?
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